If影虎~2人だけの物語⑦~ラビアベルside
「本当、あの時と同じね」
トゲツの顔色だけでなく、女が跨がって密着していた部分も、げんなりしている。
恐らく私が全権限を完全掌握するまでは、女だけでなくトゲツの願いも叶えていたのだろう。
女が跨がっていたにしては、色々な意味で乱れがない。
「トゲ……」
「ごめん!」
声をかけようとした途端、トゲツが謝る。
「色々……誕生日だったのに、こんな醜態……本当にごめん!
でも信じてくれ!
俺はあんな女に反応なんかしてねえ!
頼む!
ラビが好きなんだ!
ラビだけを愛してる!」
「えっと……トゲツ?」
叫ぶ内容は、乙女心にクリティカルヒットしそうよ?
けれどトゲツは、とんでもなく必死の形相。
いわゆる甘い雰囲気的なやつが、全くないのだけれど?
「だから……だから……完全犯罪をやるなら、いっそ俺がやる!
ラビアベルは手を汚すな!」
「……」
思わず無言になった。
するとトゲツは、私の無言を否と取ったらしい。
「手を汚しても、俺はラビアベルの側にいたい!
信じてくれ!
俺は……俺の俺も、1ミリだってあんな勘違い女なんかに反応してねえ!
ラビアベルだけにしか、絶対反応しないんだー!」
……どうしましょう?
怒りは霧散したけれど、ともすれば下ネタ告白、んんっ、とにかく甘い言葉でもないし……正直、どう反応しろと?
戸惑っていると、いつの間にかトゲツの両手の拘束が消えていた。
あらあら、私の権限が緩んでしまったのかしら?
なんて思う間もなく、トゲツが私に駆け寄って、捨てられたくないとばかりに抱きつく。
「だけど……ごめん。
この空間に入ってから、何でかラビアベルじゃない黒髪の女の人とか、エイナ子爵っぽい女の人が頭をチラついてて。
だけど、その2人がラビアベルみたいに思えて……駄目だって思っても、どうしてか愛おしいって、守りたいって感情が湧いちまう。
くそっ、何で……ごめん、ラビ」
トゲツの顔には、戸惑いと悲壮感が漂っている。
対して私の心には……熱が生まれ始めた。
「断じて、2人に欲情なんて感情はないんだ。
魔法で誓約したっていい。
ただ、あの2人の姿がチラつく度、ラビに大事な何か……何かを言わなきゃならねえって思うのに……何を言っていいのか……ごめん……」
きっとトゲツに前世の記憶は、明確に戻っていない。
なのにトゲツの中には、影虎が月和とラビアンジェへ抱いていた想いが残っているのね。
とはいえ影虎の想いは、今世のトゲツからすると意味不明な感情に違いない。
当然ね。
前々世の私達は、当初こそ男女の恋心から始まったけれど、想いが深まって愛となり、過ごす時間と家族が増えたからこそ、情が絡んで愛情へと変質していった。
最期を迎えるまでの数十年は、男女の生々しい愛情よりも、家族としての穏やかな愛情を感じる日々だったのだから。
何よりも、記憶があるまま四度目の人生を歩む私と違い、前世の記憶がほとんどないトゲツは、心も若い。
ラビアベルである私に、男として恋や愛を感じても、まだまだ情が絡んだ愛情には遠く及ばない。
1つの体に、2人分の感情が存在しているようなものかもしれないわ。
それも記憶がない影虎の方は、どう名前をつけていいかもわからない、未知の感情でしょうし。
戸惑うのも理解できる。
「いいの。
私達にはこれからも、共に過ごす時間があるもの」
「ラビ……んっ」
そう言って背伸びして、今世で初めてトゲツに口づけた。
「ラビ……んんっ、ちょっ、ラビ……んんっ
?!」
何度か口づけてから、魔法で身体強化して、トゲツをお姫様抱っこ。
からの、そのままベッドに放り投げ、押し倒す。
縛られていたせいで赤くなっていたトゲツの手首を癒してから、亜空間収納に溜め込んでいたフワフワなフェイクファーで覆った手錠をトゲツにかけた。
「へ?
あれ、ラビ?
これは……」
今度は私がトゲツに跨がって、静かにしろとばかりに人差し指でトゲツの唇を抑えてから……。
「黙って?
お・し・お・き。
しましょうね」
そう言って微笑んだ。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
◆前回の答え◆
→誘拐犯のフルネームは、逆から読むと『カンチガイ=ガール』。
ネーミングセンスがない作者で申し訳ない!
さてさて、番外編の本編的な話はこれでラストとなります。
次回は、番外編の後日談的な短いショートストーリーです。
ラビ視点、トゲツ視点と投稿して、完全完結です(=゜ω゜)ノ
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