If影虎~2人だけの物語④~ラビアベルside
先ほど間違えて投稿したので、修正してます。
ほんの数分の間ですが、もしご覧になっていた方いたら忘れて下さい(^_^;)
「魔法具の解析?
保安局所属の魔法具師がされるお仕事では?」
保安局とは、この国の公的機関。
前世の日本でいうところの警察署に当たる。
「それが……トゲツが俺に言伝を残し、ある研究所職員の家に向かった後、行方不明になった。
現場にはコレが落ちていたんだが……コレの解析は、ラビに任せた方が早いと思ってな。
恐らくロブール家が研究所に寄贈したとされる、何でも願いを叶えるかもしれないハリセンだろう」
双子の兄の1人で、保安官をしているジルレスお兄様が、とある魔法具を手渡してくる。
受け取って改めて見てみれば、大昔の新聞を蛇腹に折ったハリセンだ。
両端に朱色の羽根がついている。
何となく、見覚えがある?
この羽根は……1度生まれ変わる前の、リアちゃんの羽根?
「本当は俺の妹と隠れて会っていたような少女趣味のトゲツなど、どうなろうと知った事ではないんだがな。
あんなんでも幼馴染みだし、嫌な予感もしたから……まあ、仕方なくだ」
「ふふふ、そんなお兄様が大好きよ。
けれどコレ、一応、証拠品では?
よく持ち出せたわね?
後で怒られるのではない?」
それにしてもこのハリセン、どこで見たかしらと思いつつ、お兄様の心配もしてみる。
「ふっ、心配してくれるのか。
可愛い妹だ。
お兄様の実力は、わかっているだろう。
後から戻しておくし、バレないに決まっている」
「まあまあ、自信満々……ん?
これは……」
新聞の日付けに目をやると、前世の私が王立学園に在学していた頃のもの。
そういえば前世のいつぞや、ドッツキ祭り用にハリセンを作ったような……。
試しに鑑定魔法をかけてみると、高度なカラクリ風鑑定阻害魔法と、解けた封緘魔法に気づいた。
「これでは大抵の人は、正しく鑑定できなかったでしょうね」
「そうなのか?
怪しい気配はしていたんだが、俺の鑑定魔法では解析しきれなかった」
今世のお兄様も、阻害魔法に気づいて私に持ってきたわけではなかったのね。
完全に勘だけで怪しく感じて、私の所に持ってくるなんて。
もちろん魔力量が多くて、魔法の才能に溢れているから、勘が鋭いのもある。
けれどもしかすると、前世でワンちゃん時代が長くて、野生の勘が培われていたのもあるかもしれないわ。
2人いる今世のお兄様達は、前世で死ぬまで白と黒の犬姿であり続けた、あの子達だ。
前世の記憶はないけれど、今世も変わらず私の事を大切にしてくれている。
今世のお父様も、前世では血の繋がったお兄様。
トゲツのご先祖様でもある、ミハイル=ロブールだった。
だからかもしれない。
娘となった私の名前をラビアベルと命名し、まるで前世の幼少期をやり直すかのように、生まれてから一貫して私を可愛がってくれている。
前世の記憶がないはずなのに……不思議なものね。
ちなみに今世のお母様は、前世と何の接点もない。
双子のお兄様達も私も、等しく愛してくれている。
冒険家を名乗り、1年の7割くらいは国外のどこかでアドベンチャーを楽しんでいる。
もちろん現在進行形で、国外にいる……多分。
そんな今世の家族と過ごす内に、前世と違い、今世は最初から地に足が着いたような考えになっている。
だからこそトゲツと再会した13才のあの日、トゲツが前世の記憶を忘れていても、月和への愛を全て忘れていても、仕方ないと即座に受け入れられた。
トゲツが私名義となった邸へ頻繁に通っていたのも、今世の私達の年齢差から私を妹のように感じて、心配しているから。
そんな風に思っていたし、それならそれでも良いと考えていた。
月和と影虎のような夫婦になれなくても、兄妹のような関係でも、心地良い信頼を育めるなら、それもまた良しと思えた。
とはいえ結局、私達は夫婦になる約束をしたのだけれど。
それにしても、トゲツは一体どこに消えたのかしら?
今日は私の18才の誕生日。
【大事な報告】をしようと思っていたのに……。
きっとトゲツからしてみれば、不可抗力的な何かに巻き込まれているに違いないと理解はした。
それでもチラリと時計を見て、あと数時間で今日が終わってしまうと思うと……やっぱり少しは落胆してしまう自分がいるみたいね。
「きっと間に合わないのね」
ついつい小さくぼやきつつ、ハリセンに魔力を通す。
かなり繊細な魔力探知と魔力コントロールの併用が必要だった。
時にゆっくりと僅かな魔力を、時に一気に多大な魔力を通す。
完璧とも言える阻害魔法を、段階的に解除していく。
同時にハリセンから、3人分の魔力の気配を探知し始める。
「ああ、解放できたみたい」
やがてハリセンにかけられていた阻害魔法は、完全に解除した。
するとハリセンがカッと光り、ハリセンから出た見えない何かが私の体に絡みつき、自分の体を中に引きずりこもうとする。
「ラビアベル?!」
「まあまあ、これは……心配しないで。
行ってくるわ~」
言いながら、引きずりこむ力に抗わず、手を振って中に入っていった。
「ちょっ、待っ……軽いな……」
なんていう、最初こそ焦っていたものの、最後ボソッと諦めたように呟くお兄様の声を聞きながら。




