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冷たい世界






人形は完璧だ。


死体の蒼白さは完璧だ。


孤独とは鉄と氷だ。


硬く冷たくすべてを拒む。


世界は燃え盛る焚き火だ。


薪のかわりに人間がくべられていく。


人々はどんどん燃えていく。


燃えるのが好きなのだ。


燃えて、爛れて、その傷口を見せあって笑いあう。


みんながおれを燃やそうとする。


善意なのか悪意なのかわからない、とにかく彼等はおれを炎の中に引きずり込もうとする。


おれには耐えられない。


熱い、痛い、吐き気がする。


鉄と氷の魂は脆い。


硬く冷たいがゆえに脆いのだ。


みんなが炎から逃げるおれを見ている。


吐き気がとまらない。


火傷のせいだ。


あらゆる熱がおれを苛む。


世界を舐める炎からおれは逃げる。


逃げ続ける。


どれだけ逃げたのかわからない。


気がつけばそこはゴミ捨て場だ。


地平線の彼方までゴミで埋め尽くされている。


おれの足元に人形が捨てられている。


あるいは死体かもしれない。


しゃがみこみ触れてみる。


冷たい。


人形。


死体。


鉄。


氷。


冷たい。


眠い。


やがて終わりが来ることを願う。






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