パウロの涙①
「やれやれ、相変わらず五月蝿い剣だな…だが今はそれが妙に心地が良いから不思議だ」
ブルーがそう言って、アッサラームの方へと歩み寄っていく。
そして、足元からアクエリアスを奪い取った。
少しアッサラームが攻撃してこないか心配だったが、どうやら既にアッサラームに戦意は無くなっていた。
すると、王国兵士がアッサラームの元に集まってくる。
私…正確にはアクエリアスが倒した兵士たちが痛めた身体を庇いながら…
そして、兵士たちのリーダー格の男がアッサラームの前に立つ。
「…引き上げましょう。我々の負けです…それに元々今回は調査だけの命令で、実行は次回に奴隷商人を連れてのことだった筈です。これ以上は王国に命に背きます」
リーダー格の兵士の言葉に力無くアッサラームが頷いた。
「…王国に戻って伝えろ。この集団の行為は確かに許されるものではなかった…被害の声が上がっていたのは事実だ。しかし、それは元を正せば王国の非行が招いたこと。今回のことは集団の長の死によって収めて欲しいとな」
一番話が分かりそうなリーダーの兵士に向かってブルーが言った。
「了解した。戻ったら必ず伝えよう」
とリーダーの兵士の男が頷いた。
その時だった…
声を上げながら何かが走ってきた。
その声にハッとなり、慌ててそれに目を向ける。
すると、パウロが短剣を手に兵士たちの方へと向かっていくのが見えた。
おそらく狙いはアッサラームだ。
「パウロ!ダメ!」
思わず制止する声を上げた。
パウロの短剣がアッサラームに近づいていく。
しかし、アッサラームの前で短剣の刃がピタリと止まる。
ブルーがパウロの腕を掴んだのだ。
「離せ!コイツはボスの仇だ!ノコノコ帰すわけにはいかない!」
パウロがブルーに向かって吠えた。
しかし、ブルーは何も答えずにただパウロの手から短剣を取り上げる。
パウロは悔し涙を流しながら、その場に崩れて落ちて地面に伏せた。
「くそっ!何で邪魔するんだよ!?」
パウロがやり切れない想いから悔しくて地面を何度も叩いた。
「…何がボスの命によって事を収めろだ!そんなの俺たちにはどうだっていい!コイツを殺してボスの仇を取らないと俺たちは気が済まないんだよ!」
パウロが想いをぶちまける。
ブルーがパウロの赤茶色の髪に手を置いた。
「…こんなやつのためにお前の手を汚す必要なんかない。それに仇を取ったところで何も変わらないし、お前たちのボスは帰ってこないんだ…」
今までに見たことのないような切ない表情をブルーが見せた。
「…何でボスが死ななきゃいけないんだよ!今までだって我慢してずっと皆んなのことばかり考えていた…これからだったんだ…ボスは俺たちがこれから幸せにする筈だったんだよ!」
パウロが泣き叫ぶ。
…アイリンにとってマリアさんのような存在がパウロにとってはアイリンだったんだなと思わず目頭が熱くなる。




