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 走って、村に戻ってきた

ファリス村


 「・・・・それで逃げ帰ってて来たんだ…」


僕は森の近くにあるファリス村で、友達とベンチで木のコップに入ったレモンジュースを飲みながら会話をしていた


 「そうなんだよ!、マジで焦ったわ~」


 「アスタル。意味が分からないよ。」


僕の友人、レイ=ゼノンが僕にそうため息交じりにベンチの反対側で僕にそう言ってきた。


 レイ=ゼノンは金髪で身長も程よく高い175CM程で体も骨格が良く鍛えていないのに細マッチョだ。


 あとは―――


 「「「「キャーーーー!!!ゼノン様!!!」」」


顔がしこたまイケメンなので、このように外に出ると村の女の子達にすぐに囲まれる。僕はその横で体を小さくしレモンジュースをチビチビと飲むしかないのである。


 「ゼノン様!!手紙読んで下さい!!」


 「ゼノン様!これ食べてください~!!」


 「ゼノン様!!」「ゼノン様!!」 「ゼノン、畑を手伝っておくれ」


 ここまで、女の子に囲まれてるのを見ると嫉妬よりも感嘆が先に来るレベルだな。

しかも一人一人に笑みで返してるし、凄いなぁ。本当にゼノンは凄い。


 「皆ありがと~~!!。あとでこの手紙は読むよ。これもあとで食べるね~。あとで見に行くよ~。あとで畑も手伝うよ~」


 聖徳太子もビックリの聞き取り能力だな。


 「でも、ごめん。今は友人と喋る時間だから今は。ね!。」


あ、僕に目を合わせてきた。あっ、この目は追い払ってほしい時の目だ。ゼノンとは幼少期からの付き合いだ、なんとなくだがジェスチャーやアイコンタクトだけでどう思ってるか分かる程に仲は良い。


 「げふん」


嘘っぽい咳払いが出てしまった。まぁいい、続けよう。僕は顎を上げ胸を張り、眉をひそめ不機嫌な顔を作った


 「ゼノンくんは、今は僕と喋っているんだ。部外者は立ち去りたまえ。しっしっ」


手で払いのけるような仕草をとりそう言った。


ゼノン、これで良かったんだよな?。僕はゼノンの目を見ようとゼノンの方に顔を向けるとゼノンは顔を伏せていた。


 どーやらやってしまったようだ。ゼノンの周りにいる女の子達から嫌な視線が送られてるのが分かる


 「あっ!そうだ。用事があるんだった!!」


僕は腕時計を見る仕草をしそう言った。腕時計はつけてはいなかったが。


 「じゃ、僕はお先に」


そう言って僕はベンチから立とうとした


 「おい、座れよ」


一人の女の子が僕に向かってそう言ってきた


 「いや、用事が」


 「座れ」


 「・・・・はい」

 

圧がすごい!すごい!怖いよ~ゼノン~。どうにかして~


 「私らが行けばいいんだろ?」


 「いえ、そういうわけでは」

 

 「じゃあ、どういうつもりの「しっしっ」なんだよ」


僕がした手の仕草をマネしながら僕に圧をかけてきた。ゼノンと喋っていたときは甲高い声だったのに僕と喋るときはなんて怖い低い声なんだ!!


 「・・・・・」


ゼノンとは違う意味で女の子達に囲まれた


 「アスタル。言う事は?」


 「調子に乗ってすいませんでした・・・・」


女の子達が腕を組みながら怒った表情で見下ろしながら僕に圧をかけてきているのが分かる。僕は顔を俯かせたままだ、だって怖いんだもん。


 「まぁええわ~。みんな~!!帰るよ~~!!」


 「「「は~~い」」」」


なんてテンションが下がった返事なんだ。内心僕にイラついているのだろう。


 「ほっ、良かった」


女の子たちは帰る際にゼノンには笑顔で両手で手を振っているのに僕には目を細めるだけだ。


 「えぇ。傷つくな~」


だが、その時、一人の女の子だけが僕の前に立っていた。


 「アスタル。お前も畑を手伝え」


腰の曲がったおばあちゃんが真顔で僕にそう言った


 「あっ、はい」


 「分かってると思うんじゃが、収穫じゃなくて退治の方じゃよ」


 「分かってますよ~」


おばあちゃんは僕が返事をした後に、帰る際にゼノンには笑顔で「またのぉ~~」と言っていたのに僕には「遅れんなよ」だった。飴玉ももらったのでそれは嬉しかった。


 「・・・・・ゼノン、僕は嫌われているのか」


 「いや?・・・・そんなことは~~~、ないよ。…多分」


その目をそらす感じで分かる。  マジの方やん。


 「はぁ~~~~」


僕はため息を出し、首をくの字に下りベンチのテーブルに肘をついた。


 「あっ!あ~~!!アスタル!!、あれ!、例の勇者の剣の話の続きをしようよ」


そういえば、そうだった。その話がしたくてゼノンを外まで呼んだんだった。


 「で、話の続きなんだけど」


ゼノンがコップを口に運び、一口飲み、唇をひと舐めし答えた


 「意味が分からないよ」


 「え、なんで?」

 

 「勇者の話を断るのはお前の性格を知ってる俺ならまぁー分かるよ。でもさ」


ゼノンはテーブルに指を立て、トントンッ軽くついた


 「ここがどこか分かってる?」


 「え、村にあるテーブルベンチ?」


 「・・・・まぁいい」

 

ゼノンは再度、僕に質問しようとしたが、途中でやめ、普通に僕にこう言った

 

 「ここの村の名前さ。ファリスって言うんだよ。お前があった女神と同じだろ?」


 「あ、確かに。なんか分かんなかったわ」


 「生まれた時からいる村を忘れるなよ。てか、その女神様に痴女はないだろ。絶対ショックしてるぜ?「女神辞める~」とか言ったら本当にお前のせいだからな」


「それは流石にないでしょ。女神だし」


ゼノンはため息を吐くと肘を立て顎を乗せた。

 

 「そんなに勇者になりたくない?。ここの村よりも広い所に行けるんだぜ?」


広い所か。正直な話、ネットやゲームを経験してきた僕にとっては面白味もないしどーでもいい。王都や他国に行ってもこの村と同じ様な生活を継続する気がするし、なにより友達がいる村で人生を全うする方がこの世界での楽しい生き方だろう。


 「なりたくないね。」


 「なんだっけ?。二ホンとかという世界を経験したからっていつもの様な意見かい?」


 「ま、そだねー」


ゼノンは青空を見上げた。


 「お前が毎回、毎回、子供の時から言う二ホンと言う世界。‥‥行ってみたいな~」

 

僕は少し引きつった笑みを見せた


 「おすすめは出来ないな。結局、生まれ落ちた世界が自分を作るんだ。何より、僕がいた前世の世界はさほど良い程でもない。戦争があるんだよ」

 

 「人が人同士でってヤツ?」


 「そう。この世界でもそれはあるけど、戦争程ではないし残虐性も少ない。僕が知る限りではね。この世界で戦って名を売りたいんだったら冒険者になればいい。それができるってのは中々恵まれいるんだぜ?」


ゼノンは「ふーん」と鼻でそう言った。響いてないのが分かる。前の世界の話は昔からしてはいるのだが、全員、ゼノンと同じ反応をする。ま、その方が良いのかもな。


 「で、それが、勇者になりたくないとどういう風に繋がるんだい?。二ホンが娯楽が多くて怠け癖がつきましたーってのは無しだぞ?」


ゼノンはニヤッと意地悪な笑みを浮かべながら僕に聞いていた。ゼノンのこの勘の良さは時々凄いと思う。ぶっちゃけ、それも多少あるから僕は勇者になりたくないのかもしれない。


 「違う・・・気がする」


 「本当かぁ~~??」


ゼノンはニヤニヤとしながら僕にそう言った


 「アレなんなんだよ。いわゆる僕は普通が好きなんだよ。」


僕はゼノンに顔をそむけそう言った


 「おい~、不貞腐れんなよ~」


 「不貞腐れてないし」


 「不貞腐れてないし」


ゼノンが僕の喋り方をマネしながら馬鹿にしてきた。 


 「もういい!帰る」


 「分かった!分かった!悪かたって!」


ゼノンは両手をテーブルの上に置き手を広げ「さっ、続きをどうぞ」と舐めた感じで言ってきた。

 こういう所が女は好きなんだろうなぁ~と思った。


 「前も言ったけど、前世でも僕は至って普通だったんだよ。彼女はいなかったし、友達も少なかったけどね」


 「うん?それは、普通っていうより底辺の~~」


 「それはゼノンがモテてるからだよ。大体の普通は童貞のまま死ぬんだよ」


 「あっ、そう?(目がガチすぎて怖い)」


村の鳥がさえずりながら飛んでいくのを横目に僕はゼノンと喋っていた


 「確かに、ケンカもちょっとしたし、イジメも少しは経験した。それでも普通な人生だったんだよ。」


 「多少の苦労もしてきたけど、それも普通の域から出ないと?」


 「そういう事だね。多少の苦労もしたし娯楽も経験したし楽しくないことも経験した。それでも勇者になって一番の暮らしがしたいとはならないんだ」


 「ふ~ん。そういうものかね~?」


ゼノンは遠くの山をぼーっと見つめながらそう言った。


 もしかしたら、僕の方がおかしいのかも知れない、と思うときも多々ある。普通は異世界に飛ばされたら「この世界で成りやがってやる」とか「世界を救ってやる!!」とかが普通なのか知れない。 

だが、僕にはそれが一切思えなかった。「成り上がる」とかは正直本当に理解が出来ない。そもそも前世の家庭環境や家のお金関係も普通、なんなら両親や僕自身が物欲がないのでお金が普通に溜まり、買いたいときに買いたいものが普通に買えるという。(買いたいものも別に法外な値段でもない)。なんともまぁ普通な話だ。


 「あっ、そういえば」


ゼノンが何かを思い出したように呟いた


 「アスタル、お前は、なんの職業を選ぶんだ?」


僕が勇者を断った理由でこれもある。18歳の成人を迎える明日、18歳になった者は職業を決めなけばならない。


 鍛冶師。庭師。魔法使い。農民。etc.。そして、冒険者。


もちろん僕は、


 「僕は村の警備の職業にするよ」


 「あー向いてるね」


 「やっぱり、これが転職だなぁて感じがするよ~。村の人守れるし、ゼノンもゼノンの家族も守ってあげるよ~~」


ゼノンは照れくさそうに少し口角を上げた。


 「・・・・そうか。ありがとな」


 「で、ゼノンはなんの職業にするの?。やっぱり冒険者?」


 「いや、それは辞めだ。この村の村長見習いにでもなろうかね~」


ゼノンは肘をついた手に顎を乗せニヤッとしながらそう言った


 「え・・・。こういうのは真剣に決めないとダメなんだよ?。分かってる?」


 「・・・・分かんねーヤツだなぁ~。お前はよ~」


ゼノンは顔を赤らめそっぽを向きそう言った。いきなり不貞腐れてどうしたんだろ?。



 「(まー確かに、アスタル(コイツ)は勇者向きの顔でも見た目でもないわな。筋肉はゴリゴリだし、身長もちょっとデカいし、人の名前とか地名とか全然覚えないし)」


―ゼノンは木のコップを口まで持ってきながら片目でアスタルを盗み見るように見た―


「(見た目は勇者っぽくないけど・・・)」


挿絵(By みてみん)



「素質は傍から観ても分かる位あるんだよなぁ~~(女神が引き留めたのも分かる)」


―ゼノンはその後、職業はアスタルと同じ村の警備にしましたとさ―


「一緒にがんばろうね!ゼノン!」





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