20.不思議な光景
子供たちは亡くなった人たちの遺体を村の中央広場へと運んだ。
十歳未満の小さい子には体力的にも心情的にも酷な事だった為、運んだのは年長者の三人。
ロキ君、マリアちゃん、ミイナちゃん。
比較的に体が大きくて重い大人や、瓦礫を被っていて動かしにくかったりと、遺体を運ぶのが困難だった場合は私とプレセアが手伝った。
三人の子供たちは一時間ほどの時間を掛けて全ての遺体を運び終えると、大人たちを横一列にして仰向けに寝かせた。
二十五人の人たちが、胸の前で祈るように手を組み、夜空に顔を向けている。
七人の子供たちがみんな中央に集まると、大人たちに向き合って一列に並び、真ん中に立つロキ君が松明で遺体に火を付けた。
松明の火は徐々に広がり、やがて全ての遺体を包み込む。
そして、私は不思議な光景を目にした。
火の付いた体が少しずつ七色の光へと変わり、夜の星空へと舞って行ったのだ。
光は無数のホタルのように揺らめきながら空に昇っていく。
私は不謹慎だとわかりながらも、この光景が綺麗だと感じてしまった。
†
七色の光は時を刻むように少しずつ空に舞って行く。
空を見上げ、みんなが光を目で追っていく中、ロキ君だけが振り返り、私たちに近付いた。
「アリシア様、プレセア様、ありがとうございます。これで家族は、村のみんなは……迷わずに新しい生を歩めると思います。本当にありがとうございます」
ロキ君は深く頭を下げて私たちに改めてお礼を言った。
新しい生——
この世界では、亡くなってからも生まれ変わって新しい人生を歩んで行くと信じられているようだ。
目の前で行われた子供たちの行いは別れを受け入れる為だけではなく、幸せな未来を願う意味もあるのだろう。
「私がここにいるのは、私がここにいたいと思ったから。それはプレセアも同じ。だから気にしなくていいわ。それよりも今は、みんなの傍にいてあげて」
ロキ君は流れそうになった涙を手で拭うと、
「はい」
返事をしてみんなのところへ戻って行った。
「ねぇ、お姉様はどう思ってる?」
「どうって?」
「生まれ変わりの信仰、人は死んでも次の生を得られると思う? 新しい人生を歩んで、新しい出逢いがあると思う?」
「思うわ」
なぜなら経験者だから。
アリシアとして、あなたとクラウドに出逢えたわ。
「プレセアは信じてないの、生まれ変われる事」
「確信が持てないものは信じられないわ。でも、そうだったらいいなって思ってる」
プレセアは空に舞って行く光を見つめながら言った。
実を言うと、プレセアの子供たちに対する態度が素っ気ないと感じていた。
私の知っているプレセアと違って冷たい人間なんじゃないかなって、ちょっと悲しく思ってた。
でもそんな事はなかったんだね。
子供たちの願いが届くようにって、思ってくれているんだね。
私はプレセアから視線を外すと、同じように空を舞う光を眺めた。
そして、
「生まれ変われるわ、きっと」
彼女の想いを強く肯定した。