土下座と『暴食』
「「「「それで、これはどういうことだい?」」」」
「すまない。」
俺は部屋に入った瞬間、殺気だった笑顔を浮かべている四人に向けて土下座をした。
まさか、夜まで潜入が長引いているとは予想外だったけど、全員がここまで怒っているとはさらに予想外だ。
「うーん、うまいんだぜ。」
ウェルは下の婦人に気に入られて貰ったアイスのような食べ物を食べている。
こいつ……ご主人様(仮)なのに敬う気はないのかよ。まぁ、そこは男友達みたいな感覚だしいいだろうけどさ。
さて、こいつらになんて説明しようか……。
「……ルーナ、何があってこのコウモリ女が来たの?簡潔に答えて。」
「上水道を探険した。密売をしていた。殺した。なんか出てきた。以上だ。」
「……ルーナ、人が良すぎ。」
「ああ。俺っちから見てもここまでお人好しなのはリーダーぐらいしかいないぞ。」
「まぁ、ボクとしてはお人好しじゃないルーナなんて想像がつかないけど。」
「私としてもそっちの方が気が楽で良いのですが……ちょっと心配になりますわね。」
失敬な。
「まぁ、それはいいけどさ……リーダー、今は金欠なんだろ?なのに、なんで奴隷なんて抱え込んだんだ?」
「そりゃあ、オレがマスターを気に入ったからなんだぜ。」
「……だまれ、コウモリ女。」
「あぁ?なんだとこのチンチクリン。」
やれやれと呆れるアルンの後ろでエラとウェルが眼付け合っている。
うーん、なかなかにカオス。
「取りあえずこれでお開きとしましようよ。ボクはもう眠いし。」
「なら、私も。」
「それじゃ、俺っちも。」
「俺も疲れたから寝る。……中途半端な時間に起こすなよ?」
「おう、分かったぜ!」
エリカが小さな欠伸をしてベッドの中に入ったのを皮切りにそれぞれのベッドに潜りこんでいく。
いやー、今日はいろいろとあったしよく眠れそうだ。
「マスターの隣にはオレが寝る。」
「……だめ。コウモリ女は床にでも寝ろ。私が眠る。」
……よく眠れる、のか?俺は
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「…………ここはどこだ?」
俺は気がついたら暖かい花園にいた。
風がよく吹き、多くの花びらの舞うまさに妖精でもいそうな花園だ。
俺は確かにガジェットの宿のベッドで眠っている筈のなのだが……ここはどこだ?
「ここは『深魔の花園』。精霊たちが生まれる場所でございます。」
俺の心の問いかけに答えるように瑠璃色のドレスを着た女性がいた。
女性はスラッとした脚、健康そうな美しい肌に草の蔓のような紋様が浮かび、髪はドレスと同じ瑠璃色でそれを長く伸ばし、美しく完璧な形をした顔立ち、まさに全ての芸術家たちが求める究極の美、そのものだ。
「お褒めにあずかり光栄です。」
そう言って女性は俺に深い礼をする。
それで、俺をここによんだのは何故だ?心が読めるのなら言葉にだして答えなくてもいいだろ?
「構いません。では、単刀直入にいいます。……貴方は復讐を終えた後、何をするのですか?」
……はぁ……たかだがその程度のことか。
なにも変わらないさ。魔物を殺し、人を傷つけ、多くを殺める。ありふれた冒険者として生きていくつもりだ。
その果てになんて興味はない。
何せ俺はもう人としての心が壊れ、叩き直されて出来た『怪物』なんだからな。
「くっ……はははははははは!やっぱこいつはとんでもない怪物じゃねぇか、トワイライト!」
「ここまでの異常者ならオレたちの力を扱えるのも当然だ。」
突如、高笑いをしながら褐色の肌をさらけ出す娼婦のような女と唇を舌で舐める黒と赤を基調とした悪女が現れた
精霊、か……?にしてはトワイライトという個体と性格が全く違うのだが。
「そうだぜ、怪物。私はカース。呪詛の精霊さ。」
「俺はタイラント。暴虐の精霊。」
「そして、私がトワイライト。黄昏の精霊です。」
それぞれが俺に礼をしながら自己紹介する。
つまり、こいつらが俺の契約されている精霊なのか。
「いいえ、違いますよ。」
「私たちはあんたが私たちの『狂気』に耐えれる人格かどうか数年間も確かめていたんだ。」
「それで、貴方を呼び出した。契約するつもりがあるのか。」
契約してもいいぜ。何せ、特にメリットもデメリットも無いわけだしな。
「「「では、喜んで。」」」
そう言って三人は俺の中に入っていく。
これが精霊の契約なのか。あ……れ……?意識が……とおの……く……。
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「へぇ……ここがあの怪物の心の中か。」
「それにしても真っ暗。」
「だから私たちは契約するに値します。」
――――アタラシイ餌カ
「えっ、何!?吸い込まれる!?」
「これは……『暴食の精霊』の権能!?」
「あの怪物、心にとんでもない怪物を飼っていたようじゃねぇか……!」
―――――ウルサイ。
―――――我ハ主ノ契約精霊ナリ
―――――貴様ラ新参者ハ来テハナラヌ深淵ト知レ!
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
バリッボリッバキッ……
―――――フウ……旨カッタ。




