黒オークと黒風
「ブモオオオオオ!」
「ちっ!近いんだよ!」
棍棒を突き出し突進する黒オークを舌打ちしなかがら木の側面を蹴り空中に避け、隙だらけの背中に毒矢を射つが頑強な肌に刺さらず弾かれ、僅かな傷が残る。
まぁ、矢が刺さらないことは予想していたから言いが……。それでもあの程度の傷だと致死量には達していない。精々少し動きづらくなるだけだろう。
「ブモォ!!」
「ごふぉ!?」
俺が着地した瞬間、黒オークは反転し、遠心力の加わった棍棒を俺に投げ、俺は避けきれず腹に直撃。そのまま木にぶつかる。
くっ……咄嗟にメタルブーツの魔道具を使って僅かに射線からズレ、クロスボウを楯にしたけどかなり強い衝撃だ……。こいつ、本当に……強い。
「ブモオオオオオ!」
「[スピーディー]!」
止めを刺そうと棍棒を拾いざまに振り抜いてくる黒オークから避けるために無属性魔法の『スピーディー』を使い、棍棒の下をギリギリの所で仰け反って避け、へし折られた木の切り株に手をついて二撃目を避ける。
「ブモオオオオオ!」
「[ブースト]!」
凪ぎ払うのではなく叩き落としてくる棍棒をスピーディーを解除して『筋力を底上げする』無属性魔法『ブースト』を使い、剣で横に弾き、僅かに黒オークの体勢を崩す。
それなりの力で打ち込んだのに僅かかよ……!でも、僅かでいい。それだけあれば十分だ!
「[夜風・竜王咆哮]!」
「ブオオオオオオオ!?」
剣を持たない左手を突き出し、黒い風の暴風の塊を僅かに体勢を崩した黒オークの腹に撃ち込み、黒オークは驚愕の咆哮を上げながら後方に吹き飛ばされる。
弱い攻撃はあの頑丈な肌に弾かれるし、強い攻撃は隙が大きくなりすぎる。これはキツい。けど……もう幾つかの作戦は立ててある。
「ブモホッ!?」
起き上がった黒オークは辺りから立ち上る紫色の煙を吸い、吐血し地面に膝をついた。
実は、空中に避けた時に時間差で毒の煙を出す魔使い捨ての魔道具『ポイズン・シンドローム』を風上に投げておいたのだ。
魔道具自体が黒く小さかったため黒オークは気づかなかったのだろう。小型で強力な毒の煙を出すこの魔道具、実はかなりの欠陥があるのだ。
それは―――――
「(今かよ…………!)」
使い捨て故にいつ発動するのか分からない点である。
そのため、俺は黒オークが膝をついて苦しんでいる間に毒を多く吸い込まないように『防毒マフラー』と目に入らないようにするための『ポイズンゴーグル』を着けなければならない。
「あ、あぶなかっ
「ブモオオオオオオオオオオオオ!」
「ッ!?」
俺が僅かに安堵していると先ほどよりも速く、重い黒オークの棍棒の振り払いをギリギリの所で両腕をクロスさせて防御する。
まず……!この痛み、両腕とも粉砕骨折していやがる……!まずは回復しないと……!
「[夜風・月光治癒]」
「ブモオオオオオオオオオオオオ!」
「ちっ!」
俺は僅かに回復させた腕を庇いながら棍棒を振るう腕に飛び乗り、そのまま頭に蹴り入れる。すると、黒オークが僅かに後ろに下がる。
この黒オーク……そうか、この黒オークの特性は『毒』。毒を得れば得るほど能力が底上げされるタイプか……!
「けど……!」
「ブモオオオオオ、ブモオオオオオオオオオオオオ!」
辺りに無茶苦茶に振り回す黒オークの攻撃をギリギリの所で避けながら俺は毒の煙がない所まで移動する。
恐らく、この黒オークの特性は『毒を継続的に吸うor毒が消化されるまで』の時間しか強化されない。そして今回の場合は吸引。となれば煙の外に出るのが得策だろう。
「ブモオオオオオ……。」
やっと暴走状態が解除されたオークはこちらを向きながら先ほどまでとは違い、無闇に突進することなくこっちの行動を待っている。
おおよそ、毒を力に変えれるけど毒のダメージは普通に入るようだ。無駄に動いて体の負担を重くするのを防いでいるようだ。
これは俺にとってもありがたい。なんたって……幾つもの作戦を実行出来るからな……!
「これでも……食らえ!」
俺は『アビス』から毒矢と『聖人殺しのナイフ』を取り出し、すぐさま適当な方向に投げつける。
「ブモォ?」
「[夜風・螺旋撃]!」
「ブオオオオオオオオオォォォォォォ!?」
黒オークが俺の行動をいぶかしんでいる間に黒い風の通路を生み出し、矢もナイフも回転しながら矢は黒オークの腹を貫き、ナイフは黒オークの背中に突き刺さる。
突き刺さる瞬間、黒オークは悲鳴の鳴き声を上げてもがき苦しむ。
この技、回転速度を調整しないといけないからある程度の距離と集中できる時間が必要だ。それを稼げれたのは幸運だ。
黒オーク……お前の能力は強いよ。けどな、頭を使って闘うのは人の専売特許なんだよ。それが身体能力に劣る俺らの闘い方なんだからな。
(くそ、中途半端に回復させた腕の骨と筋肉繊維が悲鳴を上げていやがる。)
俺は内心両腕の痛みに耐えながら表面は全然平気そうに腕を動かす。
ナイフのような物を投げれるのは残りあと一回と言ったところか……。
「フブオオオオオオォォォォォォ!」
「それが来るのは予想出来ていたよ。[夜風・常闇穿ち]」
痛みのあまり激昂した黒オークが俺の方に全速力で近づき、棍棒を振り下ろしてきたため、左手に黒い風を纏って棍棒をへし折る。
物ってさ、自分よりも硬い物に高速で当たると案外簡単に壊れるものだ。今回はそれを利用させてもらったぜ。
「ブモォ!?」
「ぐ……おおお……!今だ、やれ!」
「はい!」
俺は衝撃で骨折の上裂傷が走る腕を押さえながら後ろに下がる。すると、驚愕していた黒オークの二つの瞳に二本の矢が突き刺さる。
実は、この場所は見張り場から直線で繋がっているから矢を射てるカーネならいけると思ったのだ。
けど、これはカーネの弓の腕にかけていた。最悪の場合賭けで極宝穿ちを撃ち込む予定だった。
そして、あそこにカーネがいたと言うことは―――
「ブモオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!?」
「もう、遅いぞ。」
「【闘気術・転弧】!」
―――――『闘武』のアルンがいる。
目を両方とも潰されながら俺に向かって突進してくる黒オーク首を駒のように回転しながらアルンが切り落とす。
体も倒れた瞬間、日の光が俺たちに照らされる。
こうして、長い夜が幕を降りた。




