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長い夜

「おい、ルーナ。そろそろ番だぞ。」

「……お、そうか。」

俺はウォルフに叩き起こされて荷台から出る。

荷台の中を見ると俺が寝てた場所の隣にカスミが寝ており、その隣にエラ、後は男衆が雑魚寝していて、エラとカスミを除く女衆は木々に天幕を張って眠っていた。

何故あの二人が俺の隣に眠っているのか?そんなことは知らないしどうでも良い。

「お前、モテるのか?」

「……どうしたんだ、藪から棒に。」

「あんな可愛い娘に慕われているんだぜ?手を出さないのかよ。」

「……エラはああ見えてAランク冒険者だ。手を出したら手痛いしっぺ返しが来るぞ。」

「お、おう……。」

何故か妬ましそうな目をこっちに向けたウォルフは荷台に潜り込んだ。

もし、他の奴等に手をだそうとするのであれば寝ながら警戒しているエラに瞬殺されるだろうな。あいつ、部屋で寝ている時とは違い何時でも起きれるように寝ているからな。

「……おや、あなたが次の番ですか。」

「カーネか。」

「ええ。私もルーナさんと同じですよ。」

見張りの場所に腰に矢筒を掛け左手に弓を持ったカーネがこちらを向いて座っていた。

どうやら、女子の見張り番はカーネだったようだ。

「よく眠れましたか?」

「あぁ。そっちは?」

「そこそこ休息をとることが出来ました。」

「……なら、いい。」

俺とカーネは背中合わせで辺りを警戒しながら事務報告をすませる。

……話が進まない。俺としてはここから夜明けまでの時間をどう過ごすかが一番気にしているのだが……。

「そう言えばルーナさん。」

「どうかしたのか?」

「カスミちゃんとセチアちゃんの引き取り先、いますか?」

「……いない。後から探そうとは思っていた。」

「私が引き取ってもよろしいでしょうか。」

俺の背中から真剣な声音でカーネが話す。

背中合わせだからどんな顔をしているのか分からない。が、もし真剣に検討してくれているのであればありがたい。

カーネは真面目な性格だし二人を奴隷として売り払おうなんて考えないだろうし、見張り番をしていることからそこそこの実力があると見て良い。

引き取り先としては申し分ない。だが―――――

「あくまで、本人たちの意志を尊重しろよ。」

「……分かっていますよ。私の家系はエルフの中でも古い家系です。その誇りは今も失っていません。」

「なら、安心出来る。……ッ!カーネさん、静かに。」

「……はい。」

俺は自分たちの近くに何かがいる気配を感じて目を閉じて謎の魔力を探す。

……この魔力……。恐らくオークか。数は二、三体。もしもの時を考えてアルンを呼ぶのが得策か。

「(カーネさん。アルンを呼んできて下さい。俺はちょっと倒してきます。)」

「(分かりました。連れてきたら少し応援をします。)」

俺は小声でカーネと話した後、それぞれの場所に向けて走り始めた。

にしても、何故オークたちは俺らの場所が分かったんだ?ここには魔物を誘き寄せるような物はない。もし『ロード』の進軍なら面倒な事になるぞ……。


=======

「ブヒヒッ。」

「ブヒ、ブヒヒッ。」

「ブヒヒヒッ!」

俺が忍び足森の中を探しているとオークの奴等が肉を貪り食っていた。

あたりに散らばっている衣服、革鎧から見るにあの肉は人肉(・・)。しかも、あれは冒険者の肉と見て良いだろう。

おおよそ、身不相応の相手と戦って負けて喰われているのだろう。生存者の気配は感じないからあの肉が最後か。

(………!チッ、『変異種』か……。面倒な……。)

俺は月の光の元で肉を貪り喰っている黒色の肌(・・・・)をしている他のオークよりも一回り大きなオークを見て内心舌打ちをする。

普通のオークは緑色の肌をしているがそのオークな黒色の肌。つまり何かしらの理由で肉体が変異した『変異種』だと言うことが分かる。

変異にも色々とあるが多くの場合元のランクから一つ、二つ上のランクと見るのが一般的だからあの黒いオークはB~Aランク相当の魔物だと言うことが分かる。

俺らの夜営地に来る可能性もあるし、仕方ない。殺しておこう。


「せりゃあ!」

「ッ!?」

俺が気配を隠しながらオークに近づいてジャンプし、踵落としでオークの脳天を粉砕する。

俺のブーツは魔鉱石の一つであるミスリル製でできた魔道具で軽くてもかなり硬く、更に撃力を底上げる魔方陣を刻んである。

オークどころか下位のドラゴンの脳天すら砕く程の力だ、オークが耐えれる訳がない。

「ブモォォォォォォォ!」

「[夜風・闇夜砲]」

俺に気付き、仲間を殺した俺を見て激昂した一般オークは近くに置いてあった棍棒を取り、俺に振り下ろしてくるが、それを難なく避けて黒い風の奔流を生み出し、一般オークの上半身をすっぽりと消し飛ばす。

「ブモォォォォォォォ……!」

僅か一瞬で仲間を殺した俺を見ながら黒オークは低い怒りのうなり声を上げる。

このオーク、仲間を殺されたのにかなり冷静だな。激昂して突っ込んでくれたならかなり楽だったんだが……仕方ない、殺るか。

「[夜風・闇夜穿ち]」

「ブモォ!」

俺は高速で黒オークに近づき黒い風を纏った拳を叩き込むがそれを難なく片手で受け止める。

すぐに反撃に片手の鉄の棍棒を突き出してくるため地面を蹴り、空中に避けて回転して着地する。

こいつ、中々強い。恐らく特化したのは防御……体の耐久力か。しかも、それを生かすために反撃(カウンター)を主軸とした闘い方をしていやがる。

あの耐久力に優れた肉の塊を剣で斬ろうとなればかなりの労力となるだろう。剣を使わずに闘うしかない、か……。あの様子から見ても魔法もそこまで効かなさそうだ。

俺の主な攻撃手段を二つとも潰されたか……仕方ない。久々に本気でやらないといけなさそうだ。


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