閑話 道外れた勇者
「うーん、ここまでかぁー。」
「うっ……ぐっ……。」
僕は全裸の女奴隷を椅子にして今回の複製品の能力を確認しながら薄切りのポテチ(のようなもの)を食べる。
僕の『スキル』は『物質模倣』どんなものでも精工なコピーが出来る能力だ。
だけど、コピーするものが大きければ大きいほど魔力(MP)がすり減らされるというデメリットもある。
けど、それでも勇者たちの中で一番応用性が強い能力だ。
(にしても、オリジナルの二分の一程度か……それが今できる僕の限界か。……イライラする。)
「がひゅ……。」
僕は椅子から降りて、椅子を蹴飛ばすと少しだけ怒りが静まる。
これでは駄目だ。これでは目立てない。僕は選ばれた人間なんだ。
僕は元の世界ではいわゆるモブだった。成績も身体能力を顔も何もかもが普通のごくごく普通のモブだった。
けど、ふとした理由から俺たちはこの世界に勇者として転移した。その時、僕は思ったさ。「やった!」ってね。僕の唯一の趣味であるラノベを読んでいたから、ここで多くのモブがチート能力を持っていたのだから俺にだって、てな。
けど、俺の『チート』は劣化コピーを作り出すだけ。そこそこ使える程度のものでしかない。
今回、『チート』を使ってコピーした古の勇者の魔道具を盗賊たちに高額で売り渡して性能を試して見たけどあっさりと倒されてしまった。
これではチートで俺Tueeeで成り上がりが出来ない。
(それにしても、あの男……一体何者なんだ?)
決め細やかな銀色の長髪に女のような整った顔立ち、更に赤と黒の左右非対称の瞳をした青年だった。
それに加えて僕のコピーをあっという間に倒してしまうほどの高い戦闘能力。本音を言ってしまえば……妬ましい。
(くそ!くそ!くそぉ!)
俺は気絶した椅子を何度も何度も怒りに任せて蹴り飛ばす。
何でたかだか現地人があそこまで強いんだ!?異世界人である俺の立場が無いじゃないか!こんな強敵がいるのなら妬まずにはいられないじゃないか……!
僕にはそんな『チート』はなく、何でこうまで能力が高い奴等ばかりが強力な『チート』があるんだよ!!
――――この時、男は失念していた。彼が普通の産まれであることを。そして、彼の能力が『チート』ではなく実力に裏付けされた戦闘技術と魔力技術、そして『異端』の力の使い手であることを。
「……勇者イズク様。そろそろ馬車の時間です。」
「……分かった。この椅子を片付けておけ。」
「分かりました。」
怒りのあまり椅子の女奴隷を殺してしまったところで部屋に従者が入ってきたためその従者に後は任せる。
この従者も俺がこっちに来てすぐに手込めにした女だ。なかなかに抱き心地が良かったから王族や他のクラスメートたちの密偵としてまだ生かしている。
「僕は……負けない……!」
僕は小声で言葉を話す。
あんな勇者らしい奴等には負けない。あんな奴等には負けれない。僕は……成り上がるんだ!例えどんな犠牲が出たところで。
この時、もしルーナが見ていたとしたら「妬む前に努力しろ。」というでしょう。
ルーナの力はチートではなくあくまで努力と偶然によって手に入れたものである。その事を決して忘れてはならない。




