剣魔祭前哨戦2
「……どこに繋がっているんだ?」
「……さぁ……。」
俺たちは階段を降りた先にあった通路をエラを前にして移動する。
俺のトワイライト・ミックスボイスは一つの『建物内』しか見えない。この特性上、この通路は何処に続いているか分からず、更に道が途中で分断されているのだ。
「……うん、向こうから空気の流れる音がする。多分、外に出ることになる。」
「どこら辺に出ますか?」
「……分からない。」
耳をピクピクと動かしながらエラは事実を伝え、エリカが不安そうな顔をする。
確かに、エリカの不安は当然だ。もし学園内に出れば俺たちは様々な生徒たちに襲われてしまうからだ。
俺たちならそれを突破することは簡単に出来る。だが、強引な方法だし、エリカや俺としてもあまり好ましくない戦術だ。
「……!?皆、避けて!?」
「いえ、もう遅いです!?」
エラとジャスミンが驚きの声を出した瞬間、俺たちが歩いていた場所に白い魔法陣が生み出された。
この魔法陣は……知ってる。
古代に失われた魔法の一つ、空間魔法だ……!
古代のエルフのみが使えるとされ、どんな物理・魔法的な防御でも防げない特性があり、その力で多くの魔物を殲滅していったものの、それを危険視したヒューマンの国が最終的にエルフの国を潰す理由の一つとなったのだ。
つまり、ここは――――!
「古代エルフの王国の遺跡か……!」
俺が一つの事実を認識した瞬間、視界が白く塗りつぶされる。
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「……ここはどこだ。」
気がついた俺がいた場所は森の中だった。
魔力の探知によればここと学園の魔力は同質、つまりここは学園であることは確定だ。
良かった……もし、他の国とかだったらかなり危険なことになっていたかもしれない。何せ、国と国の間で仲が悪いことは良くある。その為、国に入ったら即・捕まる事なんてあり得る。
「……ん?」
奥の方から剣と剣がぶつかり合う音が聞こえ、俺はその方向に静かに近づく。
誰か戦っているのか、この場合、アネモたち生徒会メンバーだろうな。
「―――せりゃああぁぁぁぁぁぁぁ!」
森と岩場の間で短く切り揃えられた赤髪の青年、テルトラが一振りの剣擊で複数の生徒を吹き飛ばす。
俺が一瞬で戦闘不能にしてしまったから闘う姿は見ていなかったが、あいつも中々見所がある。荒削りだが才能と努力は人一倍してきたようだ。
「フゥー、フゥー……!」
テルトラは荒くなった呼吸を無理矢理安定にさせようとする。
呼吸が荒くなるのは長い時間を闘い続けていれば良くあるが、無理矢理それを正そうとすると更に体力を消費することになるぞ。
それに、呼吸を無理矢理安定にさせようとしているから背後から敵が来てる事にも気がついたていない。……仕方ない、助けるか。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「遅いぞ。」
俺は森から出て、テルトラと生徒の間に割り込み、全身を使ってひねり、生徒のがら空きの脇腹を蹴り飛ばす。
「なっ、貴様は……!」
「今はそれよりも闘う事を意識しろ。」
テルトラの言葉を遮りながら、拳を構える。
俺は魔力を探知して分かったことだが、この辺りには案外敵が多い。そして、それらが近づいてきているからである。
剣を使わないのは相手の実力はそこまで高くないため、剣を使えば殺してしまう可能性があるかるだ。
「……来るぞ。」
「分かったよ……!」
俺とテルトラは集中し、森や岩場から出てきた他の生徒たちに攻撃を仕掛ける。
さて、始めようか!!