王都
「……着いたな。」
俺は馬車を降り、空をみやげた。
俺はこの国の王都にいた。
教王が暗殺され、学園が数日間休校になったから、最後の下準備の為に王都に来たのだ。
王都はブリンガルから馬車で一日の場所にあり、王城や国立図書館、国の禁書庫等がある。ブリンガルが魔法の中心なら、王都は行政、司法の中心である。
「……やはり、アースリアを連れてこなくて正解だったな。」
辺りを見渡し、俺は自分の考えの正しさを理解できた。
今回、王都に向かう際アースリアをブリンガルに置いてきたのだ。
アースリアは身分上、奴隷だ。王都ということもあり、無駄に爵位の高い貴族も多い。そんな中に見目麗しい(第三者視点)の共犯者を連れてこれば、ブリンガル以上の面倒事に巻き込まれる可能性が高い。
また、俺がやろうとしていることは正直に言って俺もやりたくない方法なのだ。そんなことをあいつには見せたくない。
「……さて、さっさと始めますか。」
俺は目的地に着くために、様々な人に聞き込みを始めた。
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「ここか。」
俺は様々な人から聞き込みをして、目的の場所である教会にたどり着いた。
教会はブリンガルにある教会を更に大きく、そして決め細やかな細工をされている。
聞き込みをしているとき、ここにいるべき男、トリスタンは既にこの町からたったことをわかった。新しい教王を決める場所はその教王が死んだ場所、つまりブリンガルになるためだ。
俺が教王を暗殺しようとした理由もここにある。あの男は基本的に教会内から出ない。殺すためにはあいつを誘きだす必要があった。その為、教王を殺すことでブリンガルに誘きだすことにしたのだ。
「……流石に、今は開いてないか……。」
扉に手をかけ、開けようとするも扉はびくともしない。恐らく、魔法的、物理的に強力な魔法陣が発動しているのだろう。
それに、今は朝方、人々が起き始める時間帯だ。そんな中、魔法を使って扉を粉砕することは出来ない。したらバレるからな。
裏口も同じだろう。そんな緩い魔法陣でもないだろうしな。
「……仕方ない。確証はないけど、やるか。」
俺は教会から離れた。
教会の近くには入る場所がないことは見れば分かるからだ。
「[風よ、風よ。迷宮を迷いし我に道を示せ。王の歩みは何人たりと止めてはならない。『ウィンド・ポイントマップ』]」
俺は白い風を生み出し、辺りにそよ風として撒き散らした。すると、目的の場所に入るための地図が頭に出来上がった。
(……本当は使いたくなかったんだがな。)
この魔法は『夜風』ではなく風上級魔法。つまり、俺が幼い頃に鍛え続けた忌々しい魔法なのだ。その為か黒い風である『夜風』とは違い、風属性魔法は白い風なのだ。古い本で呼んだのだが、普通、人間の魔力には色がある。基本の色に人の感情の色が合わさり魔法の色……つまり、魔法適正ができるのだ。
だが、俺には『夜風』の『黒』と風属性魔法の『白』という二つの色がある。これはとても希有なことらしい。
(いや、今はそんなことはどうでもいいか。)
俺は脳内の地図に従い、その場所まで走り始めた。
「……ここか。」
俺がたどり着いたのは街の中心部から少し離れた水路だ。この街は近くの湖から水を引いていて、街の至るところに水路がある。そして、それを利用した貴族専用の上下水道がある。
「よっと。」
俺は水路から上下水道の中に入っていった。
中は予想以上に広く、臭いもそこまでキツくない。恐らく魔法で消臭でもしているのだろう。
「[黄昏の精霊よ、我が力に呼応するもの、我が響きに共鳴するもの、我が脳裏にその道を示せ。『トワイライト・ミックスボイス』]」
俺は黄昏の精霊魔法を使い、この上下水道の全体図を頭にインプットさせた。
この魔法、記したいものインプットさせてくれるから案外使い勝手がよい。
(……やはり、この魔法たちは詠唱でしか使えない。)
エリカの精霊魔法は無詠唱で使えるが、俺の精霊魔法は何故か無詠唱で使うことが出来ない。
俺の予想だが、俺の精霊魔法は他の精霊魔法や属性魔法よりも複雑怪奇で効果の予想ができないものばかりだ。その為、魔法の効果を正しく理解できない、つまり規格外の魔法なのだ。理解出来ないということは『完全な理解』を必要とする無詠唱は出来ないということにもなるのだ。
「……進むか。」
俺は水路の中を歩き始めた。
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「ギシャア!」
「シャ!」
俺に攻撃しようと飛び掛かってきたゴブリンの脳天を一突きで突き刺し、そのまま横に凪ぎ払い血と油を落とす。
この水路は外にも通じている。その為か外のゴブリンたちがこの水路に住み着いている。幾つかの小部屋みたいなものの中にはゴブリンの繁殖場まであったため、かなり存在するようだ。
「……ここか。」
俺は目的の出入口の場所にたどり着き、石畳を押し上げて中に入る。
そこは豪華ながらどこか質素さを感じさせる作りの礼拝堂だった。俺がきたのは教会だった。教会もかなりの権力を持っているから上下水道があるだろうと予想していたからな。ま、これに関しては運要素が強かったけど。
「やはり、中には警戒用の魔法陣は刻まれていないようだ。」
中の魔力はそこまで高くない。魔力探知が出来るから分かることだが、魔法陣が刻まれていたり、その影響がある場所は基本的に魔力が若干他よりも高いのだ。
「……ん?何の音だ?」
まるで大きな足音のような地響きが……ヤバい!
「[夜風・黒纏い]!」
とっさに黒い風で身を隠し、物陰に隠れる。
「フゥゥゥゥゥゥゥ!」
奥の部屋から上半身、手をを有刺鉄線で拘束され、顔に布を被せられた呼吸がうるさい巨大な男が出てきた。
あの姿……噂で聞いたことがある。この国で多くの人間を殺し、女を拐い、奴隷として売りさばいたとされる最悪と言われた盗賊団『スリープ・ファング』の巨体のリーダー、『タイラント兄弟』。その特徴である三メートルを越える巨体と完全に一致している……!
あいつらは昔、余りにも暴虐無人な振る舞いから王国で危険人物と認定され、軍隊を使い、盗賊団を滅ぼした。兄弟は捕まり、すぐさま処刑され首が広場に置かれたらしい。俺が冒険者を始めて三年後のことだった。
(兄か弟か知らないがタイラントの生き残りか……いや、他にも魔力がある。しかも、強力な奴がこっちに向かってきていやがる……!)
「ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」
魔力を強化し、更に隠れるのを強くすると、奥からタイラントと同じような男が出てきた。
タイラント兄弟は瓜二つだと聞く……恐らくその二人だろう……。見るからにヤバいし、何故いるのかがわからないが……こいつらは倒しておいたほうが良さそうだ。
「フゥゥゥゥゥゥゥ……。」
俺は剣を鞘から抜き、上段に構えて突きの体勢に入る。俺の『夜風』の中で一番破壊力があり、武器を使う必要のある技だ……!
「[夜風・極宝穿ち]!」
剣を突き出した瞬間、溜めていた夜風が一つの針となり、兄弟の片方を頭を消失させ、自然に倒れた。
「ヌウウウウウウウウ!」
「うっさい、引っ込んでろ![夜風・極宝穿ち『連』]!」
余りにも突然なことに驚いているもう片方に更に黒い風の針が幾度と突き刺さり、身体中が穴だらけとなり、絶命する。
「はあ……はあ……。」
俺は剣を支えに、何とか立つ。
この技は基本的に連擊として使ってはいけない技だ。何せ、俺の魔力の大半を使う技だから一撃必殺の奥の手だし、全てを一点に集中させるから体力と集中力を多く奪われるからだ。
「取りあえず、先を急ごう。」
けど、今は休憩をしている暇はない。さっさと行かないと。




