入学試験 sideアースリア part1
「はぁ……本当に簡単でしたね。」
ルーナ様と別れて、私は室内にある部屋で礼儀作法を見る試験を受けました。受けましたが……多くの者の作法が殆どなっていませんでした。茶の一つ、礼の形一つで主の品格が表れるものなのにこのものたちは主に対して忠誠心がないのでしょうか。
それでも、この礼儀作法のテストにおいて私は合格したでしょう。なにせ、私は元は王族、少々魔族風にはなりましたが他の者より良くできたと思いますし、何より審査員の顔がとても満足そうな顔をしていましたから。
「とても良い動きでしたね、アースリア様。」
次の会場に向かう途中、後ろから誰か話しかけて来ましたね。別に無視しても良いのですが……ルーナ様の品格が疑われるのは嫌ですし振り向きましょうか。
後ろから話しかけてきたのはルーナ様以上の長身に濃く腰までかかる程の長さを持つ紫色の髪、シュッとした整った顔立ちが特徴の燕尾服を着たハイ・エルフの女性でした。
ハイ・エルフとは古代……とは言っても私たちの国よりも後ですが……にあったエルフの王族のことで、普通のエルフよりも長い耳と高い精霊との交信性、何よりエルフの数倍から数十倍はある寿命……私たちと変わらない……を持ち合わせたまさにエルフの上位互換とも言える種族です。
殆ど死に絶えたと聞きましたが……まだ生きていたのですね。
「なぜ、私の名を知っているのですか?」
「我が主であるケネス様が気にしておりましたので、少々ギルドの受付嬢に名前を教えて貰いました。」
受付嬢……あのラルとか言う兎の獣人ですね。ルーナ様に恋慕の感情を抱いていのに全く手を出さないあの女ですね。
手を出してもらわないと始末出来ないのに…運の良い女ですね。
「……私はさっさと行きたいのですが。」
「私もですよ。ただ、場所がわからず、この辺りを歩き回っていた次第です。」
ああ、なるほど。
「つまり、私に道を教えてもらおうと?」
「そうです。」
「……まあ良いわ、ついてきて下さい。」
私がそう言うとこの女は私の隣を歩いてきた。普通、奴隷なら後ろを歩くものだけど……。
「何故、後ろを歩かないのですか?」
「私の主、ケネス様は奴隷とかそう言う身分や種族を殆ど気にせず、本心も純粋ながらよく私に打ち明けてくれる本当に善き御仁なのです。その癖のようなものです。後ろにいきましょうか?」
「……いいえ、私も奴隷だもの、構わないわ。」
そのケネスと言うこの女の主はルーナ様と同じように身分を気にしないが為に苦労しているようね。
「ただ、私を除く他の者に本心を打ち明けてくれないのが悩みの種なのですけどね。」
「……少々興味を持ちました。話しをお聞きしましょう。」
ルーナ様は聞けば七歳で全てを失い、その頃から冒険者として自分の研鑽をし続けたと聞きますし、彼の本心のヒントになるかもしれません。
「ブルームフィールド家は代々様々な悪事を働いている、いわば悪徳貴族というものです。」
あー、お父様もそれらの悪事の尻尾を捕まえるのに苦労していましたね。
「ケネス様はそこで生まれた異端児……悪事を好まない性格をしていました。」
親が反面教師になっている。
「ただ、ケネス様のお父上様にその事をばれたらすぐに追放というため、本心を隠しているのです。」
……酷すぎませんか?
「実際、私が使えてから二年、ケネス様が八歳の頃にケネス様のお母様、レイラ様は……夫であるマイク様に毒殺されました。」
……はい?
「レイラ様はマイク様に悪事を止めるように何度も説得していたのですが……聞き入ってもらえなかったようです。」
つまり、自分の意向に背く者なら自分の妻でさえ殺すのを躊躇わないの?本当にクズね。生かしておく価値をもない。
「その頃からケネス様は外では傲慢な振りをする事がいっそう多くなり、あまり本心を言わなくなってしまいました。」
まあ、そうなるわね。だって気づかれて殺されたら今まで積み重ねてきたものの価値や意味が無くなるもの。
「そのマイク様は本当に外道ですね。」
「はい、その通りです。私たち奴隷や使用人たちが地下室にある拷問室で苦しむ様を映像を記録する超高級な魔道具でとることが趣味の男ですよ?外道以外の言葉はありません。」
サディストの上に特殊性癖とか本当に外道を通り越してごみ以下の価値もないですね。
「そろそろ行かないと試験会場につけませんよ?」
「あ、そうですね。早めにいきましょうか。」
気がついたら時間が押し迫って来てますし私と……誰でしたっけ?
「あなた、名前は?」
「私はディアナ・ユグドラシル、古くは古のエルフの国『精霊国家ユグドラシル』の王族だった者、あなたは?」
「私はアースリア・リース、魔族の国の一つ『ドラゴニア・リーン王国』の元姫です。」
「そうでしたか。では、早くいきましょうか。」
「ええ。」
私とディアナはそのまま廊下を速めに歩いて試験の会場に向かいました。




