熊
くま?
クマ?
熊?
確かにこの辺りは23区内に含まれるとはいえ、緑の多い住宅街だ。
畑も多いし、ハクビシンや狸の目撃情報も多い。
とはいえ、さすがに熊はない。
熊はない。
ないよね???
いったい何が起きているのかと向かった玄関先。
そこにいたのは、呆然と立ち尽くす一葉さんと、玄関先に佇む幽霊のような少女だった。
まず全体的に色素が薄い。
白い肌に、アッシュブラウンのふわふわボブショート。
そして、ネイビーブルーの膝丈のだぼっとしたワンピース。
袖口やワンピースの裾から覗く四肢は驚くほどに華奢だ。
そして何より、かろうじてワンピースが長袖とはいえ、クリスマスも近くなり始めたこの季節に彼女は生足だった。
足元はスニーカーだが、靴下を履いているかどうかも怪しい。
うっすらと青ざめた頬と、感情の見えない平坦な表情がますます幽霊っぽさを引き立てている。
全体的に何が起きているのか私一人追いてけぼりにされてはいるものの、とりあえず不審人物でも危険な野生動物が出たというわけでもないということだけは確かだ。
「一葉さん、中入った方がよくないですか? 寒いでしょうし」
「うんうん、そうだね、おいで熊」
「うん」
ぐすぐす、と鼻を鳴らしながらも、熊、と呼ばれる少女がおずおずと一葉さんの部屋の中へと足を踏み入れる。
案の定裸足だった彼女は、ひやりとしたフローリングの感触に怯んだように少しだけ立ち止まった。
なんとなく、散歩に行きたがらない雨の日のわんこを彷彿とさせる。
「熊?」
「……その、ごめん。人んち、なのに裸足で。………きたない、よね」
「あ、足汚れてるの? 足汚れてるなら拭く? タオル出そうか?」
「たおる……」
彼女は考え込むようにそのまま黙り込んでしまう。
なんだかその姿は、タオルが必要あどうかを悩んでいるというよりも、ただただ途方にくれた子どものようだ。
「まあ汚れたら拭けばいいし、とりあえずあったかい部屋の中に入るといいよ」
ぐい、とそんな彼女の手を引いて、一葉さんが暖かい部屋の中へと彼女を招く。
そして、ちゃぶ台の下からもう一つの座布団を取りだすと、ぽんぽん、と叩いてそこに座るように促した。
そうか。
あの座布団は彼女のものだったのか。
そんなことを思っていると、ちら、と一葉さんが私へと視線を持ち上げるのに気付いた。
「みーちゃん」
「はい」
「悪いけど、何かあったかい飲み物淹れてもらってもいい? コーヒーがいいかな。熊、コーヒーでいい?」
「…………」
「コーヒー好きだったよね」
「…………」
こくん、と小さく彼女が頷くのを待って、私はポットへと向かう。
カフェで働いているだけあってコーヒーを淹れるのはプロだ……と、言いたいところなのだけれども。
特別な器具が揃っている、というわけでもない上に、家主が紅茶派というだけあって今ここにあるのは至って普通のコーヒーだ。
ただし、私が普段店で使っている豆を買ってきて置かせてもらっているので。
いわゆるおうちカフェ的な。
多少は店の味に近いコーヒーとなっている。
紙のフィルターに挽かれた豆を大きめのスプーンで二杯ほどよそって、カップを二つ用意する。
せっかくなので、私の分も淹れよう。
ポットから湯を注ぐと、すぐにコーヒーの香ばしい香りがふわりと部屋の中に広がっていった。
「これ、どうぞ」
「…………ありがとう、ございます」
小さな声と共にマグカップを受け取る華奢な白い指先の先端だけが、外の寒さを思い出させるかのように血の色を透かして赤く染まっている。
その痛々しさに、なんだか見てはいけないものを見たような気になって私はふと一葉さんへと声をかけた。
「一葉さんも、あったかいの何か淹れましょうか。紅茶はどうですか?」
「うん、お願い」
「フレーバーは何が良いですか?」
「うーん……桃のやつがいいなー」
「はーい」
再びポットの方へと戻る。
何やら複雑な事情がありそうだし、何なら私はコーヒーを飲み終えたら帰った方が良いかもしれない。
戸棚の中から、白桃烏龍茶の茶葉を取り出し、お茶パックの中に適量を放り込んでマグの中へと落とし込む。
お湯を注げばOKだ。
ふわりと今度は甘やかな桃の香りが広がる。
「はい、一葉さん。それと……もしなんだったら、今日は私、帰りましょうか」
「あー…そうだなあ。熊、熊はどうしたい?」
「えっ、……あの、その……だったら私帰るから!!」
ごめんなさいごめんなさい、と謝りながら、熊さんが立ち上がる。
そのまま素早く玄関に向かいかけたのを、彼女より玄関側にいたものでつい条件反射気味にブロック。
「よくやったみーちゃん!」
褒められた。
「逃げるな熊、とりあえずこっち座って落ち着いて。ほら、せっかくみーちゃんがコーヒー淹れてくれたんだし。あ、そうそう。そちらの背の高い美人さんはみーちゃんと言う。商業BL沼にどっぷり浸かりしご腐人だ」
「おいこら一葉さん何言っちゃってくれてんですか何言っちゃってくれてんですか」
大事なことなので二度言いました。
こんな可憐で繊細そうな人を相手に、一体何を言ってやがるのか。
下手したら最悪未成年かもしれない熊さん相手になんてことを。
しれっと性癖を暴露した一葉さんに、思わず声がワントーン低くなる。
ますます怖がられてしまうのでは、と思ったものの……私を見上げる熊さんの表情には何故だか安堵の色。
「あ……もしかして」
「もしかしなくとも熊も沼の住人だ」
「あー……」
納得の声が出た。
まあ一葉さんのお友達なのだ。
どこかしらの沼の住人である可能性は非常に高い。
果たしてこの状況で、あなたの沼はどちらですか、と聞いても良いものだろうか。
私がしんみょうな顔をしていると、一葉さんが今度は彼女の紹介をしてくれた。
「みーちゃん、そちらは熊。かつては樋熊のような上から下に振り下ろす系パンチの使い手だった」
「一葉さん説明になってない」
樋熊のごときパンチの使い手、とは。
「あと、えーとソシャゲ沼の住人でした。課金こそ愛」
「…………なるほど」
私はさっぱりなのだが、一葉さんはソシャゲ沼に片足を突っ込んでいる。
前に一度、無欲こそが勝利の鍵なのだ、とかなんとかスワった目でぶつぶつと言いながら、ガチャを回すためのボタンを私に押させようとしたことがある。
ちなみにそれでも一葉さんの欲しがっていたキャラは出なかった。
一葉さんは無言で崩れ落ち、すんすん泣いていた。
私のせいではないと思う。
それはともかく。
「初めまして、三倉です。ええとその、私、この近所に住んでるんで。一葉さんちにはわりと気軽に遊びに来られるんです。だから、もし何か二人で話したいことがあるなら気兼ねせず」
「……………くま、です」
「…………」
「…………」
また黙り込んでしまった。
困った。
それと同時に少し意外な気もする。
一葉さんの周りにいるのは、一葉さんの同類だ。
一葉さんが話していて楽しい相手、一緒にいて楽な相手だ。
ネット上で一葉さんに紹介してもらった一葉さんの友達、というのは誰も彼も会話の上手い人が多かった。
何かとネタや知識が豊富で、自分の好きなことや好きなものについてを話すのが上手い人、というのが一葉さんの友達の印象だった。
目の前の熊さんは、そんな他の一葉さんの友達とは大きくジャンルが異なっている。
何はともあれ、ここで私が身を引くと、熊さんが出ていってしまいそうだ。
ちら、と部屋の奥にいる一葉さんを見る。
「…………」
く、と小さく顎を引く所作。
よし。
「熊さん、それじゃあせっかくなんで、一緒にコーヒー飲みませんか? ほら、座って座って」
「…………」
意識して柔らかな声を出す。
あまり押しつけがましくなりすぎないように。
それでいて、相手をその気にさせるような。
日頃職場で鍛えた接客ボイスである。
熊さんは少し困ったように視線をおどおどと揺らして、それでも私を押しのけてまで出ていく気力はないのか、おとなしく座布団へと戻った。
「…………」
私は一様さんへとお茶のマグを渡し、自分の座布団を玄関側に引寄せて座る。
位置関係的には、
玄関 私 熊さん 一葉さん
になる。
これなら熊さんが再び部屋を出ていこうとしても、私のブロックが間に合う――はず。
「で、熊。熊よ」
「…………」
「何がどうしたのさ。こんな突然やってきt」
「!」
「!」
びくっと逃げ出したげに熊さんの肩が揺れる。
釣られて私の身体もブロックするべく動きかけてしまった。
「…………」
「…………」
お互いちょっと気まずい沈黙。
これで、私が何のためにここに座っているのかが熊さんにもバレた感。
「あのな、熊。私は怒ってない。来客中に突然押しかけてきやがってー! なんて怒ってなんかない。それはそこのみーちゃんも同じだぞ。みーちゃんだって気を悪くしたようには見えないだろ? ね、みーちゃん」
「はい。私、全然怒ったりなんかしてないですよ。むしろ、何かあったのかな、って心配してます」
「うん。そう。私も、熊のことを心配してる。こんな風に突然やってくるなんて何かあったのか、って。特に熊、三年ぶりだろ?」
三年、ぶり。
一葉さんの口から出た思いがけない言葉に、思わず私は一葉さんを見る。
だから一葉さんは、玄関先に現れた熊さんに、あんなに驚いたのか。
そしてだからこそ熊さんは、一葉さんに対してこんなにも遠慮がちなのかもしれない。
視線を落とした先には、熊さんの足元に敷かれた座布団がある。
三年ぶりだというのに、一葉さんの部屋には熊さんの座布団が残っていた。
片付けが苦手で、散らかし魔の一葉さんなのに、熊さんの座布団は大事に取っておいていたのだ。
「いーちょん、」
おずおず、と伸ばされた白い華奢な指先が、一葉さんの二っとワンピースの生地をそっと手繰る。
一葉さんはその小さな仕草に引寄せられたように、椅子から降りて床に膝をついた。
「うん」
「…………怒って、ない?」
「怒ってない。会いにきてくれて、嬉しいぐらい」
「っ…………」
ひく、と小さく喉が鳴る音が聞こえて。
「い”-ち”ょ”ん”ん”ん”……!!」
びえええ、とまるで子供が泣き出すような盛大な嗚咽と共に、熊さんが一葉さんへと飛びついた。
一葉さんの懐に飛び込み、ぎゅうぎゅうと背中を抱きしめて泣きじゃくっている。
一葉さんは少しばかり驚いたように双眸を瞠ったものの、その腕をそのまま熊さんの背中へと回してあやすようにぽんぽんと叩く。
「いーちょんごめんね、ごめんなさい、連絡とらなくてごめんなさい無視してごめんね、ごめんなさい……っ」
「いいよいいよ、そういうもんでしょうに」
「いーちょん会いたかったよお……っ、いきなり来てごめんなさいー!」
「うんうん、わかったから。来てくれて良かったんだって。また会えて、嬉しい」
ところどころ不明瞭ながら、熊さんは一葉さんに謝り続けているようだった。
それに対して、一葉さんはその一つ一つにはいはいわかったわかった、と優しく相槌を返している。
熊さんがようやく泣き止んだのは、それから十分ほどしてからのことだった。
ぐすぐす、と鼻を鳴らしながら顔を上げる熊さん。
一葉さんの二ットワンピースの胸元辺りは、ぐっしょりと濡れている。
熊さんはすぐにそれに気づいたのか、また謝ろうとするものの、
「いいんだって洗えばいいんだし第一これ部屋着だもん。草臥れて良い服なんだから気にしないで。それよりも熊、顔洗ってきたら? それともお風呂にする?」
「…………お風呂、借りてもいい?」
「うん、いいよ。着替えはある?」
「……ない」
「そっか、私の部屋着でいいかな?」
「うん」
「お腹は? お腹は空いてない? ピザの残りがあるけどあっためようか?」
「たべる……」
「そっかそっか」
甲斐甲斐しく世話を焼く一葉さんに見送られて、熊さんがお風呂場へと消えていく。
それを見送り、シャワーの水音が聞こえ始めたところで一葉さんが私へと向き直った。
「ごめんね、みーちゃん。なんか変なことに巻き込んだみたいで」
「いや、いいんですけど。私いても、大丈夫ですか?」
「帰りたかったら帰っちゃっても大丈夫だよ。ああ、でもその前に、ちょっとお使い頼まれてくれると助かる」
「お使い?」
一葉さんの眉尻が、へにゃ、と下がる。
「ぱんつ」
「ぱんつ」
思わず復唱する。
そして、それから納得した。
そうだ。
確かにさすがに下着類を貸すわけにはいくまい。
「わかりました。それならちょっとコンビニまでいってきますね。10分ぐらいで戻ります」
「ごめんね、ありがとう。あ、下にチャリもあるから使って」
「はーい」
一葉さんが差し出した財布を受け取って、玄関へと向かう。
靴をつっかけ外に出ると、ひょう、と冷たい風が頬を撫でていった。
コンビニで、買い物を済ませて戻っても、まだ熊さんはお風呂から上がっていないようだった。
「一葉さん、買ってきましたー! ついでに明日の朝ごはんになりそうなパン類も買ってきました」
「わー、ありがとう。パシっちゃってごめんね」
「ううん、全然平気です」
がさごそ、と買ってきた菓子パンや総菜パンの類はレンジの上に乗せて、ビニールに入ったままの下着は一葉さんに渡す。
一葉さんは私が出かけている間に着替えていたようだった。
二っトワンピースから、くたりとした良い感じに草臥れたトレーナーと、スウェットパンツに代わっている。
「一応念のために三つ買ってきました」
「マジ助かります」
感謝、と一葉さんが私を拝む。
「とはいっても財布、一葉さんのですもん」
「こんな寒い中買い物にいってもらっちゃっただけでもありがたいよ」
はー、と息を吐きつ、一葉さんがお風呂場をノックする。
音に気づいたのか、シャアアア、と聞こえていたシャワーの音がぴたりと止まった。
「くまー?」
「……なに?」
「下着、用意しといたから。着替えと一緒に中に入れてもいいかー?」
「うん。ありがとう、いーちょん」
「いいってことよ」
格好つけた男前な一葉さんの言葉に、ふす、と小さく熊さんも笑ったようだった。
この部屋にやってきてからずっと何かに怯えたような平坦な表情か、もしくは泣き顔しか見せていない熊さんだ。
どんな顔で笑ったのだろう、と少しだけ気になる。
一葉さんは用意した部屋着と下着類をまとめてバスタオルと一緒に抱えて風呂場へと差し入れると、部屋の中へと戻ってきた。
床の座布団に座った私の向かい、椅子へと腰掛けて深く息を吐く。
「一葉さん」
「なぁに」
「熊さんとは、三年ぶり、だったんですか?」
「うん」
特に隠す様子もなく、一葉さんはこっくりと頷いた。
「熊はねえ。三年前に、オタクを辞めたんだよね」
「おお、オタク引退?」
「そう。ソシャゲ沼とデザイン沼とコスプレ沼あたりに浸かってたんだけどね。職場恋愛して、オタクじゃない彼氏ができたんだよ」
「あー……なるほど」
稀によく聞く話だ。
一度オタク沼に浸かった人間は、なかなか沼から上がることが出来ない。
一つの沼は際限なくどこかの沼に繋がっているし、上がったと思ったら違う沼に片足を突っ込んでいる、なんていうのはしょっちゅうだ。
そんな中で、ごくごくたまに聞くのが、このパターン。
オタク趣味に理解のない、いわゆる一般人と恋愛した場合。
オタク趣味を持つ人間というのは、パートナーに同類を選ぶ傾向があるのであまり聞く話ではないけれど。
ごく稀にオタク趣味からすっぱり足を洗った人間に切っ掛けはなんだったのかと聞いた際に、言われることの多い理由がこれだ。
だから、「稀によくある」。
「熊とは、お互い浸かってる沼が違ってもなんだかんだ一緒に遊んだりもしてたからさ。熊がオタク趣味を辞めてからも、友達付き合いは続くと思ってたんだけど――……そのうち、連絡が取れなくなっちゃったんだよね。メールやラインしても返事はないし、ツイッターのアカウントもいつの間にかなくなっちゃってて」
「…………」
私と、一葉さんが出会ったのが二年ちょっと前のことだ。
熊さんが一葉さんの前から姿を消したのは、私と一葉さんが出会う少し前、ということになる。
「お互いに学生の頃から仲良くしてたから……、寂しくはあったんだけどね。熊が幸せにしてるならいっかなーって思ってたんだ。もとより連絡が途絶えることもそんなに珍しくはなかったから」
「そうなんですか?」
「ネットで長らくつるんでるとね、お互いの萌えどころが代わると付き合いが一時的に途絶えることって珍しくないんだよね。お互い同じものに萌え滾っているときは毎日連絡するし、連日遅くまで萌え語りするけども――…お互いの沼が変わると、違ってくる。ほら、結構皆、ジャンルごとにツイッターのアカウントを変えたりするでしょう?」
「そうですね。私もリアル垢とオタク垢の二種類ありますし」
私が一葉さんとつながっているのは、オタク垢の方だ。
リアル垢では、繋がっていない。
それは別に私が一葉さんにリアルを隠している、とかそういうわけでなく、単純に好みの問題だ。
一葉さんと私はオタク仲間であり、そちらの話題を共有している。
だから私は別に一葉さんに私とバイト仲間のやり取りを見られたいとは思わないし、一葉さんにしてもそんなのは見ていてもつまらないだろう。
とはいえ、逆は大問題だ。
バイト仲間にオタクであることをカミングアウトしていない私としては、キラキラ輝くリア充属性の強いバイト仲間たちに自分のオタク垢なんていうのは絶対にバレたくない。それ故の鍵垢だ。
「熊は確かコスプレ垢と、通常オタク垢、あと取引垢、それとジャンル垢があったんじゃなかったかなあ」
「結構ありますね」
「まあねえ。ほら、コスプレも苦手な人は苦手でしょう」
「あー……」
納得の声を上げる。
同じオタクでも、それぞれに地雷がある。
コスプレ、というのは確かに同じオタクの中でも、好き嫌いの分かれるジャンルだ。
それ故に、コスプレ垢と通常のオタク垢を分けている人も珍しくはない。
珍しい、といえば逆に一葉さんだ。
一葉さんは、オタク垢をジャンルごとに使い分けたりもしていないし、リアル垢すら持っていないと聞いた。
オタク垢一本という潔さだ。
「そんな感じで、その時ハマってるものにあわせてアカウントを作ったりしてたから。私とつながってる方では浮上しなくなっても、どっかにいるんだろうなーって感じだったし、戻ってきた時に遊べればそれでいっかなーというゆるーい繋がりでね。熊、オタク引退するって言ってたから。オタク垢は全部消してしまったとしても、どっかで元気にやってて、私が相変わらずのんびりやってれば――…いつかまた、熊が会いたいと思ったときに声をかけてくれるんじゃないかって思ってたんだよねえ」
はあ、と小さく息を吐く。
そんな一葉さんの前に姿を現した熊さんは、酷く消耗しているようだった。
離れていた三年の間に、熊さんには一体何があったのだろう。
そんなことを考えているうちに、がたりとお風呂場の方から物音が聞こえた。
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