10 悲劇の恋
「わたくしがこの惨劇を引き起こしたですって?
いったい何をおっしゃるのですか、カメリア嬢。」
ロザラインは薄く笑った。
しかしカメリアはすでに真実を見据えていた。
「誰一人として貴方から直接命令を受けてはいない。
貴方は彼らの心を操り、殺しあいをさせたのです。」
若者たちは、狂気に突き動かされて破滅を選んだ。
彼らは操られているとも気づかないままに、悲劇を演じさせられたのだ。
「テオはわたくしの弟、ハリエットはわたくしの従姉妹です。
どうしてわたくしが彼らの命を奪うのでしょうか。」
嘲笑うロザラインに、カメリアは揺るがない声で応える。
「ロザライン様、貴方はウェーバー家とモンターン家に復讐をしたのですわ。」
ロザラインの気だるげな眉がぴくりと動いた。
「12年前、ロザライン様はモンターン家の使用人バルサザと共に行方をくらませましたわね。
誘拐だといわれていましたが、本当は駆け落ちだったのではありませんこと。」
「なんでそう思うのよ。」
動揺するロザラインとは対照的に、カメリアは表情を変えない。
「本当に誘拐だったら、ハリエットは決して貴方に協力を求めたりしないはずですわ。
同じような境遇を経験したからハリエットは貴方を頼ったのではありませんか。」
「あの子に協力なんてするはずないでしょう!」
ロザラインの叫びが礼拝堂に反響した。
「あのときのわたくしたちは、2人の自由と未来を夢見ていた。
それなのに、あの人はわたくしの目の前で殺されたのよ!」
バルサザとロザライン、身分違いの恋に落ちた2人は手を取り合って駆け出した。
ウェーバー家は当時、ロザラインとアイデン子爵子息ルイスを結婚させようとしていた。
ロザラインが使用人と駆け落ちしたと認めたくないウェーバー家は、バルサザを誘拐犯にした。
バルサザは犯罪者として警察の手で射殺された。
ロザラインの顔は憎しみに歪んでいた。
「あの人を不当に扱って追い詰めたモンターン家も、あの人を死なせたウェーバー家も、アイデン子爵家も!
みんな不幸になればいいんだわ!」
呪いの言葉を吐くロザラインに、カメリアは冷静な眼差しを向ける。
そしてカメリアは、「それだけが、貴方の本心ですの。」と問いかける。
「その激しい憎しみも、貴方の心からの言葉なのでしょう。
けれども、ランドルフとハリエットの誓いに立ち会い、ランドルフを匿ったのも、貴方の本心からの行動ではないでしょうか。」
カメリアの推理を前に、ロザラインは言葉を失う。
涙が彼女の頬を伝った。
「あの人は、幼いランドルフを可愛がっていたの…。」




