第2話「作戦会議」
司令室。
そこには、トーマスとファクターズの姿があった。
トーマスは先ほど、火神から直接作戦内容の共有を受け、それを4人へ伝えていた。
「アメリカ軍トップからの直々の指名とはねぇ……」
閃は少し驚いたように言う。
閃だけではない。
他のファクターズも、ムート将軍と直接面識はない。
だが、“アメリカ軍トップ”という肩書きだけで、その人物の重みは十分伝わっていた。
「正体不明機……」
音は不安そうに呟く。
「その正体不明機に、フレアⅢ……あまりに情報が少なすぎる」
トーマスは静かに眉をひそめていた。
「ファクターズには、現場で状況を判断しながら行動してもらうことになる」
「……毎度のことながら、本当にすまない」
トーマスは深く頭を下げた。
「な、何でトーマス総帥が謝るんすか!」
烈は慌てて言った。
◆
ファクターズは、早速作戦会議を始めていた。
「フレアⅢまでの移動は、俺がやるとして……問題は、その後だよなー」
閃は腕を組みながら言った。
フレアⅢ付近までは、《雷化瞬来》で接近できる。
つまり、敵に気づかれず一瞬で近づける可能性が高い。
「ただ、《ソウル・テザリング》はすぐ解除しねーとな」
烈が言う。
その通りだった。
今回の任務では、4機がそれぞれ別行動に近い形で、複数のミッションを同時進行する必要がある。
ファイ戦のように、4機で固まって動き続ける戦法は取れない。
そのため、移動後は即座に《ソウル・テザリング》を解除。
各自エーテルを一定量回復してから行動を開始する流れになる。
「んで、問題は——俺と音だな」
「うん……」
烈の言葉に、音も静かに頷いた。
理由は、2人のエーテル属性にある。
烈は炎、音は風。
自然法則に従えば、そのどちらも宇宙空間では本来発生しない。
もちろん、エーテルスキルは“エーテルそのもの”を媒体としている。
そのため、完全に使用不能になるわけではなく、使い方次第では発動も可能だ。
だが、環境の影響を大きく受けるのも、また事実だった。
◆
「烈と音は、今回フレアⅢの攻略を担当してほしい」
閃はそう言いながら、2人を見た。
「俺と怜は、2人の護衛と敵機の討伐をメインに動く」
怜も静かに頷く。
烈と音とは対照的に、閃と怜の属性は、宇宙空間との相性が良い。
「敵の規模が分からない以上、長期戦を想定して動いた方がいい」
その言葉には、全員が同意していた。
「間違いなく、“Pジャマー”の妨害はあるな」
烈が言った。
Pジャマーとは——
EN兵器への干渉と、広域電磁妨害技術を組み合わせた複合妨害兵器。
かつての世界大戦では、各国が標準装備のように使用していた。
現在でも、オルフェをはじめとする一部の研究施設や軍事基地では、防衛設備として配備されている。
「まずは、それを真っ先に破壊するしかないね」
閃は言った。
フレアⅢの詳細データが存在しない以上、頼れるのは現地での情報収集のみ。
だが、Pジャマーが存在する状態では、ドローン運用が著しく制限される。
さらに——
正体不明機の存在。
それが、今回最大の不確定要素だった。
その後もファクターズは、細かな役割分担や想定される状況について、作戦会議を続けていった。
◆
そして——作戦内容が決定した。
まず、閃の《雷化瞬来》によって、4機はフレアⅢ付近まで一気に接近する。
その後、《ソウル・テザリング》を解除。
約30分待機し、消耗したエーテルをある程度回復させてから、作戦を開始する。
最初の目標は、Pジャマーの発見と破壊。
そして、敵機が現れた場合は、閃と怜が前線へ出て、敵を引きつける。
その間に、烈は引き続きPジャマーの破壊を進行。
同時に、ツムギのビットを用いて、フレアⅢ内部のデータ収集と共有を行う。
そこから動力部の位置を特定。
発見後は、烈と音が内部へ潜入し——フレアⅢの動力部を破壊する。
これが、今回の作戦概要だった。
そして——
“フレアⅢ攻略作戦”の決行は、明日の早朝となった。
◆
EDドッグ。
閃は、能勢と話していた。
「両肩にガトリングガン。ラックはアサルトライフル」
「あと、両腰にマガジンを2つずつ」
閃は、バサラヲ用の装備を注文していた。
「わぁー、重装備だねぇ」
能勢は少し驚いたように言う。
普段の閃からは、あまり聞かない装備だった。
「Pジャマー対策と、長期戦を見越して、です」
閃はそう答えた。
閃が指定した装備は、すべて実弾兵器。
Pジャマーの影響を受けない構成だった。
「オッケー。やっとくねー」
能勢は、いつもの気の抜けた調子で返事をする。
「よろしゅう」
閃も笑顔で返した。




