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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
宇宙篇

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第1話「イカロス」


『人は、どこへだって行ける。宇宙でも、その先でも。そこに人がいる限り』——ニコラス・マーベウス



日本軍・司令室。


そこには、火神の姿があった。


大型モニターに映し出されているのは、アメリカ軍のムート将軍。


「一難去って、また一難……と言うべきか」


火神は深く息を吐きながら言った。


『まったくだ』


ムートも苦々しく答える。


『もっと早く、手を打つべきだった』


2人が話しているのは、フレアⅢ——かつて天華連盟が所有していた、軌道衛星兵器。


元々は、アメリカ軍が開発していたフレアシリーズ。


それを天華が奪取し、独自改造を加えたものが、現在のフレアⅢである。


そして——


ファイによって、天華の本拠地は消滅。


それに伴い、フレアⅢの管理・コントロール権も宙に浮いた状態となっていた。


ファイという存在がある限り、下手に動けばさらなる被害を招きかねない。


そのため、各国とも強硬策を取れずにいた。


だが、ファイ消滅を確認したアメリカ軍は、即座に“フレアⅢ奪還作戦”を開始。


精鋭ハート部隊を編成し、現地へ向かった。


『結果は——』


『部隊は、“謎のSD”により壊滅』


『ハートも、生存したまま拘束されている』


ムートは低い声で言った。


「つまり……人質か」


火神の表情が険しくなった。



「フレアⅢを防衛する、謎のSD……」


火神は低く呟いた。


『天華のレギオンではない』


『かといって、既存のどのSDとも一致しない。だが——』


『おおよその見当はついている』


「……“LUNASルナス FACTORYファクトリー”か?」


火神は鋭く言った。


『その通りだ』


ムートは頷く。


『“イカロス・マーベウス”の遺産——いや、“亡霊”と言うべきかもしれんな』


イカロス・マーベウス——

かつて、“スペリオル計画”を提唱し、人類の宇宙進出を本気で目指した人物。


しかし——


その思想は、国内外の“地球共存派”から激しい反発を受ける。


さらに、長引く世界大戦による予算削減。


様々な要因が重なり、計画は次第に追い詰められていった。


そしてイカロスは——祖国アメリカを見限った。


彼は、自身と同じ“宇宙進出派”だった天華連盟と手を組む。


資金と技術を提供し合いながら、極秘裏に計画を進めていた。


その中で建造されたのが“LUNAS FACTORY”。


イカロスが月面の土地を買収し、建設した巨大月面工場だった。


そこに、人間はいない。


存在するのは、宇宙用UB。


そして、全てを統括するマザーブレイン“ワイズマン”。


完全自律型工場——それが、LUNAS FACTORYだった。


そして——


イカロス亡き後も、LUNAS FACTORYは稼働を続けている。


所有権はイカロス及び天華連盟にあった。


だが、天華はすでに消滅。


現在、フレアⅢと同じく所有者不在の状態となっていた。



フレアⅢが天華連盟に奪取された背景にも、イカロスは深く関わっていたとされている。


そもそも、フレアシリーズの開発自体に、イカロスは大きく関与していた。


そして、生前のイカロスは、祖国アメリカに対して強い失望と憎しみを抱いていた。


だからこそ、アメリカ側にも大いに心当たりがあった。


「……大体の事情は分かった」


火神は腕を組みながら言った。


「で、ムート将軍。“依頼”ってのは?」


『オルフェのファクターズに、“フレアⅢの動力部の破壊”を依頼したい』


ムートは真っ直ぐ言った。


「……人質は?」


火神は少し目を細める。


『こちらで何とかする』


ムートは即答した。


『エドワードの件もそうだが、君たちには借りを作りっぱなしだ』


『それは重々承知している』


『……その上で、お願いしたい』


そして——


「了解した」


火神は静かに口を開いた。


「オルフェには、こちらから伝えておこう」


『……すまないな。よろしく頼む』


そこで通信は切れた。



静まり返った司令室。


火神は、ゆっくりと椅子へ深く腰掛ける。


フレアⅢ——大陸すら簡単に消し飛ばせる最悪の兵器。


それが今、誰の管理下にもない。


(野放しよりは……まだ、アメリカの手にある方が“マシ”か)


(しかし、エドワードめ……)


(どうせなら、あの忌々しい兵器も一緒に消してくれれば良かったものを)


火神は重く息を吐いた。

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