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神は、その人が耐えることのできない試練を与えない
……人類の歴史には、数多の《英雄》が存在する。
困難というには余りにも過酷な状況を打ち破り、絶望を希望へと変えた彼ら。
そしてそんな彼らを、ヒトは褒め称え後の世に語り継ぐ。そうして、《英雄》として彼らは歴史に名を遺してきた。
短くも永いヒトの歴史に、星のような煌めきを以て点在する《英雄》。……けれども、どれぐらいの《ヒト》が知っているだろうか。
数多の英雄の影で、名を遺すことなく散った《偉人》が確かに存在することを。
数奇な因果によって、歴史に埋れたその彼を。
…記されなかった物語。
彼の人の歩んだ、“歴史”。
だから私は、ここに紡ぐ。
彼の人の存在を。
私が知りうる限りの、彼の人の想いを。
…これから私が記すは、歴史に埋れた事実。
私がここにこれを記すことによって、彼の存在が消えぬようにと私はただそれを願うばかりである。
～以上、《名もなき手記》より抜粋
