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僕は何者かになりたかった。子供の頃に虐げられていた反動かもしれない。
子供が大人から虐待を受けたり、同級生からいじめを受けると、人格も精神も壊れてしまう。壊れたものは元に戻らない。どんなに綺麗に取り繕っていても、決して元には戻らないのだ。
僕は綺麗に取り繕っていたが、周りの目が気になりすぎて、怯えた人間性になってしまった。そのせいか、自分ではないなにかになりたかった。
ずっと牢獄に閉じ込められているような閉塞感があった。隣の牢からは壁を絶え間なくひっかく音が聞こえ、牢の外からは、猫が金色の目でじっとりとこちらを睨みつけている。
僕は息を潜めている。牢の中で膝を抱え、口を閉じ、耳をふさぎ、目を閉じていた。塞いだ耳からは、壁をひっかく音が聞こえるし、目を閉じていても金色の瞳は僕から目を離さない。
逃げ出したかった。
それだけだったのだ。




