閑話15 記念日
【エリス視点】
「行ったわね……」
「エルーちゃんもシルヴィと同じで真面目だから少し心配だわ……」
それには同感だ。
ソラ君もエルーも去り、天庭には私とサクラだけになる。
「や……やったあああっ!」
勝鬨を上げる私。
今日くらいは喜んでもいいわよね!
「ソラ君に、君付けで呼ばせて貰っちゃった!ソラ君と……お友達になっちゃった!!」
嬉しさのあまり天庭を飛び回る。
「こりゃ、今夜は星のお漏らしかな……」
「せめて……流星群って言ってくれない?」
私をお漏らし女神みたいに言わないでほしい。
しかしそう言いつつもサクラこちらを向き直し、改めてお祝いをしてくれる。
「良かったわね、エリス」
「サクラのお陰よ。ありがとう!」
一番の功労者の手を取る。
「まあ確かに私とシルヴィが居なかったら、もっと拗れてたわね」
「う…………」
「シルヴィにも感謝しときなさいよ?」
「わ、分かってるわよ……」
サクラは後ろを向いて歩き出した。
「それに、大事なのはこれからよ。ちゃんとソラちゃんに嫌われないように頑張るのよ?」
親友はそう言って天庭を去る。
「もう、お節介焼きなのは相変わらずね……」
でもアオイがいなくなってから、以前にも増してお節介になった気がするわ……。
「カエデにも、感謝しないとね……」
私がソラ君を見つけられたのも、カエデのお陰だから。
人の一生はとても短い。
だからこそ私は美しいと感じるのかもしれない。
私も昔と比べて、ずいぶんと変わった気がする。
最初は世界の安定化と退屈をまぎらわすために呼んだ聖女だけど、今はこうして親友になったり、恋をしてしまうくらいの距離感になっている。
すると急に流れてきた分身の煩悩にびくっとする。
「もう、急に来るんだから……。びっくりさせないでよ……」
シルヴィを視ると、ソラ君と手を繋いでいた。
「ちょっとっ!?がっしり手、繋いでるじゃない!?」
ソラ君がこちらに来てから、向こうの世界を見る回数が極端に減った。
「手をひっぱられちゃって、まあ……」
きょどっているけど、シルヴィが内心嬉しいのは分かっている。
「いいなぁ……」
別に、本当にシルヴィがソラ君と付き合ってもいいと思っている。
ソラ君がどんな選択をするのかは分からないけれども、私はその選択肢を狭めるようなことはしたくない。
推しは生きて幸せでいてくれているだけでいい。
「さて……」
ソラ君の覗き見を止め、地球の方を視る。
「たまにはあっちの世界も、視ておかないとね……」
私はいつものようにタブレットを取り出し、SNSに書き込んだ。
『エリちゃん:今日は、最推しに顔を認知された記念日!』