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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第7章 慷慨憤激
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閑話14 御託宣

【エルーシア視点】

 エリス様がソラ様に告白なされた後、私は残るように言い渡されました。


 聖女様でもなんでもない私が、天庭にまで来ているという非現実。

 地に足がつかないとはこの事を指しているのでしょうか?


「エルーシア……いえ、私もエルーと呼んでいいかしら?」

「も、勿論で御座います!」

「堅苦しいのはなしにしましょう。まずは、ソラ君に優しくしてくれて、ありがとう」


 謝られた次は、感謝をされてしまいました。


「彼の味方でいてくれたこと、そして彼を理解してくれたこと。本当に感謝しているわ」

「サ、サクラ様との約束でしたから……」


 エリス様はふぅと息をつかれました。


「けど、()()()()()

「あっ……」


 その一言で、エリス様が私に何を仰りたかったのかが分かったような気がしました。


「貴女、ソラ君に告白されそうになったわよね?」


 エリス様は一気に険しいご尊顔をなされました。


「も、申し訳御座いません!メイドの分際で身を弁えず……」

「違う!そんなことじゃないわよ!」


 あれ……?

 何が違ったのでしょうか?


「あの時、()()()()()()()()()?」

「へ……?」


 どういうことなのでしょうか……?


「あんなふにゃふにゃソラたんの誘惑に負けないなんて……じゃなくてっ!!」


 エリス様は首を横に振りました。

 確かに、あの時のふにゃふにゃしたソラ様はとてもお可愛らしかったです。


「貴女、ソラ君のこと好きよね?」


 …………神様は……何でもお見通しなのでしょうか。


「で、ですが……!」

「さっき言ったでしょう?私のことよりソラ君の意志を優先しなさいって!!なのに貴女は……」

「ちょっと、ストップ!ストップ!落ち着きなさいエリス!過程をすっ飛ばさないの!」


 サクラ様が助け船を出してくださいました。


「エルーちゃん。あの日貴女はソラちゃんに何て言って断ったか、覚えてるかしら?」

「は、はい。確か……『それ以上は、本当にダメです』と……」

「そう。その後ソラちゃん、謝ってなかった?『ごめんなさい、もう言わないから許して』って」

「えっ……!?」


 どうしてサクラ様は、お分かりになられたのでしょうか……?


「エルーちゃん、貴女は、ソラちゃんのトラウマを踏んでしまったみたいね……」

「ト、トラウマ……!?」


 またしても私は、やってしまったのでしょうか……。


「カエデは他の聖女の時とは違って、きちんとこちらに来る時期を話し合ってからこちらの世界にきてもらったの。でもこちらに来る前、ソラ君に見つかったらしくてね……。カエデはごまかしたんだけどソラ君は勘が鋭い子だったみたいで、カエデともう逢えなくなるんじゃないかと思って、引き留めようとしたみたい」

「その結果、二人は半ばケンカ別れみたいになってしまったらしいわ」


 そこでようやく私は自分のしてしまったことに気付きました。


「カエデが亡くなる間際の話だけど、彼女は自分がソラ君を大切に想っていたことを伝えられなかったことを後悔していたわ……。それに、ソラ君もそう……。あの日ソラ君が起きたときに言った『おばあちゃん、大好き』も、前世で伝えられなかったからこそ出た言葉なのよ」


 思い返せば、ソラ様は普段から定期的に「いつもありがとう」と感謝のお言葉を口にしておられました。

 ソラ様は楓様と離ればなれになってしまった時のことを後悔し、今度こそ後悔しないようにご自分の気持ちを伝えるようにしておられたのですね……。


 それなのに、私ときたら……。


「わ、私は……なんてことを……」


 ツーっと垂れてきた涙を拭いました。


「ね、エルーちゃん、正直に答えて。貴女はソラちゃんの事、好き?」


 サクラ様が優しいお声でそうお聞きくださいました。




「……は、はい……。お慕い……しております……」




 エリス様の美しいご尊顔がずいっと近付きます。


「なら、ここで約束して。次は、絶対に貴女からは止めないこと。今度こそソラ君を、私達で幸せにするのよ!」


「っ、はいっ!約束……しますっ!」


 エリス様は、ご自身が一番愛されているソラ様のことを愛してしまっても、お怒りにならずにソラ様のことを第一にお考えになる、とてもお優しい神様です。


「いい返事ね。あ、ソラ君が他の子に惹かれていたら同じように伝えるのよ?いい?これも、約束」


 そう仰るとエリス様から小指を差し出されました。




 私は「はいっ!」と頷くと、小指を差し出します。




 神様とする指切りはまるで時間が止まったかのように感じるほど貴重な体験で、私にとってかけがえのない思い出となりました。

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