第55話 告白
「へ……?」
今、なんて言われた?
僕を、愛している?
エリス様が?
「ど、どうして……?」
「それはその、一目惚れ……と、言いますか……」
聞き間違えじゃないことによって更に思考が停止してしまい、僕は呆けてしまっていた。
「でもでもっ、一目惚れなだけじゃなくて! 人柄が素敵なところとか、普段は可愛いけどたまに頭がよくて決めるカッコいいところとか、可愛いところとか、全部を知って好きになったのっ!」
可愛いって二回言ったよ、この女神様……。
「では、私に女装させたのは?」
「それは……ソラきゅんが男装していたら、女の子の方から寄って来ちゃうだろうから……」
そんなことあり得ないと思うけど。
だって前世でそんなこと一度もなかったし。
「それに……ソラきゅんには心から幸せになってほしいから、女の子達が寄ってくるより自分で相手を選んで貰いたかったの」
「エリス様……」
「私は何があってもあなたの味方のつもりだから……。 別にあなたとお、お付き合いできなくても……なんならそ、側室でも良くって……。 単に好きだって伝える必要があっただけだから……」
とても健気なエリス様。
僕はどうしていいか分からなかった。
面と向かって愛していると言われたのなんて、本当に初めてだった。
「正直、どうしていいのか分からないです……」
「そ、そうよね。 こんなこと急に言われても……」
「いえ……嬉しくないわけじゃないんです。 エリス様、美人ですし……。 でも、私にとっては初対面ですから……」
「ソラきゅん……」
「その呼び方……やめてほしいです。 嫌な思い出を思い出すので……」
「あ、そうよね……ご、ごめんなさい。 向こうではそう呼んでいたから、つい癖になってしまっていて……。 ソラ君、でいいかしら……?」
向こうで「きゅん」呼びをしていたということは、僕の全てが知られてしまっているということだ。
消したい過去を、この人には知られてしまっている。
「はい……」
僕は恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。
「ほ……本当は、会ったらまずエルーちゃんの件で怒って、その後に感謝をしようと思っていたんです」
「感謝……?」
「私をあの世界から救ってくれてありがとうございます。 こんな私でも、友達がたくさんできましたって……」
下を向いていたが、エリス様の方を見つめ直す。
「私はエリス様を勘違いしていました」
僕には初めてのことでよくわからなくなっているけれど、その親切心はおそらく下心から来るものなのだろう。
「でもそれは、勘違いしてしまうくらいにお互いのことを知らなさすぎるからだと思いました」
手をさしのべる。
「ですから、まずは友達から、です! 私にエリス様のことを、色々と教えてください」
「は、はいっ……!」
そう言って僕が求めた握手に、エリス様は恐る恐る応じた。
◆◆◆◆◆
エルーちゃんとエリス様とサクラさんでお話があるそうで、僕とシルヴィアさんは追い出されるように天庭を後にし、朱雀寮へ。
「なんだか……なにもしていないのに疲れました……」
「お疲れ様です、旦那様」
「……そういうことでしたか……。 なんだか色々と理解しました」
いや、理解しても納得しているわけではないんだけど……。
2階の僕の部屋から庭を眺めると、エレノア様のお祝いなのか、みんなでバーベキューをしていた。
僕とシルヴィアさんは下へと向かうためドアを開け自室を出る。
「……こんな私の、どこがいいんでしょうか……?」
「主なら、『全て』とおっしゃるでしょうね」
「……」
こんなに大きな愛情は、愛情が皆無だった世界にいた僕ではとても一度には受けとめきれない。
その結果があれだ。
自分の曖昧な決断に、自分自身が一番納得がいっていない。
「あんな返答で、本当に良かったんでしょうか……?」
「それなら心配ありませんよ」
自信満々にシルヴィアさんがそう言う。
共用スペースの窓からみんなのいる庭に出る。
すると突如大量の流れ星が落ちてゆく。
「この流星群が証拠です。 主は今、歓喜に震えておりますから」
雷の時といい、なんとまあ分かりやすい……。
でも『他人からの愛情』初心者からすると、それは非常にありがたいことなのかもしれない。
「……アドバイスと言う程でもないですが、奥方様はしたいようになされば良いと思いますよ。 私も主の一部だから分かりますが、それが主の一番の望みですから」
そういえば意志繋がってるからシルヴィアさんはエリス様でもあるのか……。
見られているとは微塵も思ってなかったから、恥ずかしさに僕はシルヴィアさんの手を取った。
「お、おおお奥方様っ!?」
「せっかく綺麗な星空の下でバーベキューやってるんですから、シルヴィアさんも行きましょう!」
「で、ですが私は天使ですから食べる必要は……」
「ほら、楽しむだけでもいいですから!」
女神様が愛してくれているのなら、僕も少しは生きている意味があったのかもしれない。




