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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第7章 慷慨憤激
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第53話 研究

 お昼を挟んで午後。

 帰ってきたエルーちゃんも交えて勉強会の続きをすることに。


 以前の事を覚えてくれていたのか、エルーちゃんも教える側を積極的にやってくれていた。


「エルーもシエラも、教えるの上手」

「えへへ。でも、シエラ様の教え方を真似ているだけです!」

「エルーちゃんは私の弟子みたいなものですから……」


「本当のソラ様の一番弟子はエルーちゃんだったのね。」

「そ、そんな。恐れ多いですっ!」

「謙遜しないの。エルーちゃんが素敵なのは私が一番分かっているんですから!」

「ソラ様……。ありがとうございます」






「むむむ……」


 エレノア様が詰まっているなんて珍しい。

 ちらっと見てみる。


「合成クラフト論……。なんですかこれ?とても3年生の範囲とは思えないんですけど……」

「学校の勉強はあまりしない質でね。これは独自の研究さ」

「エレノア様はノー勉で入試に臨んで初めて聖女さま以外で900点台を叩き出した天才なのよ」


 サクラさんが言ってた聖女以外で過去に900点出した人ってエレノア様のことだったのか……。


「天才って、本当にいるんですね……」

「いや、入試満点のシエラ君にだけは言われたくないよ……」


 いや、僕の場合は9割くらいズルみたいなもんだし……。


「学生なのにもう研究までしているなんて、凄いですね……。でも、クラフトは確か合成魔法のようにはできなかったと思いますが……」


 合成クラフト論というタイトルだし、そういう研究のようだ。


「ああ。でもおかしくないかい?どうして同じ魔力を使っているのに、魔法は複数人で出来てクラフトは一人でしか出来ないのか?」

「た、確かに……」


 これが天才の発想かと思った。

 僕はゲームの中の常識のようにしか捉えてなかったけど、そう聞くとおかしい気もする。




「ただ、これは答えが出かかっているんだ……。実は合成魔法は魔法陣を重ねるようにやるが、別に混ざっていないんだよ。魔法自体を混ぜているのは発動した後の行程というのが証明されているのさ。だから、魔力の必要量を使って想像した通りのものを作るクラフトとは違う気がしてね……。試しに研究部の仲間と一人では魔力量が足りないクラフトを二人でやってみたんだけど、うまくいかなかった」


「……それって想像と、魔力供給を分担すればいいんじゃないですか?」

「……!?」

「クラフトが普通一人で作るものなのは、『想像した通りのものしか作れない』からじゃないでしょうか?だから二人で作るものを想像しあっても……」

「……完全に意志疎通が出来ているわけじゃないから想像したものが曖昧になって作れなくなっていたと!なるほど、君は天才だな!」


 『想像した通りのものしか作れない』は、あくまでもゲームに一言一句違わず書かれていた知識だ……。

 他人の知恵で天才と言われるのは違和感しかない。




「試してみますか。これは『黒飛竜(ワイバーン)の魔石』と『黒檀(こくたん)の木』です」

「ちょ、これは『漆黒のワンド』の素材じゃないかっ!!なんて貴重なものを……」

「いや、腐るほどありますから気にしないでください……」


 むしろこの間倒した空の魔物達のせいでワイバーン素材が補充されちゃったんだよね……。


「まずは私と二人で同じ『漆黒のワンド』を想像してみますよ。せーのっ!」


 いつもの感じでクラフトをやろうとしたら、バシッと魔力が弾かれて失敗した。


「こんな風になるんですね……。では、今度はエレノア様が想像してください。私は魔力だけを送りますから」

「わ、わかった。いくよ、せーのっ!」


 僕はエレノア様の背中に手を当て魔力を流す。

 エレノア様が集中すると、素材が光りやがて『漆黒のワンド』が出来上がる。


「で、出来た……!!」

「やりましたね」

「軽い、軽すぎるぞシエラ君!こ、これがどれほど凄いことか分かるかい……!?」


 興奮しているのはわかるけど、僕の肩を持ってぐわんぐわん動かさないで……。

 これじゃあ口から凄いものがクラフトされてしまう……。


「わか、わかりましたからぐわんぐわんするのはやめてください……」

「あ、ああすまない。だが、これはクラフト研究界の最高位である聖女院クラフト研究室に報告すべきだと思う。シエラ君……いやソラ様、ボクの代わりにお願いして貰えないかい?」


「いえ、どうせならご自身で説明してきてください。これはエレノア様の気付きのお陰ですから、エレノア様の研究成果です」

「ソラ様……。だが、ソラ様の知恵もなければ出来なかった。だから、二人の研究ということにさせてほしい」

「まあそういうことなら……。エルーちゃん、申し訳ないんだけど……」

「はい、お任せください!エレノア様を聖女院クラフト研究室までご案内いたします」


 そういってウキウキのエレノア様とエルーちゃんが2階に上がっていった。






 一時間くらいして戻ってきたエレノア様。


「せ、聖女院クラフト研究室でアルバイトすることになった……」

「ええっ!?」


 ど、どうしてそうなった……!?


「あ、研究成果は論文にしてボクが起こすことになって、ソラ様の研究成果でもあるから体裁などは聖女院できっちりチェックして貰えることになったよ。それ以外にもいろんなアイデアとか話していたら研究室の皆様と気があってね。是非うちに来てほしいとスカウトされたんだ。こんなに嬉しいことはないよ!ソラ様、ありがとう!」

「なるほど、内定おめでとうございます。今日はお祝いをしないと、ですね!」




 あれ?そういえば……


「一緒に行ったエルーちゃんはどちらへ?」

「分からない。先に帰って大丈夫と言われたんで帰ってきたんだが……」


 その理由も、降りてきたエルーちゃんと二人によってすぐに分かることになった。


「サクラ様に……大天使様!?」


「奥方様、お待たせいたしました」

「準備が出来たわ。天庭でエリスがお待ちよ。ソラちゃんと……それにエルーちゃんとも話がしたいそうよ」

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