第511話 従妹
「じゃあルージュちゃんは今、聖女学園の入学試験の勉強中なんだ」
「ええ!」
「いいなぁ、私も二年前に戻りたい……」
「そしたらシェリーだけお義母様と一緒に卒業できないよ」
「それは嫌ぁ……」
「ははは」
「二年前の方がお勉強が楽だったのに」と呟くのがセフィーではなくシェリーになっているのがなんだか時の流れを感じる。
教育係のストレス発散に利用されていたことで勉強が苦手になってしまったセフィーはこの一年で勉強の楽しさを覚えたらしい。
僕も積極的に褒めるようにしていたけれど、Sクラスの周りの環境も功を奏したのかもしれない。
対して元々読書が好きで勉強は苦手ではなかったが執筆活動に熱が入り、最近は勉強が少し疎かになっているのがシェリーだ。
中間考査もヒイヒイ言いながら試験前に詰め込んでいたけど、きちんとSクラスの点数を維持できているのだから偉いところだ。
「お義母様ぁ、セフィーがいじめてきますー」
「僕としてはちゃんとご飯を食べていてくれればそれでいいよ」
「本当のお母さんみたいなこと言わないでくださいよ……」
「シェリーお姉さまは人気作家様でございますもの。貴族の間でも有名でしてよ!」
「そんなに有名なの?」
「ええ!それに百合文学は聖国貴族の間では女王陛下の御成婚で今超絶ホットなのですわ!」
「なるほど……」
「それに、ソラお姉さまもそうでございましょう?」
「?」
「橘涼花第100期聖女親衛隊長やエリス様、メイドさんなど様々なお噂が御座いましてよ!」
あ、そういえばシェリーが小説にしてるのって、僕の話なんだっけ……。
最近読めていなくて把握していないけど、小説の僕っていったいどうなってるの……?
「お義父さん」
「ルージュは今年でもう成人だし、伝えても良いと思うよ」
「……?」
「ルージュ、今から言うことは誰にも話してはいけないよ」
「わたくし、口だけは堅いですわ!」
「実は……」
ルージュちゃんに、僕の性別を伝える。
「ソラお兄様でしたのね……」
「がっかりしてるよね、ごめんね」
さっきお姉さまがたくさんで嬉しいと言っていたし、兄は既に本当の兄がいるからね。
「いえ、そうではなく……。その、出来ることなら一緒にお風呂に入りたかったのですわ……」
「ルージュ、別に入りたければ入ればいいんじゃない?」
「ちょ、お義母さん!?変なこと言わないでよ!」
「でも、ロットお兄様のご婚約者のメイベルお姉さまが仰っていましたの。その……殿方はケダモノですって……」
う、反論できない。
でも婚約者にそこまで言わしめてしまうロット君って、大丈夫なの……?
「……ロットをここに連れてこなかったのも、社交界でソラ君に会わせなかったのも、彼がまだ結婚していないことをいいことにふらふらとしていてね。その代わり今度メイベルは紹介するつもりだよ」
まるで要注意人物だ。
僕の知る限り、単に男性の方が表に出している人が多いだけで、男女問わずケダモノはいるものだよ……。
「良ければ、あとでルージュに勉強を教えて貰えると助かるよ」
「でしたら、お義母様ですね」
「お義母様はこの中で教えるの一番お上手ですもの。何より現役の先生でもあらせられるのですから」
うぅ、ハードル上げないでよ……。
「ソラお兄様が教えてくださるの?」
お兄様って言われるのがくすぐったくも嬉しく、こんなに可愛い妹が欲しかったなどと思ってしまった。
その日は、日が沈むまで皆で勉強会をした。




