第502話 油断
披露宴も終わり、僕は日常に戻っていた。
披露宴では特別ゲストに梛の国の弥王が来た時は驚いた。
彼はもうすぐ行われる五国会議のため、先に来ていたのだという。
国のことはもう落ち着いたようで冬子さんに任せると言っており、会議までしばらく聖国観光を楽しむとのことだ。
一国の王にしてはなんとものんきなものだが、「他の国もそうですが、ソラ様が魔族の問題もお国の問題も全て解決なさるせいですよ」と言われてしまった。
今は魔王も倒し四天王も半分倒している状況で、「大聖女様のおかげで魔族の驚異が減り、以前よりも安全に聖国に向かえるのですよ」と言っていた。
基本的にこの世界で戦争や人同士の大きな争い事を起こそうなどと考える人は居ない。
それは聖女が療養として過ごしやすい環境にすべく、定期的にエリス様やシルヴィアさんが各国を見回り、危険因子が淘汰されるように尽力したからだという。
時にはエリス様の怒りで国が滅び、再結成したところもあるらしく……南の国の王家そのものがコロコロ代っている歴史があるのは、そのせいだという。
まあ何をやらかしたのかは教えてくれなかったけど、シルヴィアさんの目がマジになっていたため、とても聞ける雰囲気ではなかった。
またチュートリアルといわれたゲームのおかげで僕たちには広く民に知れ渡っているものより多くの知識と経験値とステータスがあり、そしてチートとも思えるアイテムボックスも貰っている。
そのおかげでまず人の中で「聖女をどうこうしよう」などと考える輩はいないらしいし、万が一そんなことが起きても死なないようになっている。
そのうえ僕たちだけが「最上級魔法」を使えるというのが絶妙なバランスとなっている。
僕たちでも一国を滅ぼしたりすることは造作もないことで、たとえステータスで聖女を越えた人が現れたとしても不利な構造になっているのだ。
それほどの強い力を持つことになる聖女を選ぶのだから、エリス様としても性格などをよく鑑みて慎重に厳選しているのだという。
事実、ほとんど全ての歴代聖女は魔族や魔王との戦闘で亡くなっているか、寿命で亡くなっている。
病気だったら基本治せるから、それくらいしか脅威がないということだ。
なので各国で起こっている揉め事も、基本的には戦争を始めようなどというものではなく、家族や内輪同士の揉め事が多い。
次の当主は誰だとか、お家や国のお金関連の問題とか、そういう類いのものだ。
魔王は倒したし、四天王リッチはシルヴィアさんや神獣の皆が数を減らしてくれている。
あとは裏にいるアレや残りの四天王さえ動き出さなければ、ひとまずは安全だ。
世間では魔王と四天王の半分を消したことで、世界の脅威よりも僕たちの方が優勢だとする考えが多いようだ。
まあ僕達聖女やエリス様はそうは思っていないけれど、わざわざその話をして人々を恐怖や混乱に陥れるような趣味はない。
僕としては早く何とかしたい気持ちはあるけれど、エリス様には止められているし、何より向こうから一切動きがないので、僕はそのまま出てこないのであれば問題ないとも思っている。
「ごきげんよう、ソラ様」
「あら、リリエラさん。ごきげんよう」
「うふふ」
シエラと話すときより、ソラと話すとき、リリエラさんはなんだかおしとやかな雰囲気になるな。
やっぱり僕って肩書きに生かされているだけの人間なんじゃないかとたまに思う。
「どうかしましたか?」
「……いえ。ソラ様も聖女学園の淑女のように素敵な挨拶をなさるので。それもシエラさんの影響でしょうか?」
「う……ふふ、そうですね。そう思われることは光栄なことですね……」
しまった、二年間聖女学園で培われてしまった癖が……。
最近いろいろあって、気が弛んでいたせいか油断してたかも……。




