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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第21章 首尾一貫

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第489話 対人

「ソラ様、お食事はなされた方がよろしいですよ……」

「はぁ……はぁ……」


 精神的に参ってしまうと、どうやら身体の方にも影響が出るようで。

 僕は熱を出して寝込んでいた。




 ――シルヴィアさんが次代の聖女の宣告をした日、僕の取った行動といえば、奇行の限りを尽くすことだった。


 地球から離れたことで、過去の事について面と向き合って解決する必要がなくなったため、それでいいと思っていた。

 机を叩いて脅されたこと、ハイヒールで背中を何度も蹴られたこと、フライパンで殴られたこと。

 熱して熱いままのフライパンを投げられたなんて事もあった。

 思い出したくもない数多の地球での出来事が掘り起こされた僕は、サクラさんの部屋の端に隠れるようにうずくまった。


「ソラちゃん……?」


 そして心配したサクラさんが僕に近付いてくる姿が、追いかけてくる母親と重なって見えてしまった。

 その瞬間、僕は掘り起こされた記憶に対し、身体が防衛とばかりに過剰反応をして、まるでウィルスを必死に追い出そうとしているかのように、僕は一瞬にして高熱を帯びた。


「い、いやぁっ……!」


 狂ったように思い出される記憶と、近付いてくる向こうの世界の住人(サクラさん)

 その魔の手から逃げるように、僕は熱い身体を必死に動かし一目散にサクラさんの部屋を出た。


 自分の部屋へと戻ってきた僕は、熱を出してぶっ倒れたのだった――




 実際にそこにいたときは「まだ我慢できる」と思えるのだが、ひと度そこから離れてしまうと、こんなにも脆くなるものだろうか。

 でも何事も耐性というものがあるだろうし、僕はその耐性がなくなったのかもしれない。


「お熱は下がってきましたね」


 一週間寝込んでなんとか熱は収まったが、その対価として僕はサクラさんや真桜ちゃんが近付くだけで怖がるようになってしまった。

 地球人恐怖症とでも言うのだろうか。


 サクラさん達はなにも悪くなく、単に僕の心が弱すぎるだけ。

 お世話をしてくれているエルーちゃん達や手紙を通してサクラさんには謝ってはいるけれど、面と向かって謝れてはいない。

 サクラさんからは気にしないでと手紙を貰っているけれど、今のままでいいわけがない。


 頭では分かってはいるんだけど、身体が自分の思うように動いてくれない。

 部屋の外に出ようと試みたけれど、僕の部屋を跨ぐ扉がとても重く感じてしまう。


 エルーちゃんが消化にいい食事を部屋に運んでくれるおかげで生き永らえてはいるが、まともに食べるのも一食程度。

 それも、胃が絶望的に終わっているので、何度も食べたものを戻してしまっているような状態だ。


「ごめんね……」


 もうエルーちゃんは、何度幻滅していることだろうか。

 こんな汚い存在が聖女だなんて、もう僕自信だって思いたくもない。


「エルーちゃんも、僕のこと……嫌になったでしょう?」

「大丈夫です、私がソラ様を嫌いになることは金輪際御座いません。今は御身を第一になさってください……」


 何度も抱き締められ、僕を安心させようと頑張ってくれていた。

 情けなさで僕はまた塞ぎ込んでしまう。

 これでは負のスパイラルだ。


 その時、コンコンとノックの音がした。


「ヒィッ……!?」


 もう対人恐怖症も患っている気がする。


 今思えば、僕の耳が敏感になったのはこういった音一つ一つを聞き逃さないようになったからだったんだろうな。

 そうでないと少なくとも奏家では、次に起きることに身構えられないからだ。


「私がお取り次ぎいたしますから、大丈夫ですよ」


 宥められて安心してしまう僕は、なんだか子供に戻ったみたいだ。


 部屋の外でしばらくエルーちゃんの話し声が聞こえていた。

 それが止むと、エルーちゃんともう一人の人がこちらに入ってきた。


「ソラ様、セレーナ夫人がお見えになりました。お通ししてもよろしいですか?」

「お、お義母さん……!?」

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