閑話302 子離れ
【奏天視点】
小さくなってから、しばらく口しか動かせなくなって。
僕はしばらく小人族の姿でただお世話されるだけの重症患者になってしまっていた。
とはいえその姿に、やけに母性をくすぐられてしまった妻がいくつか僕のもとにやってきては、何故か母乳を与えてくれた。
正直この姿じゃなければ、通報されていたことだろう。
特に極度の小さくて可愛い物好きの涼花さんが、毎日のようにやってきては僕に母乳を与えるものだから、僕が天花の食事を奪ってしまっていないか心配になるほどだった。
「ほら、よくお飲み」
「むぐぐ……」
実の妻に赤ちゃん扱いされるのは、少し複雑だ。
でも正直、美人のお姉さんから直接ミルクを飲ませてもらうのは、役得ではあった。
◆◆◆◆◆
そうして一週間後、小人族の姿から、やっと元の姿に戻ることができた。
「はい、あーん♥️」
「あーんむっ」
どうやら神力は、神体――つまり身体を構成する要素のため、身体の大きさに影響するようだ。
身体の大きさが元通りになったとき、余分に余った神力はどうなるのかというと、今度は天使の羽の大きさが大きくなったり、髪が伸びたりするらしい。
だからこの間まで僕の髪の毛はロングだったし、羽も大きくなっていた。
今の僕は伸びた髪も短髪になってしまい、羽はあり得ないほど小さい。
今はまだ身体も天使の羽も動かないけれど、指は動かさなくとも魔法や魔力で空中移動はできる。
でもそんなことに魔法を使っていたら魔力がすぐ尽きてしまう。
僕の場合、尽きてしまったら神力が魔力の代わりになる。
正確には一日に溜まる神力を1としたとき、神力を1使うときに余分なエネルギーとして産み出される1000の魔力に変換が出来る。
つまり僕の信仰が途絶えない限り、僕は無限に神力と魔力を使うことが出来ることになる。
ただし、これは諸刃の剣でもある。
神力は神法――つまり聖者転生に使うために一年間溜める必要がある。
その神力を使ってしまうと、せっかく来年の聖者転生のために溜めていた神力を消費してしまうからだ。
魔力から神力に戻すことは不可能なので、神力はなるべく使わないようにし、問題解決は最低限自然回復や魔力回復薬の魔力の力でどうにかすることにしている。
神力を魔力に代えるのは、どうにもならなかった時の最終手段だ。
「まるでエサを待っている小鳥みたいだね」
「どちらかというと雛鳥のような……」
ひどい謂われようだけれど、子供にお世話されるよりはエルーちゃん達にお世話された方がマシだ。
「雛鳥にしてるのはどっちなんだか……」
エルーちゃん達にも僕の神力事情は説明しているので、僕やエリス様がなるべく神力を使わないようにと配慮してくれるようになった。
最近はぶっ倒れたので、余計に心配をかけてしまったのだろう。
特に髪フェチのエルーちゃんは僕が短髪になってしまったのを見て、この世の終わりのような顔をしていた。
髪なんてまた生えてくるんだから、一時的なものなのに……。
とはいえあまり急いで神力を持っている以上に使ってしまうと、僕やエリス様は消失してしまうらしいから、そこは反省点だ。
まぁこの辺りは僕にとって初めての聖者転生だったので、多少の見積もりの甘さは許してほしいかなと思う。
「あ」
「ソラママ、うごいた!」
そうこうしているうちに、手が動くようになっていた。
「良かったです……」
「みんな、ありがとう。 ふふっ、エルナも……いいこいいこ」
いつの間にか流暢に喋れるようになってきたエルナを久しぶりに抱き締めることが出来た。
これでは、僕の方が子離れできなくなってそうだ。
「ママー!」
「ふぐぇ」
するとどこからか聞き付けた子供達がわらわらとやってきて、僕の布団や顔へ直接ダイビングしてくる。
「ごめんね、みんな。 心配かけて……」
次は、こうならないようにしなきゃね。




