閑話301 マグロ
【奏天視点】
『「――神法・聖者転生――」』
ご本人の魂の希望により、第97代聖女、ジーナさんを生き返らせた。
「あとはご家族水入らずでお過ごしください。 じゃあ、私はこれで……」
そのまま、僕は部屋を後にして、自室に戻った。
「はぁっ、はぁっ……」
「ソラ様!」
ベッドに倒れこむ僕は、そのまま死んだように意識を失った――
◆◆◆◆◆
「おはようございます、ソラ様」
どうやら僕は、一週間寝ていたらしい。
「ごめんね、心配かけて……」
この体はほとんど神体でできていたから、身体から神力が抜けて萎んでしまったのか。
意識を取り戻す前はどうやら人間の姿を保っていなかったらしく、真桜ちゃん曰く、「FXで溶かしたような姿」のように体が液体のように溶けてしまっていた。
今小人族の姿になっているのは、神力が少ない状態でも形を保ちたい結果、無意識に小さい形になろうとした結果なのだろう。
「私は構いませんが、子供達はとても心配したんですよ?」
「まぁまぁ……ぐすっ」
「い、いたいよ、エルナ……」
「いにゃくにゃっちゃ、だめぇ……」
「ごめんね、ちょっと無理しちゃって」
知らないうちにすごく喋るようになっていて、びっくりした。
子供の成長は早いな。
「サーニャ様達も心配しておりましたよ」
ベッドに眠る僕を囲うように猫四姉妹が丸くなって寝ていた。
匂いに敏感な彼女達は、僕の匂いでわかるのだろうか?
「僕はいなくならないから、大丈夫だよ」
◆◆◆◆◆
「ソラ君っ! いくら死なないからってっ、無茶するのはダメですっ!」
子供達が去った後やってきたマリちゃん先生は、ぷりぷりと怒っていた。
結婚してからソラ君と呼んでくれるようになったのは、大きな進歩といえる。
「ごめんなさい。 そういえば、エリス様は?」
彼女も同じだけ神力を消費したはずだけれど、僕よりも早く回復したのかな?
「エリス様は三日前に意識を取り戻されてます」
エルーちゃんが代わりに答えてくれた。
皆さんの信仰のおかげで一年で一人のペースで聖者転生が行えているけれど、その代償としてエリス様にまで負担がかかるなら、もうちょっと期間を延ばした方がいいのかも。
「他人の心配をしている場合ですかっ、もうっ!」
「だって、どのみち手も足も動かせないし……」
身体の形は人の姿に戻ったけれど、まだ指一つも動かせない。
口だけしか動かせていない。
そのせいで、子供達を撫でることもできなかったのだから。
「今日は私がっ、お世話してあげますからねっ!」
ツンデレのようにぷんぷんと怒っているマリちゃん先生を見ていると、それだけで心が癒されていくのを感じる。
「むむっ……!」
「あ……」
「ソラ君っ」
「な、なんでしょうか?」
「とぼけたってっ、無駄ですっ! 手も足もっ、動かせないのではなかったのですかっ……?」
「安心したら、その……一週間もご無沙汰だったから……」
身体は正直というべきか、これは生理現象だから。
「そういえば次はっ、私の番っ……ですよねっ?」
「ちょっ……!? 僕、動けないんですよっ!?」
「では、私はこれで……」
「あちょっ、エルーちゃん!?」
まるで予定調和であったかのように、エルーちゃんは手を振りながら部屋から捌けていく。
逃げたな、エルーちゃん!
「大丈夫ですっ!」
「何が……」
「小人族はっ、子だくさんになるようにっ、年中発情期ですからっ!」
「そんな、うさぎじゃないんだから……あっ」
跨るマリちゃん先生に、僕は何もすることができなかった。




