代役のお兄様
「いただきます!!」
「い、いただきます……」
ミナリアが大きく声を上げて、手を着け始める。
前菜から食べ方を見て真似てみる。
サラダには添えられていた液体をかけて、フォークみたいなもので、かき混ぜていくと野菜は大人しくなり、それっぽくなる。人面みたいな感じだが………
(ええぃ!!腹に入れば同じだ!!)
「あはは!お兄様、そんなにがっついて、よっぽど懐かしいんだね!」
「あ、あぁ!2年ぶりだからな!」
(あ、やばい。)
やばいと思った。何がって、美味いからだ!
手が止まらなくなる!薄い塩味のタレが絡まり、パリパリとした食感。人面など気にならない美味さだ。新鮮なレタスやセロリみたいな感じだ。
目玉はと言うと、刺すとプチリとはじけて一気に汁が溢れてたちまちスープになった。白身の部分は肉質で、タンパクな感じだが、スープと絡んで美味い。どうやら、あのイモムシみたいなパンを浸けて食べるらしい。
イモムシも切り分けられると大人しくなり、味もポテトキャタと言うだけあるのか、イモの味がする。
気が付いたら完食してる自分が怖い。
「ご馳走様でした!!」
「お粗末さまです。」
基本的な習慣にはあまり差異はないのか、ミナリア姫もそれをニッコリ笑って見ていた。
「あ、ごめん」
「え?どうしたの?お兄様。」
「いや、1人でがっついてしまった」
それを聞くと、ミナリアは微笑みを浮かべた。
「ううん、いいよ。私、お兄様には良く助けてもらってたから。それより、明日からは一緒に仕事しなくちゃ!頑張ろうね!」
そんな笑顔を見ると、なんだかウソをついてる事に罪悪感。
そもそも、ウソは得意じゃなかった。
「あぁ。よろしくな。」
「今日は遅いし、疲れてるでしょ?またお話ししようね!異国の話、分かるだけでもお話ししてね!」
「あ、あぁ!」
それだけ会話を交わすと、割り当てられた部屋に案内された。
部屋の中は鎧や刀槍の類いが飾られて、棚には何かの書物が並んでいる。
無造作に1つ取ってみる………。
「これは………」
すぐに戻した。思春期男児の聖書(エロい本)を
堂々と置くとは、凄い王子だ。
それにしても、ボロい。
心なしかホコリくさい。
「……………。」
寝てもいいが、ここは魔界だ。
もしかしたら、ベッドの下も何かいるのかも……。
聖書はさっき本棚にあった。ベッドの下と言うのはない。
よくホラー映画なんかだと、覗き込んだら最後のやつだ。
そんな怪談もあった。だが、何かいるなら何かいるで、どこで寝るにも困る。
とりあえず、そこにあった槍の柄でベッドを叩いてみる。
「ちゅう♪ちゅう♪」
………なんか聞こえた。
「なんだネズミか」
……………。
「んなワケないだろっ!!」
思い切って覗き込む!
そこには、全身真っ黒な影みたいだが、金髪の生えた何かがいた。目や鼻はないが口は付いている。
「あ、見つかっちゃいましたね!」
……………。
「変態だぁあああああ!!」
「きゃぁああああ!!どこですかぁ!?」
ほどなく、なぜか天井の点検口からアルスが出てくる!
「どうしましたか!?」
変態が増えた。
「…………。」
「なんですか?その目は。」
「なんでもない。それより、ベッドの下に」
「あぁ、なんだ。ミコさんの事ですか。ま、馴れて下さい。」
そう言うと、アルスは天井の点検口を槍の柄で突いて閉めて何事もなかった様に出て行った。
「あれ~?おかしいですね~?ハルトちゃんじゃないです~」
ベッドの下から出てくると足が無く、丸っきり影だ。口や髪があるだけで、装飾品はとくにない。
「俺はハルト王子の……カケラらしい。」
「らしい?なんと呼びましょう?」
「ヒロでいい。ただ、アルスやニカウが言うには姫には王子だと思わせておきたいんだとさ。ええと……」
「私はベッドの精霊です~♪ミコ・ミクナス・ゲールカ。ミコさんって呼んでね!ヒロちゃん♪」
「ベッドの精霊………」
目はないので、判りにくいがアレは恐らくウィンクしたのだろう。
そんなもんまでいるのか。
つぅかベッドの精霊ってなんだ。精霊って感じがしない。




