↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七人目の勇者はなぜ仲間に殺されたのか?  作者: はまだ語録
第2部 最強の軍団を統べる者『竜騎士』
PR
16/249

特警隊『士』

 正直、マクシムはナタリアの怒りの理由が理解できなかった。

 姉の死の原因を作ったことではなく、竜の心が傷ついたことを怒る。

 ちょっと考えられないというのが、正直な感想だった。

 いや、竜も酷く悲しんでいるのかもしれない。

 しかし、姉の死そのもの以上の、一番の理由になるというのがマクシムには理解できなかった。


「その、ごめんなさい」

「ワタクシは謝ってもあなたを決して許しませんわ」

「うん、でも、もうちょっと上手いやり方があったはずだし、でも、僕には無理だったから、その、ごめんなさい」


 ナタリアはもうマクシムの謝罪をプイッと無視した。

 拗ねた子どものような仕草であるが、自分と同年代ということはまだ子どもなのだ。

 むしろ、これだけ冷静なのはかなり大人だった。

 ちなみに、シラはこちらを噛み殺そうとばかりにスゴイ目で見ている。

 マクシムはその恐ろしい視線を努力して気にしないようにしながら問いかける。


「それと、もしかして、ニルデが死んだことって知っていたの?」

「……どうしてそう思ったのですか」

「フレッチャーって竜を特定したでしょ。それで、竜が腕を持って帰ったのかなって。死を知らせるために」

「……そうですね。それは当たっておりますわ」


 マクシムの予想は当たっていたが、そのおかげで彼女にもある程度心の準備ができていたのだろう。


「ごめん、それと埋めたところ教えるからさ。なるべく早めに連れ帰ってあげて欲しいんだ……僕が言えた立場じゃないのは分かっているけど」

「ええ、そうですわね」

「でも、どうして腕だけだったんだろうね。身体全部を持って帰れば良かったのに……」


 マクシムのそれは問いかけたわけではなく、独り言のようなものだった。

 しかし、ナタリアは答えた。


「殺したお姉さまの体全部は――フレッチャーの心情的に辛かったのだと思いますわ」


 そういうものなのかもしれない。

 理解できないが、竜がマクシムの想像以上に人間に近しい感受性をしていて、『竜騎士』との関係も密接であれば、そういうものなのかもしれない。

 マクシムは「ごめんなさい」と再び謝った。


「無神経な問いかけだったね」

「いいえ、理解して欲しいわけではありませんわ」

「とりあえず、どうしよう。場所を教えるけど、ナタリアは『竜騎士』だから竜に乗って移動するのかな」


 竜が誇り高いということは、移動手段にはさせて貰えないだろう。

 マクシムは先に汽車で移動して、正確な場所を伝えるか。

 しかし、分かりやすく季節外れの花を咲かせた木を植えているから、分かるかもしれないが……。

 マクシムがそう考えていると、ナタリアがボソッと言う。


「ワタクシは――『竜騎士』ではありませんから」

「え?」

「いえ。知り合いに頼んで、お姉さまの亡骸は回収してもらいますわ」


 ナタリアが最初に何を言っていたのか、マクシムは本当に聞き取れなかった。

 許さないという割には、ある程度割り切っているようだ。

『武道家』になったということで、ニルデが完全に死んでいるわけではないから割り切れているのかもしれない。


「あー、じゃあ、地図か何かにした方が良いかな」

「口頭で大丈夫ですわ。ワタクシも電話で『士《さむらい》』に頼みますから」

「『士』って、あの英雄の?」

「いいえ、英雄の『士』クレート・ガンドルフィさまはもう亡くなっておりますが、組織の『士』の方で……と、そうですわね、ご存じあるわけありませんわよね」

「うん、説明お願いできる?」

「ええ、別に秘密組織というわけではありませんし、構いません。『士』は治安維持を目的とした組織ですわ。その他にも目的はありますが、『竜騎士』としてのコネでいろいろお願いできるのです。そうですわね。軍隊と警察の要素が組み合わさった組織とイメージしてください」


 マクシムは知らなかったが、『士』クレート・ガンドルフィは英雄として名を馳せた後、一種の官僚組織構築のために尽力したのだ。

 クレートは国家権力を支える組織の初代長としての側面も持っている。

 功績をたたえ、その組織の名前も英雄の名に合わせて『士』になっている。

 それが特別警備隊『士』である。


「そんな組織があったんだね」

「知る人は知る組織というものですわ。とても義理堅い知り合いがいますから、直接お願いしますわ」

「そっか。じゃあ、教えるね」


 マクシムが埋めた場所を伝えると、ナタリアは一度で理解した。

 ナタリアは電話をかけに部屋から出て行った。

 残されたのは、シラと二人きりである。

 正直、気まずい空気だったが、シラから話しかけてきた。


「……なぁ、ニルデお姉ちゃんは『武道家』になったと言ったな」

「うん」

「全てを継承するということは――ニルデお姉ちゃんとまた会えるのか?」

「それは……どうなんだろう……」


 ニルデは『二十七代目武道家』と名乗っていた。

 つまり、新しい『武道家』は歴代二十八人分の全てを備えているということになる。

 そもそも、積み重ねていくことで初期の人格や経験などは劣化しないのだろうか?

 また、マクシムが会って、話をしたニルデ・サバトはシラたちの知る女性だったのだろうか?

 初代となるバジーリオ・スキーラの人格は色濃く影響を受けているようだったが……。

 マクシムは迷いながら答える。


「多分、君が知っているニルデとは違うと思う」

「そうか……」

「でも、その『武道家』はニルデの影響で、君たちのことを知っているから会話もできるとは思う」


 シラは無表情のまま「そうか……」と再度呟いた。


「だが、お前のことは許さない。絶対に一発殴ってやるからな」

「もう一発殴られている気がするけど……多分、君だよね。これ」


 マクシムが左頬をおっかなびっくり触りながら言うと、シラは「知らない」と表情を変えずに断言した。

 そうこうしているとナタリアが帰ってきた。


「お待たせしました。『士』の方とは連絡がつきましたわ。回収してきてくださるとのことです」


 これでマクシムの仕事は終わりだ。

 さぁ、家に帰ろう。

 ホッと一息をついていると、ナタリアは言う。


「マクシムさんはしばらくワタクシたちの屋敷に滞在していただきますわ」

「え? どうして?」

「あなたにも責任はあるのですから、最後まで見届けてください」


 それは逃がさないということで、ひとめ惚れした相手に言われても全く嬉しくない一言だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。