三十六ノ怪 白きモヤ
これは、ここ最近になって何度か目撃した心霊現象話です。その問題の場所は南阪南道路と国道170号線が重なる大型交差点。そこから西方向の山間に羽曳野の道の駅、しら◯りの郷があり。その北向かいにジョー◯ンやサンプ◯ザといった大型店舗が。今回はその前の下り道路から問題の170号線の交差点へと入って行きーー
とあるスーパーで買い物を済ませ、その山手。南阪南道路沿いの一般道を国道170号線に向けて走っていました。分かり易く言えば奈良方向へ。
道路沿い右手は南阪南道路。左手にはジョー◯ン、サンプ◯ザの順でその前の道を通過し、やがて緩やかなカーブの坂道を下って行きます。
自分は既に何度か″ソレ″を目撃しているのですが、何故シンクロしているかは原因不明です…。ただ、ハッキリとした幽霊なら恐怖を感じますが。今回のはあっさりとし過ぎて恐怖といった感情はあまりわきません…
「また、いるかなぁ?」
「何か楽しんでない?」
そう言って我が娘は半笑い、声のトーンで少し揶揄さるてる気がしますが…
自分が車を走らせ、その運転席の横には二十代の娘、長女のヤカが乗っていました。
「はいはい楽しんでますよ〜。もうすぐ盆だからな、ばあちゃんがあの世から帰ってくるんじゃないか?」
「帰ってきたら、どーなるの?」
「もちろん、その幽霊を退治してもらうんだよ?丑三つ時の深夜、俺に金魚餌のビンを投げつけてきたみたいに『お前が悪いんじゃぁーっ!!』って。キレたら強烈だぞ?お前の曾祖母は」
「それ、マジいらない」
と、冷たく素で流すヤカ。もちろん俺もいらないが…
すると今度は背後の後部座席から
「もおっ、幽霊話はいつも止めてって言ってるのにっ!」
(ゴツンッ)
「あいたっ!」
同乗している妻が怖がり拗ねて、自分の背後からグーで頭に容赦無き一撃を加えます。
ここは男の威厳を見せつける時…「おいっ!運転中だぞっ!意識飛んで、みんな死んじゃうぞっ!」…と、心の中で奴に言い返してやりました。…涙
過去。ただでさえタメ兄や母親に殴られ過ぎて馬鹿になってるのに。これ以上殴ったら馬鹿に磨きがかかり超進化するぞ?ん?いいのか?…と、更に心の中で吠える吠える。
「あー…、思いっ切り殴られて…果てしなく広がる真っ白な大地……。どこだ、ここは?…おっ、段々と三途の川が見えて来たぁ……。ん〜、川の向こうに誰かいるぞぉ〜?」
「はぁ……、誰がいるの?」
かなり呆れ口調の妻と楽しい会話のキャッチボール。オチが分かってる長女は外を目を逸らし、既に苦笑い。
もう少しこの可哀想な父親を立ててくれないか…?
いや、これはこれでアリかもしれないぞ?放置プレイか?はぁはぁはぁ…、もっと蔑んだ表情を俺に向けてくれぇ〜…
「ば、ばあちゃんが盆休み近いから三途の川向かいで俺を手招きしてるんだ…。こっちゃ来い、こっちゃ来いってぇー!!い、嫌だっ、俺は渡りたくないっ!!」
「ふぅ〜ん。で、手招きされてるんでしょ?…で、川を渡るの?渡らないの?」
こんな妻とのマンネリな会話のやり取り。それを聞かされていた長女のヤカが横から冷め切った声で
「手招き…じゃなくて『シッシッシッ…』って、手を反対に振ってて。要は『あっち行けっ!!』って、してるんでしょ?…はぁ…」
「おい。ヤカ、俺が言おうとしたオチを先に言うんじゃないっ」
家族にも全く良いイメージがない故人、ハイパーアルツハイマーの鬼祖母。そして次のしょうもないネタを繰り出そうとした矢先。丁度170号線交差する問題の場所へと差し掛かりました。そして交差点にかかる歩道橋下を潜り、車を左折しようとしたまさにその時
「また…か…」
交差点を左に曲がる瞬間。車の左側から1〜2メートル離れた位置に白いモヤの様なものが見える時があるのです。薄っすらと人型の様な気はするのですが、一瞬で通り抜けるのでハッキリと確認出来た事は無くて…
(ゴツンッ)
「あいたっ!」
「何が『またか。』よっ!!もおっ、ふざけるなっ!やめてって言ってるでしょ!?馬鹿っ!!アンタが一度死んでみたらっ!」
オーッ、クレイジーワイフ…。だって…、自分は勝手に見えちゃうんですが…?それなのに、手加減無しの拳骨で殴るの!?更にコメントも辛辣っ!!はぁはぁはぁ、興奮する要素が満載だ…もっと、もっとぉおおーっ…
「パパ?どんな風に見えてるの?」
そこで長女のツッコミが更なる妻の怒りの火に油を注ぎ…って、あれ?
「……。」
妻は俺に拳骨で長女ヤカには文句を言わんのかぁーいっ!!はぁはぁはぁ…それはそれで何かゾクゾクとする…
「少し人っぽい煙りのモヤみたいな…?説明が難しいよ。けど恐怖は感じないんだ…」
「ふぅ〜ん…」
何だよ「ふう〜ん」って、それは感想とは言わないぞ。もうヤカは成人なんだからハッキリと返事しろっ、ったく…と。やっぱり心の中で怒鳴りつける父。
その後は何事も無く、なんだかんだで無事に家へと到着。妻は買った食材を持てるだけ持って先に家の中へ入っていきましま。
あの慌てようはトイレだな?…と勝手に解析。もし聞かれたら我が命に危険が及ぶので、そこはもちろん口にはしない。
そして残りの荷物を車から下ろしていると、ヤカが最後の荷物をサッと持って行ってくれて、その去り際。
「これで荷物は最後?あ、パパ?…女性だったよ?あの人…」
(たったたたた…バタン…)
「へ?」
…ホワイ?
(今、なんて言った…あ!?)
…そう言えば長女は昔…小さかった頃。母やナガ兄に連れて行ってもらった屯鶴峯でも″幽霊が見えていた″のでした。
よく考えたら今更な話でした…。普段は馬鹿な父親ばかりが幽霊話をしていて、娘は黙ったまま聞くだけ。本当はナガ兄や自分よりも見えていて、その事を秘密にしているのでしょうか?
ヤカはもう二十歳を超えてます。もしかすると部下だった超霊感の持ち主、ユウみたく。過去に心霊現象を誰かに相談して何らトラブルがあったのかもしれませんが…。娘には人生経験の一環として。それは親としても、これからもずっと聞かない方がいいのかな?
まぁ、話す場になったら仕方が無いでしょうが…
完。




