幸せです。
フロックスさんを奴隷から解放します。
「カスミ様。」
私は涙を拭いながらフロックスさんを見た。
フロックスさんはいつの間にか私の隣で跪いていた。
「私が奴隷でなくなっても、カスミ様の隣にいる事を許していただけますか?」
え、隣にいるって?
「自分は初めてお会いした時からカスミ様が好きです。」
ええ、好き?いや、でも、
「それは、隷属契約でそう思い込まされているんじゃあ。」
フロックスさんはしっかりとわたしの目を見て行った。
「いいえ、契約前。貴方を見た瞬間恋に落ちました。」
えええ!!。恋に落ちてた。フォールインラヴ。
何故英語が出る。落ち着いて私。
は!夢。夢かな?
ギュウっとホッペを抓る。
「いたあああああい。」
「どうされました?カスミ様?」
スッと私のホッペに手を添えてくるフロックスさん。
「夢じゃない。」
なんてことでしょう。
信じられなくてフロックスさんの目を見つめてしまう。
フロックスさんがほほ笑みながら顔を近づけて来た。
薄暗い部屋、ランプの炎に浮かぶフロックスさんの美しい顔。
心臓のドキドキが煩い。
「カスミ様は自分の事をどう思っていますか?」
うわぁ息がかかるう。
「私・・フロックスさんの事が好きです。」
精一杯、ドキドキを抑えて声に出す。
「では、自分があなたの奴隷でなくなっても、ずっと一緒にいて下さいね。」
ぐはぁ、すっごい艶かしい顔をして至近距離で言われた。
「・・は。・・・はぃ。・・」
顔は大火事状態。
息が苦しいけどなんとか返事した。
私がこんなにドギマギしているのにフロックスさんは余裕に見える。
それが余計にドキドキさせられる。
おもむろにホッペに添えられていたフロックスさんの手が私の顎を持ち唇を重ねてきた。
もう、頭が融けるぅぅぅ。
1回唇を重ね、そのまま唇を軽く吸われ、もう1度唇を重ね、次は少し強く唇を吸われた。
気持ちいい。
キスってこんなに気持ちいいものなのとうっとりして、力が抜けたところに舌が入ってきた。
どう反応していいのか全くわからないよ。
かなり長い時間フロックスさんの舌が私の口の中を回って私の舌に絡ませたり吸い付いたりした。
その間心臓がドキドキしすぎて死ぬかもとか考えてた。
フロックスさんが唇を話した時には私はフラフラ。酸欠?
フロックスさんが私が椅子から落ちないように抱きしめて耳元で言った。
「ずっと一緒。約束ですよ。」
▽▽▽
「カスミちゃ~ん、ひ・さ・し・ぶ・り~。」
「ええ?ヒイラギさん!」
ヒャクニ宿1階のテラスを開けランプに灯を入れていたら、まさかの勇者ヒイラギさんが、
「うわぁ、本当にお久しぶりです。」
「カスミちゃん、超綺麗になって・・・え?」
本当に本当に何年ぶりかしら。
狼狩り以来だから6年ぶりくらいかな。
「カスミちゃん、そのお腹の膨らみは・・・まさか?」
あーまあこれだけ大きと分かっちゃいますよね。
ちょっと恥ずかしい。
「私もうすぐ赤ちゃんが産まれるんです。」
ヒイラギさん、私のお腹を見たまま固まっている。
「・・・・もしかして・・・・僕の子?」
「「そんなわけあるか!」」
私とフロックスさんの声が重なった。
って、いつの間にかフロックスさんが私の後に立ち私の腰に手をかけヒイラギさんを睨んでる。
「え~じゃあ、そのハーフエルフとの子?」
面と向かって言われると顔が熱くなってくる。
でも、紹介したい。
「私の夫のフロックスです。
私達6年前に結婚して今はこのヒャクニ宿で働いているんです。」
フロックスさん嬉しそうに微笑んで私の頬にキスしてきた。
「あらあら、ラヴラヴねぇ。」
「カレンデュラさん!」
うわぁ、6年ぶりのカレンデュラさんは輝くような美しさです。
ナスタチウムさん、ロベリアさんも女性らしさが増し眩しい。
ヒイラギさんはあまり変わった感じはないのに。
「僕の方がカスミちゃんに先にプロポーズしたのに。」
6年前にあったね。
私あの時にお断りしたし、6年間1度もヒイラギさんから連絡なかったし。
あ!そういえば、
「ヒイラギさん、私お味噌汁作れませんよ。」
「え?味噌汁作れない?何で?」
「まず、異世界でお味噌や御出汁お豆腐や油揚げなど材料を見た事ないです。
それに私前世では病気で料理を1度もした事が無いんです。
だから例え材料が揃っても作り方が分かりません。」
ヒイラギさん、また固まった。
ヒイラギさんが私に求めているものって日本なんだよね。
でも、私は日本にいた時は病気で殆ど日本の暮らしが出来なかったからヒイラギさんの期待には応えられないと思う。
「それにしても、ヒャクニ宿大きくなりましたねぇ。」
ロベリアさんが宿を見上げて言う。
そうなんです。
4年ほど前に改装して以前は5部屋程の宿だったんですけど、今は30部屋になったんです。
スカビオサさん以前から宿を大きくしたかったけれど後継ぎがいないから諦めていたんだって。
フロックスさんが国民権を得て私との結婚を決めた時。
スカビオサさんからヒャクニ宿を継いで欲しいっていわれて悩むことなく引き受けました。
ジニアさんもすっごく喜んでくれた。
ただ、スカビオサさんがここまで宿を大きくするとは思っていなかったのでフロックスさんが物凄く仕事が忙しく、一時過労死しないか本気で心配だった時期もあります。
今は仕事が落ち着いて本当に良かった。
「1階の食堂も大きくして夜はお酒も食事も沢山の人で賑わうんです。
あ、今から夜の部が始まるので良かったら勇者様御一行も楽しんで行ってください。」
ヒイラギさん達を1階のラウンジに案内しお酒の注文をとる。
厨房に行ったらジニアさんが久しぶりの友だから今日は働かんでいいから友と話しといでと言ってくれた。
私もヒイラギさん達の席に着いた。
ヒイラギさん達は喜んで迎えてくれたけれどフロックスさんの心配そうな視線を感じる。
でも、お客さんが多いからフロックスさんまで仕事抜けれないんだよね。
「そういえば、カスミちゃんアスター領主の事、覚えてる?」
「ええ、もちろん。」
コレオプシス君のお父さん。
今は辺境で暮らしてると聞いている。
「アスター領主4年前に男の子が生まれたんだよ。
金色の巻き毛に金の瞳の。
あの子の魂はコレの生まれ変わりだよ。」
「え、コレ君の生まれ変わり?」
「うん。そう。カスミちゃん祈ってくれたでしょう。」
「え、ええ。祈りました。でも、本当に。」
「カスミちゃん、自分の能力に気づかな過ぎ。君の祈りには凄いパワーがあるんだから。
まあ転生は神のみぞ知る運もあるしカスミちゃんが祈ったからって絶対転生出来るって話でもないんだけれど、あの子は確実にコレの魂だよ。
つい最近確かめて来たもの。」
「会ったんですか?」
「皆で見て来たよ。」
ロベリアさんがお肉を頬張りながら言う。
綺麗なお姉さんが台無しですよ。
「その男の子の魔力が多くてアスター殿が心配して相談されたからね。」
ナスタチウムさんがお酒を煽る。
酒豪だ。
「まあ、私がしっかり魔力を押さえる魔術を施しましたから、大丈夫ですわ。」
カレンデュラさんが白い頬をピンクに染め微笑んで言う。
色っぽいわぁ。
ヒイラギさんが決め顔で私を見る。
「コレさぁ、ちっさいくせに言葉分かるから。
魔法は13歳してからね
って、しっかり教えてきたよ。」
ヒイラギさんの顔が滲んできた。
「カスミちゃんのおかげで、コレはアスター夫妻の元に帰ったよ。」
うわあああああああああああ、良かったぁ。
嬉しい。
フロックスさんが慌てて布巾を持って私の涙を拭いに来た。
嬉しくて嬉しくてフロックスさん手を握り、今聞いたコレ君の話をフロックスさんにした。
フロックスさんは優しく微笑んで聞いてくれる。
と、ヒイラギさんがお酒を飲みながら聞いてきた。
「はあーあのさ。カスミちゃん、今、幸せ?」
「はい、とても幸せです。」
「そっかあ。幸せならもう僕と結婚してって言わないから。
またカスミちゃんに会いに来ていい?」
「ええ、もちろん。」
ヒイラギさんの事嫌いではないです。
私も会いたいです。
「僕、君を見ていると異世界も悪くないって思えるんだ。」
勇者ヒイラギさんにとって異世界は望んできた場所ではないし時に残酷な決断をさせられる。
でも、私は異世界に来て本当に幸せな事を多く体験してる。
愛しい人を見つけたし家族にも出会えた。
もうすぐ、子供も産まれて家族が増える。
まだまだこれから先、良い事も悪いこともあると思うけれど
私はこの異世界に転生出来て本当に幸せです。
ここまで読んでいただき本当に本当にありがとうございました。
現実社会から意識だけでも転移出来ました。
完結まで書けて幸せです。
ここまで読んでくださった心の広い貴方に幸多かれ!!。
※ブックマーク・評価ありがとうございました。