月ウサギ
月ウサギ
月にはウサギが2羽いて、餅をついて食べているらしい。
楽しんでやっているのか。
それとも、ただ漫然とそれしかやることがないのか。
どちらにせよ、こちらには楽しそうに見えた。
彼は帰りの電車で、いつも外の上の方、多分空ばかり見ていた。
最初のうちは同じ電車になることはなかったのに、いつからか、帰りが一緒になった。
ーー一緒に帰ろう
と声をかけているわけでも、逆にかけられていることもない。
僕が身支度を終えると向こうも終わっているような感じだ。
そのうちに、それが当たり前になった。
向こうが遅くなりそうだったら、明日やろうとしていた仕事をその日にやった。こっちが遅くなりそうな時は、向こうはなにか仕事を作ってやっているようだった。
早く終わった日に、それとなく居酒屋にはいってみた。
そしたら彼も続くように入ってきた。
カウンターの隣に勝手に座る。
チラッと見ると目があった。二重の大きな目だ。その目の中に吸い込まれるような気すらしてくる。
ーー俺が悪かった。
それは唐突に言われた。
ーー何の話だよ。
つい喧嘩腰に話していた。
ーー前に飲もうって誘ったの、ドタキャンしたこと。あんた根に持ってるでしょ?
ーー持ってない。
ーー嘘だ。あれ以来のってくれないじゃん。
ーー根には持ってないけど、お前への信用はなくなった。
ーーそっか。
ーーあぁ。それに、お前とは絶対仲良くなれない気がすんだよ。なんていうか、人種が違う。
ーーそんなふうに思っているなら、なんで最近一緒に帰ってたのさ?
ーーそれは、、俺にもわからない。それが当たり前みたいになってたから。
理由なんて必要ないだろ?
ーーそれもそうかも。でもだったら、俺たちは仲良くなれるよ。絶対なれる。
それが当たり前なんだよ。
今日の月も、2羽のウサギが笑って見えた。




