窮地そして生への渇望
いやあ、早めに出来たので投稿します。
今回は諌と恐竜の追いかけっこですね。ではどうぞ
天国に居るであろう親父、母さん、お元気でしょうか?諌です。
俺は元気です。
「GYAAAAAAA!」
はっはっは!元気過ぎて広大な草原を駆け周っている所ですよ。
もう、それはもう全力で走っていますよ。ええ。
「GYAAAAAAAA!!」
実は最近新しいお友達が出来そうなんです。
それはもう今まで見たことがないタイプでね。
大きいんですよ!
まずは体格!それはもう立派な骨格と大きな図体。
逞しいんですよ凄く。
それに何と言ってもその大きい身体を覆うのは立派な鱗!
これで身体を覆う事で怪我なんかしません!
生半可な刃物じゃ傷何てまず付きません!
羨ましいですね!
「GYAAAAAAAAA!!!」
次に説明するのは頭!
凄くユニークなんですよ!
まずは大きさ!
大きい脳を持つと言われる夏目漱石を悠に超える大きさです!
凄いですね。
きっと知識がたくさん詰まるんでしょうね。
何と言ってもその大きい頭全体を覆う鱗はその大事な頭部を守る為に生えていると言っても過言ではありません。
そして何と言っても立派なのは大きなお口です!
いっぱい口に食べ物が入りそうです。
だからきっとこんなに大きくなれたんでしょうね!
俺には真似出来そうにありません。
そこから生えている歯はもう牙と言っても良いくらい尖がっています。
あれは虫歯の所為ではなさそうです。
だって、無駄に白いんですもん。
歯を磨くのが大変そうですが、どうやって維持しているんでしょうね?
気になります。
あれで噛まれたら、あの子に比べて貧弱なこの体は一瞬でお陀仏なんでしょうね。
それはもう見るも無残な惨状になるんでしょうね。
「GYAAAAAAAAAA!!!!」
次に説明するのは大きいお目々!
立派なんですよ。
目元はやはり鱗で覆われていて眼鏡を掛けている子特有の顔面に当たった拍子に目元にめり込むというアクシデントの心配が無さそうです。
まずこの子に合う大きさの眼鏡があるんですかね?っと、眼鏡は関係ありませんでしたね。
それにこの子の場合、目はきっと良いんでしょう。
だって、俺をかなり遠くから見つけてやって来たんですもん。
その目の色は何と黄色です!
さらにその瞳孔は極限まで細められています。
世の中こんな目もあるんですね。
勉強になります。
「GYAAAAAA!GYAAAAA!!」
さて最後になりますが、何と言っても特徴的なのは背中から臀部にかけて伸びている尻尾!!
思いっきり振ったら軽く木をへし折りそうです。
俺が食らったら骨がバッキバキになる事必死です。
喧嘩なんて出来ませんね。したら死にます。
ほぼ間違いなく。
もし生きていてもトラウマは確実です。
こんな子とお友達になれたら俺は、そこらのヤンキー…いや、ヤクザさんなんかもう怖くないと思います。
なんたって迫力が段違いですよ。
今ならそんな方達に絡まれても笑える自身が俺にはありますよ。
ええ。
「GYAAAA!GUGYAAAA!!」
そんな子なんですが、俺は今この子に追いかけられています。
止めてと言っても止めてくれません。
正直もう限界です。
なにが?足がですよ。
その前に何で俺はこの子に追いかけられているんでしょうか?
さっき知りあったばかりなんですが、俺はこの子を怒らせてしまったんでしょうか?
記憶にありませんが…だって、初めて会った時から既に追いかけっこが始まっていましたもん。
元気な子ですよね。
もう少し相手のペースを考えてくれれば俺の好感度は上がるんですけど―――
「GYAAAAAAAAAAAA!!」
この子は俺の高感度なんて興味がないようです。
寧ろ獲物を追い詰める残虐な素顔が見えます。
この子はきっとSですね。
俺はそう要った行為に喜びを覚える訳ではないので他を当たって欲しいのですが――――
「GYAGYA!GUGYAAAA!!」
無理なようです。
寧ろ俺に熱い視線を送って来ます。
声は心なしか笑っている様に聞こえます。
でもお腹が減っているのかな?
こっちを涎を垂らしながら見つめて来るんです。
もしかして俺を食べたいんでしょうか?
やっぱりお友達にはなれないみたいです。
だって―――
「もうすぐ食べられそうだからなぁぁあああ!!!!」
現実逃避をしていたが流石にもう無理だな。
「ぜぇ…ぜぇ…くそっ!」
今まではあっちが遊んでくれていたおかげで生きていた様なモンだ。
でなきゃもうとっくにあいつの腹ん中だろう。
だがそれも限界が近い。もう走れない。
「GUGYAAAAAA!!!」
「オイコラ!そこの蜥蜴野郎!」
通じてないのは承知で叫ぶ。
「ぜってえ、お前には食べられてやんねえからなぁぁあああ!!!」
「GYAAAAAAAA!!!」
「くそっ!まだ死んで堪るかあああ!!俺はまだまだやり残した事があんだよぉおお!!」
そう叫んだのは良いが……
「ぜぇ…ぜぇ…そろそろやばいぞ」
やばい、視界が霞んで来た。
こんなに全力で走ったのは初めてだ。
学校の行事にあったマラソン大会でも約3キロを己がペースで走るだったし…いや、それでも疲れはするんだけどね。
今の俺は大体1キロ位を全力で走っている。
ペース配分?そんな事する余裕ねえよ。
「俺は帰宅部だっつぅの!なんでこんなに全力で長距離走ってんだよ!」
そういうのは陸上部の役目だろうが。というより―――
「良く、ぜぇ…こんな…はぁ、長距離走れてんな俺―――」
「ガチン!!」
慌てて横に跳ぶ。次の瞬間、今までいた俺の場所に奴の頭があった。
横から不吉な音が聞こえてきて背筋が凍る。
遂に奴が仕掛けて来た。
「直感で避けなければ即死だった!」
某仮面の人のセリフを真似してみた。
いや、そうやって気を紛らわせないと足が止まりそうなんだよ。
逆にね!
「くそ、火事場の馬鹿力を見せてやんよ!!」
いや、今の走行距離が既に火事場の何某だけども!
通常時じゃ先ず出来ないと思う。
「帰宅部の脚力舐めんなよぉぉぉおおおお!!」
そう叫びながら俺は―――加速した。
「うおおおおおおお!!!」
いや、正直俺も驚いたよ。まだこんな力あったんだな。
きっと普段肉体に負荷が掛からないようセーブされている本来の力が出ているんじゃないかな、うん。
カッコよく言えばリミッターが外れた―――みたいな?
ちょっと厨二入ったか?個人的には嫌いじゃないけど。
「GUGYA!?」
俺と奴の距離が徐々にではあるが離れだした。
奴も驚いているようで、慌ててスピードを上げて来る。
しかしそれでも距離は開いて行く一方だ。
何これ?どうなってんの?
「良く分からんけどチャンス!もしかしてこのまま逃げ切れる!?」
しかし世の中そんなに甘くは無かった。
「GUUUUGYAAAAAAA!!!」
奴との距離がさっきよりも少しずつではあるが、また縮み始める。
奴も全力なのだろう。
「うおおお!!!このまま逃げてやる!!こうなったら勝負だコラ!!」
そう高らかに叫んだ俺は、次の瞬間盛大に―――扱けた
「ぐっはあ!!!!」
ズシャアアと顔からそれはもう盛大に扱けた。
「はぁ…ぺっぺっぺ、はあ…土が口に入ったじゃねえか。はぁ…」
「GUGYAAAAAA!!!!!!」
その後直ぐに奴に追いつかれてしまった。
「はぁ…はぁ…くそっ!さっさと逃げ―――」
慌てて立ち上がろうとするも身体がいう事を聞かない。
とうとう身体に限界が来たのだろう。
俺は尻もちを付いてしまった。
「くそっ!はあ…動けよ!こんな…こんな所で俺は死ぬのかよ!」
しかもこんな奴に食われて……冗談じゃない!
「俺は絶対に死なねえ…はあ…こんな所で死ぬわけにはいかねえんだよ!!」
そうは行ったものの、身体は動かないし、意識が朦朧とし始めて来る。
どうすればこの場を乗り切れるのかを働かない頭をフル回転させて考える。
その間にも奴は、ゆっくり…ゆっくり近づいて来る。
まるで強者の余裕だ。
もう俺が動けないのを理解しているのだろう。
その表情は嬉しそうに見える。
「何か無いか?何か何か何か!!」
俺はもうパニックだ。こんな状態でまともな思考なんて出来る筈が無い。
「ああ―――!!くそっ!!何も出て来ない。どうする?どうする?」
周りを見回してみるが何も無い。どこまでも広大な草原が続いている。
それでも容赦なく、徐々に死の足跡は近づいて来ていた。
「……やっぱり俺、ここで死ぬのかな」
つい弱気になってしまう。
「死んだら親父や母さんにまた会えるのかな…」
そんな事を考えながら俺は目を閉じる。
そんな時、昔の出来事が瞼を横切り、流れ始めた。
これが俗にいう走馬灯って奴か?
あれは俺が小学生になった日だな。
俺は入学式…というよりランドセルという物をこれから背負える事に喜んでいたな。
お兄さんになれたという気がして。
懐かしいな。
あれは周りに知らない子達がいっぱい居て、不安と新しい友達が出来るという期待に胸を膨らませていた時かな。よく覚えてないけど。
無事に入学式を経て自分の教室と同じクラスになった子、そして担任の先生。自己紹介をした事が頭をよぎる。正直そんな事もあったなぁ程度だ。
でも、この後の出来事は覚えている。
俺は入学式の日が誕生日だった。
それで、今日は家族で外食する事が決まっていてスキップをしながら帰っていたんだよな。
その時に俺が横断歩道が無い所で車が近くにあったのにも関わらず、それでも無理に道路を渡ろうとして―――事故にあった。
幸い後遺症が残るなんて事も無く大丈夫だったが、その後が凄かった。
まず、さっき別れたばかりの担任が駆け付け、校長も後からやって来て、その後に母親がやって来くるなり俺に抱きついて号泣。
今なら反省しているが、当時はなぜそんなに泣くのか戸惑ったものだ。
入学初日から俺は学校の先生の間で有名になった。うん。
我ながら凄いSDだったなあ。しみじみ思う。
そのまま色々と流れて―――
場面が変わった。
今度は中学生だ。
小学生の頃から一緒に居た奴等や新しく入って来た友達との思い出が流れて行く。
そのまま流れて3年生になった。
周りが受験モードだ。この頃は俺もひたすら高校に向けて勉強してたっけな。
そんな事ばっかで特に印象に残っていなかったのだろうか。
そしてまた場面が変わった。
これは最近の奴だな。
中学も一緒だった奴や新しくつるむ様になった友達との思い出が流れて行く。
ああ、あの頃は楽しかったな。俺も最近まで高校生だったんだもんな。
…この時の俺は無邪気に笑っている。
これから起こる出来事を知らないからな。
最近は笑えるようになっているが、家族が死んだと聞いてからの俺はひたすら気を張っていたからな。
親父、母さん…二人と最後に話せて笑える様になったしな。
あの時に恣意も―――笑えるようになったんだよな。
…恣意、そうだ。何を弱気になっているんだ。
俺がここで死んだらあいつを本当の意味で一人にしてしまう。
徐々に加速されていた意識が、思考回路が、走馬灯という逃避から戻ってくる。
目を開くと、目の前には巨大な口が迫っていた。
こいつが…こいつが居なくなれば!
気が付くと恐怖という感情や諦めるといった感情が無くなり、怒りという感情とそれを客観的に眺めるという不思議な状態になってきていた。
怒り狂うという訳ではない。
勿論怒りはある。
この理不尽な状態を許せないと沸々と湧く怒りが。
しかし、それと同時に冷めてもいた。
冷静に状況を分析しろ、と本能が叫んでいる。
暴れたらそれこそ終わりだぞ、と言っている。
そんな状態で改めて考える。
どうすればいい?
まだ加速されている状態で更に思考回路が唸りを上げて回る。
動体視力が上がっている事に気が付いた。
目眩も無くなっているし、あいつの口の迫る速度が明らかに遅い。
いや、寧ろ止まって見える。
そこで一つの可能性を閃いた。
今の状態なら出来そうだ。その為には―――
身体の動きを確かめる。
やはりさっきの無理が祟ったのだろう。余り動かせない。
でも―――
(少し…腕くらいなら動かせる!…でも出来るのか?こんなのもしかしたら出来るかもって程度だぞ?)
(ここはマンガやアニメ、ゲームとは違う。現実だ。地球じゃないけど)
だけど―――
(やるしかない!それ以外にこの状態を乗り切って生き残る術を俺は知らないし、思いつかない)
もっとゆっくり考えれば他にもあるかもしれないが。
生き残る術が、少しでも、それが細い糸を掴む様な可能性でも…あるのならば―――
(やってやる。そしてその可能性を掴み取って何が何でも絶対に生き残ってやる!)
『背水の陣』そんな言葉が頭を過ぎる。
後はタイミングとイメージ。
チャンスは1回。
じっと相手を加速されている思考で観察する。
そして…その時は来た。
「GUGYAAAAA!」
あいつが俺を食べようと噛みつく瞬間、俺は前に出て右肩をあいつの口の中にタックルさせる。
そしてあいつが口を閉じる―――噛みつく瞬間に俺は両手を奴の目に突き刺した。
「GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
奴の声が悲鳴に変わる。
そりゃそうだろう。
何せ両目を潰したんだからな。
だが、俺も無事ではない。
右から大量の血が噴き出す。
咽かえる様な血臭が辺りを包み込んだ。
「ぐうぅっ!!」
あまりの痛みに意識が飛びそうになる。
だが、まだだ。
奴は俺から反射的に口を離そうとした。
俺はそれを目に手を突きいれたまま、意地でも離さない様に内側から抑え込む。
今手を離したらあいつに俺は殺される。
それは時間の問題だ。
(チャンスは今しか無いんだよ!!ここで―――仕留める!)
俺は更に手を突き入れる。
奥へ…奥へ……
それに従い奴は暴れだす。
だが、俺も必死だ。
そして――――
(これか?)
目当ての物らしき感触があった。
奴の暴れ方が激しくなった事から多分これだ。
俺はそれ―――脳らしき部位をありったけの力を振り絞って―――握りつぶした。
「GUUUUUUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
奴が今までで最大の絶叫―――断末魔の声を上げた。
しばらく暴れていたが徐々に力が抜けて行き―――
ズシーン!!
派手な音を立てて動かなくなった。
俺はそれを確認して、そこから無造作に手を引き抜く。
手が脳漿塗れで気持ち悪いがそれどころでは無かった。
「…やったのか?」
しばらく警戒していたが、奴は動く気配が無い。
それを確認した途端、俺は全身から力が抜けて後ろに倒れた。
「生き残った…」
言葉にしてみる。
余り実感が湧かないが徐々にその言葉が身に染みて来た。
そして――――
「勝ったぁぁぁああああ!!!俺は生き残ったぞぉぉぉおおおお!!!」
俺は喉が枯れるまで全力で叫んだ。
「あれ?急に眠くなって来た」
肩の感覚が無い。首を回して横を見る。
気が付くと両肩から出血していた。
そう言えば俺の肩からは未だに血が出続けていたな。
まさか右だけだと思っていたのに左も出血しているとは…。
それは止まる気配が無い。
「駄目だ、もう動けない。やっぱりここで俺は死ぬのか?」
折角生き残れたのに出血多量で死亡とか。
「最悪だ」
最後にそう呟いて俺は意識を失った。
四面楚歌、背水の陣、窮鼠猫を噛む。そんな話でしたね。
諌君の下剋上精神、生への渇望が凄い。
自分もビックリです。
さて、意識を失ってしまった諌。これからどうなるんでしょうか。
ではまた次回で!
誤字脱字の指摘、ご意見ご感想お待ちしています。




