第1話 惑星ゴビ
人類が銀河系内に進出したと言ってもその初期は、苦難の連続だった。移民船団内の内乱などによって移民船団が壊滅したりブラックホールに偶発的に遭遇したり、光の速度は遅いため移住可能とされた惑星がもうすでに滅んでいたということさえあった。また、その頃は劣悪な環境の惑星の移住にあえて移住することも行われた。惑星移住がここまで頻繁に行われるようになったのは、地球の人口増加とそれに伴う食危機、人口数が増えたことによる地球温暖化はなくなったが熱危機が起こったためだ。
熱危機とは機械の放出熱によって起こる熱上昇のことだ。
その惑星ゴビは、銀河系内のより優位な惑星へ空間歪曲技術と惑星改造技術によって移植できるようになる以前に入植された惑星であり、その環境は最悪だった。
ゴビという名から分かるとおり、砂漠と不毛の岩石地帯が殆どを占めており、緑にあふれる地帯などはほとんどなかった。人口数もほかの惑星より少なく、惑星全体で数千万人しかいないだろう。
惑星の開拓は、この惑星に移民するまでの間に機械機器のシステムダウンなどがあり、ほかの辺境惑星と比べても惑星開拓は進んでいないう。
空間歪曲技術の開発とそれに伴う恒星間移動の高度化によって他惑星から進んだ技術が伝わってくるようになっても、ナノマシンや微生物による環境の改善などは工場施設の不備や経済的な面もあり更に一番の要因である位置的要因によって大量に手に入れることはできず夢のまた夢だった。
経済的な価値も工業的な価値もほとんどなく軍事上の地政学的な価値もなく、この惑星は都市部を中心にした生活が行われるのみの寂れた惑星だった。
「だが、それもこれまでよ。」
そうつぶやくものがいた。この惑星ゴビの大統領であるワン・リンメイだった。草原地帯の真ん中に位置するゴビの首都の大統領官邸でのことだった。
ゴビでは、二党制に基づく政治体制をとっており、大統領は直接選挙で選ばれる制度になっている。
彼女はこの惑星全体が自分たちが辺境の劣った惑星であるという思いから人身が寂れた現状をなんとかしたいという経緯から大統領を目指した。
彼女が大統領に就任してから積極的な開拓によって砂漠地帯の緑化などもそれなりに進むようになった。それでもゴビの現状に一石を投するとは思わなかったが、彼女はその一石を投したのだった。
それは開拓のための地質調査を行なっている最中に発見された鉱石だった。当初はただ地質学的に興味い深いゴビ特有の鉱石だと思われたのだが、それが核融合資源として最適な条件を備えていることが分かったのだ。核融合は、非常に軽い原子核同士の融合で起こるのだが、この鉱石は全く未知の元素であり、水素と同様に核融合反応を起こす上で最適なのだ。ヘリウム3には劣るが、それでも水素よりは遥かに核融合資源としての効率は高い。
埋蔵量も大量にあり、今後何十年にわたって採掘しても無くなることはないと言われている。それにほかの地点で探査を進めればまだ有望な鉱床は見込めるし、無くなるまでの間に惑星開拓をより進めればいいだけだ。
このことは惑星外技術である超光速通信システムを用いて銀河連邦や一般のニュースネットワークに流しているのだ。
ほかの惑星の企業から買付の依頼がなされており、地球のマディソンアンドニミッツ商事からは買付のための人員が来るという話だ。
(ふふ、これでこの惑星の未来も安泰ね。)
彼女はあと2年勤めれば任期が終わるので大統領として見届けることはないだろう。それでも核融合資源医によって経済的発展を遂げるゴビの未来に思いを馳せるのだった。




