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嘘①

「ヤマダ」

居間のテーブルに腰掛けて、本を読んでいたアズが僕を呼んだ。


「われは、ヤマダに嘘をついたことがあるか?」

アズの足がぷらぷらと揺れる。


「嘘?アズって嘘つかないでしょ」

僕の答えに、天井を見あげる。


「……たしかに。真実でないものを口にしたことはない、な」

「むぅ」

少しだけ不満そうだ。


「嘘つきたいの?」

カップを拭きながら、きく。


アズは本に目を戻している。

「……本に書いてあったのだ」

「“魔術師は嘘をつき人を騙す”と」

「……われは魔術師だが、嘘はつかん」

不思議そうな顔で言う。


「その本が嘘ついてるんじゃないの」


アズがハッとした顔をする。

そんな発想すらなかったようだ。


「……本は嘘をつくこともある。われは嘘をつけん」

「そして人間もよく嘘をつくと書いてある」


「ヤマダ、おまえは人間だな。ということは」

にや、と笑う。


「それも嘘か?」


それには答えずに、紙袋からプラムをふたつ出して、両手に持つ。

プラムを見たアズの目が輝く。


「今日、僕は、市場で、プラムを、買いました」

「これも嘘?」


アズは目を細める。


「訂正しよう」

「ヤマダ、おまえは正直者だ」

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