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謝罪
「ヤマダ」
アズが僕を呼んだ。
逆立ちしながら本を読んでいる。
魔術で、アズも本も逆さに浮いている。
「なに。ご飯はまだだよ」
「ごめんなさい」
アズが逆さのまま、言った。
僕はフライパンを落としそうになった。
「……え?いま、なんて?なんで?」
自分でも分かるほど慌てる僕をまっすぐに見て、アズはまた同じ言葉を口にした。
「ごめんなさい、ヤマダ」
見たこともない表情だった。
「……どうしたの、アズ」
「ふむ……なるほど」
アズはいつもの表情でいる。
逆さなことを除いては。
「“誠意をもって謝れば、必ず伝わります”。この本は嘘をついていないようだな」
「……相手の動きが止まるとは書いていなかったが」
ぺら、とページがめくられた。
「ところでヤマダ、誠意とはなんだ?」
逆さの本のタイトルは【人間関係の一歩】だった。
「……そういうことすると、ご飯なくすよ」
呆れて言った僕を見て、アズは驚いた顔をする。
「なんと、謝罪をすると食事がなくなるのか」
「われは二度と謝罪せん」




