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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
72/212

第72話 今はまだ

 神様から衝撃の事実を告げられた次の日。少し冷えた頭で思考の海に潜る。


 考えようによっては長寿であるエルフたちと長い時間一緒に居られるということでもあるけれど、その場合ある程度私の事情に関して話さなければいけない。


 しかし、この世界での不老不死がどのような扱いなのかわからない以上、下手に話してしまうのは危険だ。

 もしかしたら出会う全ての人から迫害を受けるかもしれない。両親にも被害があるかもしれない。捕まって人体実験を受けるかもしれない。

 長寿の生き物が多いこの世界で、そんな酷い目に遭うとは思えないけど、念のためこの辺りはきちんと調べておかないと。

 何か起きた後じゃ遅いもの。


 それと心を許しても話す人は限定する。

『神は人間を不老不死にできる』とか広まって狂信者でも増えたら怖いし、祭り上げられでもしたらたまったもんじゃない。



「それにしても……人間種じゃなくてエルフにしてくれればよかったのに……」


 そうすればある程度誤魔化しが効くのに。さすがに人間の姿でエルフと偽るのは難しい。


 いや、待てよ?

 この世界にはハーフエルフという種族がいる。人間種とエルフ種のあいの子だ。

 エルフの血が濃ければ耳が長いし、美形で線の細い子になる。逆に人間の血が濃ければ、見た目は人間種と変わりない姿になる。

 それでもエルフの血が入っている以上、美形で魔力が多い人は珍しくない。

 何より寿命が人間より遥かに長い。人間種以上、エルフ種以下といったところか。


 私は人間種の中ではかなり顔が良いし、悲しいことに胸も薄い。魔力量はエルフ並み、傍から見れば魔法の才能はエルフ並みかそれ以上。

 エルフの魔法の才能に関しては、人間種からしたら天才であるのが普通という認識だ。


 これらを考えると、私の血にエルフの血が混ざっていると公言しても怪しまれないどころか、納得されるんじゃないだろうか。

 実際に私、母の血筋にエルフの血が混じっているって言われても納得するよ。この顔だし、お母さんも胸ないし、若々しくて美人だもの。

 ちょっと聞いてみようかな。





「先祖にエルフがいたかって? うーん、わからないわね」


 家族三人集まった夕食時。

 食事も終わりそうになったところで母に聞いてみたが、わからないらしい。

 まあ、予想はしてた。

 私、父や母の両親って会ったことないし、話にあがったこともない。生きているのか死んでいるのかすら知らないけど、生きてないんじゃないかな。

 前世みたいに、百年生きる世界じゃないからね。人間種は五十六十超えれば結構年寄りなんだよ。


「僕も、昔お母さんに初めて会った時はハーフエルフだと思ったからね」

「あら、ジェームズったら」


 母を見ながらにこやかに話す父と、それを聞いて頬を赤らめながら嬉しそうな母。

 仲が良くて何よりだけど、目の前で惚気ないでほしいな……。あと話が進まないよ。


「僕もお母さんも、孤児だったんだよ」

「え!?」


 何それ初耳。

 そりゃあ先祖のことなんて知らんわな。祖父母の話が出なかったのも納得。

 昔サイラス先生に両親の馴れ初めを聞いたことがあるけど、孤児であることは話されなかった。サイラス先生が知らなかったというよりも、直接両親から聞くべきだと思ったから教えなかったのかも。

 両親は別の孤児院で育ったので、幼馴染というわけではないらしい。冒険者として旅に出た父が、この街で働いていた母を見つけたんだそうだ。


「知らなかった……」

「別に言わなくてもいいかなーって思って。ごめんね?」


 母が可愛く首を傾げながら謝ってくる。あざといけど似合うんだよなぁ。

 知ったところでどうこうすることはないから、別にいいんだけど。


 お父さんやお母さんの両親にエルフの人がいる可能性もあるんだったら、エルフの血が流れていると言っても嘘にはならない……かもしれない。

 でも父は魔法が使えないから可能性は低いかな。

 もしお母さんがハーフエルフだったら……知らず知らずのうちに寿命差のある結婚をしていた可能性があるんだ……。

 あんまり考えたくないな。


「エルフには、エルフの血が身体に混ざっているか、気が付ける能力とかあるかな」


 同種の血が流れている! とかわかる能力がなければ、年を取らないとか、長生きするとかバレても大丈夫なんじゃないかな。

 正直、確かめたいという気持ちも無くはない。


「うーん……そういうのは聞いたことがないけど、エルフに直接聞いてみないとわからないね」

「そっか」


 やっぱりそうよね。エルフたちと合流できたら聞いてみようかな。


「もしかしたら、リアにはエルフの血が流れているかもね。魔法の才能があるんだから」

「そしたらお母さんにも流れてるよ、きっと」


 母に誇らしげにそう言われ、複雑な気分になったけど、適当に誤魔化しておいた。

 私の魔法の才能は女神様がくれたものだから、血筋はあまり関係ないと思う。言わないけど。


 血筋なんてどうでもいいけど、この人達の娘で良かったとは、ずっと思ってる。




 でも、エルフたちと一緒に生きることを選んだら、確実にこの両親や幼馴染たち、そしてライラのことを見送る立場になるんだな……。


 それは、嫌、だなぁ。そんな覚悟が、私にあるとは思えない。


 誰にも、私よりも先に死んでほしくないな……。


 二十年。人生百年と言われた前世で、私が生きた時間。

 順風満帆と言っても差し支えない程、特に挫折も経験することなく無難に生きていた。

 陽キャじゃなかったけど、友人はいたし、大学生活も悪くはなかった。そんな普通の私は二十歳で死んだ。

 きっと誰もが「若いのに」って言っただろう。私の死は文字通り世界中で報道されたはずだ。なにせ日本で起きた、あのテロでの唯一の死者。女神様が言うには英雄扱いらしいし。


 女神様でさえも、私の前世を早死にと言った。

 不老不死はそれを回避するための贈り物だと。


「長き人生を幸福に」「無理をしないで」「待ってるから」「気をつけてね」


 私は恵まれている。誰もが私が早く死ぬことなんて望んでいない。


 私に長く生きる覚悟はあるだろうか。

 長く生きるということは、その分誰かの死を見届けることになる。

 前世でだって、私の近しい人を見送った経験なんてない。私は、身近な人の死というものを経験したことがない。

 その上、私は死というものを経験している。

 誰かに死を経験させ、更にその様を見送る? 自身は何も変わらない姿で?


 想像しただけで無理だ。


 年を取らない私を置いて、みんながどんどん離れていく。そんなことを想像しただけで涙が出そうだ。

 私はどうしたらいいんだろう。


 それとも、誰かの死に慣れてしまう時が来るのかな。悲しいことだけど、人ってそうやって生きていくものだもんね……。

 今は未知の未来に怯えているだけなのかも。いつか時間が解決してくれるのを、落ち着いて待っているべき時だろう。

 問題の先送りでしかないけど、こればっかりはその時が来ないと、自分の心がどうなるかわからないから。


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