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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第71話 地下へ(2)

『アトランティス』侵入地点の広場から、徒歩十数分。そこには地下へ続くであろう巨大な階段があった。材質は『オリハルコン』ではない。幅はかなりある。そして何より――


「下が見えねぇな……」


 例の光る苔が階段には生えていないのだ。よって、先へ進むごとに暗くなっており、燈太達にいるところからは、階段を下ると何があるのかは全くわからない。


『このハイドが先導します』


 ハイドは前方を自身に取り付けられたライトで、照らした。


「ありがとうございます、課長。……何をぼーっとしている、次に貴様だろうが」


 静馬は紅蓮を蹴り飛ばす。


「何しやがんだ! テメェ!」


「死なんのだから、次は貴様が逝け。炭鉱に入るカナリアの如くな」


「チッ……」


 言葉遣いに多少の問題はあるものの、静馬の言うことには納得したのか紅蓮は、ハイドのあとを追うように階段に足を掛けた。


「くれぐれも慎重に」


 幽嶋はそう声をかけた。ちなみに、幽嶋の瞬間移動には行き先がイメージが必要となる。よってこういった先の見えない場所で先導することはできない。

 皆、ライトは持参している。それを使い足元を照らし、一人ずつ階段に足をかけていった。燈太は階段を下りていくと同時に指を合わせ能力を使う。


「ここでも異常ありません」


 例のイメージが飛び込んでくることはなかった。


「け、結構怖いですね……。怖くないですか……?」


 後ろにいた藤乃が燈太に声をかけた。


「転んだら……とか考えると確かに……」


 まさに一寸先は闇という感じだ。


「――でも」


「でも?」


「この先に何が待ってるか考えると結構わくわくというか、先に進まずにはいられないって感じがします……」


 燈太の目はただただ先をみつめていた。


「えぇ……」


「……あ、ほら、何か新種の植物とか生えてるかもしれませんよ!」


「それは……、確かに……」


「シズカ!」


 藤乃の後ろからシールに乗ったネロが来ている。


「ネロがついてる!」


 そう、ネロが言い、シールは藤乃の頬に顔を寄せた。


「ありがとう、ネロちゃん。シールも」


 こうしてみると、シールもかわいい。滅茶苦茶デカい犬という感じだ。

 というか、その巨体で階段もガンガン降りて行ける器用さに驚いた。




 階段を降り始めて数分、燈太達は完全な暗闇の中にいた。ライトが無ければもう何も見えないだろう。


「随分長いですね……」


「ですね……。ど、どこまで続くんでしょう……」


「ゴールがみえな――」


 藤乃と話していて燈太は『あること』に気づき足を止めた。


「? どうかしました?」


 ここまで、燈太は能力を使いながら階段を降りてきている。ゆえに、一番最初に『それ』に気づいた。

 燈太はその場でしゃがみ、足元をよくみる。


 青い欠片。


「オ、『オリハルコン』……! 紅蓮さん! この辺、階段に小さな『オリハルコン』が埋め込まれてます!」


「?!」


 藤乃と話していて、一つ下の段に足を掛けた途端に能力が使えなくなった。

 埋め込まれた『オリハルコン』の欠片は極端に小さいものではないし、辺り一面に埋め込まれているわけではない。明るければ避けて通ることもできる。しかし、この暗さでは……。


 設計者は『オリハルコン』をなぜ、階段に埋めた。

 まるで、『超現象保持者ホルダー』の能力を封殺するかの如く。


「危ないッ!」


 ネロが叫ぶ。

 次の瞬間、燈太の身体は後方に勢いよく引っ張られた。


「うわっ!」


 その一瞬後に、燈太が先ほどまでいた場所に何かが飛来した。その飛来物を突然現れた幽嶋が蹴りで撃ち落とす。


「ネロ、よく気づきマシた。流石デス」


 幽嶋に撃ち落とされたそれは、矢であった。

 全てが終わったあとで燈太は状況を把握した。燈太を引っ張ったのは後ろにいたシール。燈太がいた段の右方にライトを当てると、弓の形をしたオブジェが置いてあった。そこから放たれた矢は、燈太に向かって飛んできたのだ。


「あ、ありがとうございます!」


 命の恩人である、シールとネロ、幽嶋に礼を言った。


「……いや、正直私は間に合ってなかったデス。足場にオリハルコンがあって能力を使うのが一瞬遅れマシた。厄介デスね、これ」


 シールがいなければ、今頃……。即死はないかもしれないが当たり所が悪ければ死んでしまうだろうし、少なくとも出血は免れない。

 そして、矢を放った弓のオブジェ。これは気づかなかったのではなく多分いきなり現れた。

 つまり、罠である。そして、『超現象保持者ホルダー』封じの『オリハルコン』。

 あからさまに侵入者を拒んでいる。


 ――ある。この先に何かが。


「おいおい、大丈夫かよ!」


 紅蓮が前から燈太の元へやってきた。


「はい、助けてもらったので! あ、そうだ」


 超音波の出る小型装置をバックから取り出した。

 これと能力を組み合わせれば、暗くとも周りの状況を把握することができる。バッテリーに限度があるため、使うのを温存していたのだ。


「これで、少しは危険を察知できると思います。次からは足手まといにならないように気を付けますね」


「……腰でも抜かしてんじゃねーかと思ったが、いつにも増して冷静だな」


「はい、進みましょう!」


「おう」


 紅蓮はそう言い、ハイドのいる下の方へ戻っていった。


「……あの、対人課って危険だらけなんですか……?」


 藤乃が燈太の横に来て、恐る恐る尋ねた。


「え、なんでですか?」


「いや、なんか、動じてないなぁ……って。今頃調査班の遊佐君が対人課に派遣されてるんですけど……」


「いや、基本的にそこまで危ない仕事は……なかったような、あったような。……まぁ、死にはしませんでした」


「へ、へぇ……」


 燈太は藤乃の顔から「対人課の派遣は絶対受けないですよ!」といったメッセージを受け取った。


「まあ、今回は無理行って付いてきてるので多少のリスクは負いますよ、俺も……」


「私は無理言ってないんだけどなぁ……」


 藤乃はそうつぶやくと、前方から静馬の咳払い聞こえた。藤乃は素早く燈太の後ろへと戻った。


『――こちら指令部、時雨沢。階段に埋まるオリハルコンの危険性を考え、ここからは進行速度を落とし、戦闘員は調査員のバックアップをより手厚くお願いします。

 もし、この先オリハルコンによる「超現象保持者ホルダー」の妨害が拡大する一方であった場合、引き返すことを視野にいれてください。以上です』


 イヤホンから指示が流れた。


 ――引き返すことを視野に……。


 実際、能力抜きで進むのはどう考えても愚策。

 しかし、この先に行かねば何も掴めない。『導き』にある組織を強靭にするものは手に入っていない。そして、この『アトランティス』も謎に包まれたままだ。

 燈太は矢が目の前をかすめた時よりも焦りを感じていた。

ポイントを入れてくださった方ありがとうございます!

しっかり作品を書ききることを目指して頑張ります。

これからも応援お願い致します!


p.s. 遊佐君→ガン爺と一緒に飛んでたホルダー

   時雨沢→カレンちゃん。

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