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宝剣の塚守  作者: ディーディー
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01 森の中の一軒宿オールドホーント

鬱蒼とした森の中にある一軒宿オールドホーント、それが僕の仕事場だ。


なんで森の中にポツンと宿があるのかというと、ここは古代に絶滅した王朝の最後の王の墓所である塚があり、ちょっとした観光名所なのだ。


まあ、ホントに観光名所なのはオールドホーントから半日ほど歩いたところにある温泉街リリアスなんだけどね、そこからたま~に最後の王の墓に収められてた宝剣の伝説に惹かれて物見遊山の客が流れてくるんだ。


僕は商家の出だった母さんがここで死んじゃって以来、宿の主人にお世話になっているわけなんだけど、オールドホーントは僕が小さい頃はもっと鄙びていた(というかあばら家同然だった)。


宿の主人イースさんは、なんというか寡黙で力持ちなタイプの大男(今は違うけど、出会った頃はね!)で、昔は狩猟小屋みたいな感じだったオールドホーントに、稀に訪れる旅人を泊めていたくらいのものだったらしい。


そんなわけで宿の経営には興味がないらしく僕に任せきり、自分は狩猟道具を携えては森に行き、とんでもなく上質な獲物や茸や木の実などを持ち帰ってくる。それに時々、綺麗な石ころを持ち帰ってくることもあるんだ。


僕がいない頃は、それを街まで売りに行ってお金に換えていたみたいだけど、なにしろ生鮮食品は日持ちが悪いし入手できる時期も偏っている。


なので、僕はこれを燻製やら酢漬けやらジャムにして、宿泊客に出したり、土産物として持たせたり、街の商店に委託して売ってもらったら、クチコミで評判になった。


綺麗な石ころのほうは伝手を頼って研磨してくれる人を見つけ、宝石店に高値で引き取ってもらえるようになった。


利益がそこそこあがるようになってからは、僕は宿を整えることにお金を使いまくり、最大で6人ほどが泊まれるような体裁にした。


そんなわけで、今、森の中の一軒宿オールドホーントは旨い飯にありつける宿として、それなりに知名度がある。


ちょっと自慢話になってしまったが、日ごろ自慢できる相手がいないので、少しばかり我慢してほしい。


これは、そんな僕が久しぶりに街に出て、委託先の商店で大量の木の実のシロップ漬けと燻製の利益を回収して、ほくほくした気持ちで宿に戻ってきたところから始まるお話である。






++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「あれはニセモノだろう!」


森の中の一軒宿オールドホーントの入口で、薄汚れた格好の少年と、腕組みした宿の主人が睨みあっている。


「イース、どうしたんですか?」


僕が慌ててロバから降りて駆け寄ると、腕組みした大男がチラリとこちらを見て視線を少年に戻した。


他の宿泊客が野次馬になって二人を取り囲んでいる。


「こいつがわけのわからんことを言うんで、困っていたところだ。」


「まあまあ、こんなところじゃなんですから、中へどうぞ。」


睨みあう二人をなだめて中に促すと、慌ててロバのマリクを小屋に入れ、屋内に戻る。





「で、何があったんですか?」


仏頂面のイースに尋ねると、少年が横から口を挟んできた。


「あの剣はニセモノだと言ったんだ!本物はどこにあるんだ?」


「え?え?どういうことでしょう?」


少年の言っているのは、古代王朝最後の王の墓所と言われる塚の手前にある小さな廟の中に収められた剣のことだろう。一応観光名所なので、廟には誰でも入れるようになっているし、岩の上に突き立てられた剣も触れられるようになっている。


そもそもものすごく昔の剣のはずなのに、岩から出ている抜身の刃は今でもピカピカだし、僕もあれはレプリカだと思っていたんだけど、違うのか…?


宝剣と言われる伝説の剣があんなところにあるはずないもんね~。


「ジル、こいつはさっきからこの調子なんだ、なんか食わせてやれ。きっと腹が減りすぎてるんだろう。」


イースはため息をつきながら、自分の胸くらいの背丈の少年を見下ろした。


「はい、あの、こちらへどうぞ。すぐにパンとスープをすぐお出ししますね。」


少年を食卓につかせて食事を用意すると、よほど空腹だったのか、無言であっという間にたいらげた。


「坊主、満足したら帰れよ。今ならぎりぎり夕刻までに街まで着けるだろうさ。」


イースがホッとした顔で少年に語りかけるなり、少年は両手でバン!とテーブルを叩いた。


「そういうわけにはいきません!私は剣を持ち帰らなければならないのです!」


食卓の喧騒に引き寄せられるように、また他の宿泊客が遠巻きにのぞいている。


「見たところ君がこの宿の主人か? 本物を出してもらえるまで、ここにいるからな。よろしく頼む!」


非力な僕の代わりにこの宿で力仕事を一手に引き受けてくれているイースは、さっきまで薪割りをしていたらしく、一見、下働きにしか見えない恰好だ。


少年は私の手を取ると、他の客に見えないように硬貨を握らせた。ちらりと金色の輝きが見える。


え!? き、金貨だよ!


僕は薄汚い恰好をした少年が金貨を差し出したことに驚きを覚えるとともに、まじまじと顔を見てしまった。


汚れてはいるが、濃いハチミツ色の髪は洗ったらきっと綺麗だろう。触れた手はがさついているけど、僕にはわかる、これは働き者の手だ。そして、髪と同じ濃いハチミツ色の、強い瞳。


「イース、こちらのお客様を、奥の間へご案内してください!」


なんだかよくわからないけど、反射的に僕はそう叫んでいた。



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