終譚:雨の証明
― 続いているということ ―
雨は、いつから降っているのか。
誰も知らない。止んだことがあるのかも、知らない。
ただ。
雨の夜にだけ、語られる。
山の奥。誰も踏み入らぬ場所に、二つの影が在ると。
白と、黒。
寄り添いながら、決して触れない存在。
人は問う。
それは、いつ終わるのかと。
答えはない。
終わりを持たぬものだから。
また問う。
なぜ、続いているのかと。
それにも、答えはない。
理由を持たぬものだから。
ただ。
ひとつだけ、確かなことがある。
雨が降るたび。
その距離は、変わらない。
変わらないまま、続いている。
それは、奇跡ではない。約束でもない。
——証明である。
見出されたものが、今も見出され続けていること。
応えられたものが、今も応え続けていること。
その積み重ねが——形を持たぬまま、在り続けている。
もし。
どちらかが、止まれば。
そのとき、すべては消える。
だが。
止まらない。
止まる理由が、存在しない。
白は、見出し続ける。黒は、応え続ける。
それだけで、この世界は成立している。
雨は、今日も降っている。
静かに。やさしく。
すべてを包むように。
そして。
誰も知らないその場所で——
白と黒は、変わらず寄り添っている。
触れずに。離れずに。
雨だけが、落ち続ける。
それでも——
途切れない。




