98.ヒメ ロイドと話し合う 2
「先ほどの話は、今の国王面会の一件が片付いてから再考します。というか、聞く気はないんだけどね。」
わたしの提案にファリナも頷く。
「胡散臭すぎるわよね。いきなりポッとでの魔人族とか混血のお姉さんとかに言われたってね。」
「いや・・・お姉さんの話は聞いてあげたいけど・・・」
「いざとなったら、ヒメを殺してわたしも死ぬからね。」
晩ご飯の席。もめてるわたしとファリナを横目に、オークの肉を頬張るミヤ。
「大人しいわね。何か言うことないの?ミヤは。」
「・・・」
ファリナの疑問にミヤ、ノーリアクション。
「ミヤ?」
「今はヒメ様の安全が最優先。あいつらの目的がわからない。ヒメ様を心配してのものなのか、ヒメ様が邪魔だからどこかに遠ざけたいのか。」
真剣な顔で考えるミヤ。だけど、ナイフとフォークは止まらない。
「モグモグ、大体がヒメ様が目的なのか、リリーサの名前も出ていたと言うことは、パク、モグモグ、混血が目的で話をしてるのか。パク、モグモグ・・・」
うん、食べ終わってからにしようか・・・
「朝ですよ。」
「ふぁにひてふはな、いいーしゃ・・・」
結局、何のいい案も浮かばず、寝てしまって朝。ほっぺたが痛くて目を覚ます。
目の前に、わたしのほっぺたを引っ張るリリーサ。
その手を払いのける。顔が腫れたらどうすんのよ。
「違う起こし方できないの?」
「そう思いますよね。だから、キスで起こそうとしたら、ファリナさんとミヤさんが、わたしの首切り落とそうとするんですけど、おかしくないですか?」
そろそろそれ以外の方法考えようよ。
「本当に刃を突き立てられたんですけど、冗談にしてはやりすぎだと思います。<モトドーリ>で治しましたけど、血が出ました。痛かったです。聞いてます?ヒメさん。」
あぁ、それ多分マジだから。気をつけてね。
「昨日からちょっと気が立ってるから。あまりあおらないでね。」
「何かあったんですか?」
どうしよう、どこまで話そう?とりあえずパープルウルフのことは話しておいた方がいいかな。いや、だめだ。パープルウルフのことを話したら、リリーサのことだから、あの人魔に会いに行くって言い出すに決まってる。パープルウルフは置いといて。
「この間の魔人族に絡まれちゃって。」
「魔獣は連れていましたか?ウルフですか?何色ですか?」
やっぱりそっちに食いつくよね。
「い、いなかったよ。警告だって話をしにきただけみたいで。」
「けいこく?渓谷ですか?どこの谷?あ!川ってことは、カニですね。クラブですね。ポイズン系はだめですよ。あれ食べられませんし、甲羅も肉や血液の毒が危なくてうまく加工できないから基本廃棄です。売れないものはダメです。獣のヤマガニシリーズはいいですね。甲羅は防具用に売れますし、肉はおいしいです。あ、でもヤマシロガニは、甲羅柔らかいので甲羅は売れません。」
なんでカニの話になってるのよ。一気にまくし立てられて否定する余裕がない。後、川なら魚だっているからね。
「で、何のカニですか?」
「カニじゃない。何の話をしてるの。えーと、注意されたの。あの人魔に。後、混血のお姉ちゃんと2人で。」
「何の組み合わせですか?変な壺でも買わされませんでしたか?」
「そういうのとはちょっと違うかな。」
「ところで、いきなり部屋が広くなってますね。しかもベッド3つくっつけてるなんて。」
「あ、いや・・・」
寝室改装してからリリーサ入れてなかったんだ。みんな一緒に寝てるのばれてしまった。またうるさいお方に・・・
「この並びだとみんな横並びになります。端の人が寂しいです。みんなで丸くなって眠れるようもっと足元の方も伸ばすべきです。」
「や、3人なら困らないんだけど。」
「え?わたしがヒメさんの腕枕ですか?ファリナさんかミヤさんに怒られそう。」
「いや、あの、うん、考えておく。」
ベッド縦も横も大きくしなきゃダメだな。
「なるほど、人里離れた山奥に行って暮らせと。」
「まぁかなり省略したらそんなものかな。」
「わたし、仙人になる気はないですよ。」
「わたしだって無いよ。っていうか、なんで仙人?」
「山奥で暮らすのは仙人です。大体、この大陸の山って言ったら黒の山脈しかないじゃありませんか。魔獣に人魔がザックザクですよ。普通の一般人が住めるわけないです。」
魔獣や人魔はザックザクとは言わない。
「わたしは普通の一般人だけど、住もうと思えば住めるよ。」
「ヒメさん、普通の一般人って、言葉遣いが変ですよ。」
言い出したのはあんただよね!
「ほら、朝ご飯食べてロイドさんのとこ行くよ。」
後ろで見張っていたファリナが声をかけてくる。
「リルフィーナでさえ手伝ってくれているのに。」
「「え?」」
わたしとリリーサ、ちょっと驚き。
「リルフィーナに手伝わせているのですか?」
リリーサが慌てる。
ガシャーン!奥で何かが割れる音。
「あぁー!やってしまいました!」
誰かが叫んでる。
「いや、リルフィーナでしょ。」
なら止めなさいよ、ファリナ。
起きてキッチンへ。
「開始3分で皿1枚。いい記録だ。」
「ミヤさん、謝ったじゃないですか。」
キッチンで割れたお皿を拾うミヤとリルフィーナ。
「痛!切っちゃいました。」
「あぁ、危ないからあなたはどいてなさい。私が拾います。その前に指を見せなさい。」
リリーサが再生魔法でリルフィーナの指を治してやる。
「座っていなさい。」
お皿の欠片を拾い出す。
「いいよ。リリーサ。ちょっと離れていて。ミヤ、お願い。」
「ん。」
破片が散ったと思われる床に範囲に魔法陣が浮かぶ。
「いいぞ。」
「オーケー。<豪火>」
床がボッと一瞬だけ炎が燃え立ち、すぐ消える。後には破片が無くなっている。
「な、何ですか?」
「ミヤに床面に火炎に特化した防御魔法を展開してもらって、その上の物を燃やしたの。塵になったから、後で箒で掃いておくから。」
「どの辺が普通の一般人ですか。」
「リリーサ、その使い方は変だぞ。」
ミヤにツッコまれる。
「毎度のことながら、考えてわからないものは考えても仕方ないから、目の前の問題から潰していくよ。まずはロイドさんのところに行って国王をどうするか決めよう。」
「燃やせ。」
ミヤが、ずっと結論の出ない話し合いに飽きてしまったのか厳しい。
燃やすのが一番手っ取り早いけど、国一つを私の機嫌で消してしまうのはさすがになぁ。
「ロイドさんのところに行くわよ。燃やすなら燃やすで、きっちりロイドさんを共犯にしておかないと、事実を知ってる唯一の貴族だからね。」
ファリナが悪い笑みを浮かべてる。相変わらず極悪だ。
「いつもながら容赦がありませんね。お姉様そっくりです。」
「当たり前です、リルフィーナ。やるなら徹底的です。完膚なきまでです。」
「でも、昨日の話では、お姉様がパーティーリーダーとして国王様のお言葉をいただく社交辞令作戦で行くと決まってませんでしたか?」
「過去は振り返ってはダメです。現状最大の問題は、そんな些細な事はさっさと終わらせて、森へ行き、人魔を探すことです。そして、隠遁して欲しくば、ウルフの2,30匹も持って来いと言ってやるです。」
いや、だから、そっちこそ後回しにしようねって今決めたよね。大体、そう言ったらあの人魔、本当に持ってきそうだな。魔人族に借りをつくるのは絶対嫌なんだけど。
そして、パーソンズ邸。
「パーティー『白聖女の舞』がパーティー『三重奏の乙女』の協力でパープルウルフ及び灰色狼を狩ったということにする。」
「わたしたちの名前は出さなくていいよ。」
ロイドさんの一言目から反対。今のパーティー名とはいえ、国王に覚えてほしくない。
「だが、国王様が白聖女様のパーティーメンバーは2人だと知っていたら説明しなければならなくなるぞ。その場で取り繕うくらいなら、最初から知らせておいた方が話が進みやすいだろう。」
「リリーサのパーティーってそんなに有名なの?」
「ガルムザフト王国ではそこそこは名を知られてますよ。あの『ヴァイス・ゼーゲン』の所有者で元白聖女ですから。」
リルフィーナがちょっと自慢気。うざい。
「あぁ、一部に有名なんだっけ。」
そういえば、ガルムザフト王国の大臣との会議の際の料理に使う灰色狼のことで、この国の国王もリリーサのお店のこと調べていたらしい。知っている可能性はあるのか。
「あくまでヒメたちのパーティーは、リリーサと偶然出会って、戦闘では後方支援だったということにしておく。国王様への手紙にはそう書くので、功を競って国王様の前でわたしが、とか言い出すなよ。」
「大丈夫。偉い人に腕自慢するなって、今は亡き誰かに言われてるから。」
「誰かって誰だ?」
「さあ?食堂で出会った知らないおじさんだったかな。」
思いつきの発言にツッコミはやめてほしい。
「後、『三重奏の乙女』のリーダーはファリナということにしようと思うが構わないか?」
「なぜですか?」
ファリナがムッとして尋ねる。
「別パーティーとした場合、ヒメたちにも国王様がお声をかけるかもしれない。その時ヒメだと何を言い出すかわからん。ファリナなら当たり障りの無い事を答えられると思うんだが、どうだろう?」
「そうですね。ヒメさんだと、こちらからケンカを売るようなことを言い出したあげく、さらに燃やすという極悪非道なことやりかねないです。」
リリーサ、わたしを何だと思ってる。
「簡単な受け答えくらいなら。」
ファリナが渋々という顔で首を縦に振る。
「頼むぞ。リリーサは隣の国のハンターだから、多少は見逃されるだろうが、お前たちは私の領地のハンターだからな。何かあったら私の責任だ。」
「適当に言っておけばいいのに。」
「できるだけウソはつきたくない。私は国王様の忠実な家臣なのだから。」
うん、めんどくさい。
「向こうに伝えることはそれくらいか。後はうまく立ち振る舞ってくれ。」
「明日あたり行けばいいの?」
「国王様がそんな暇なわけないだろう。手紙を出して、向こうで受け取って、予定を調整して都合のいい日を連絡してくる。返事が来るのに2,3週間から1ヶ月はかかるんじゃないかな。だから、それ以降になるかな。国王様への訪問は。」
「めんどくさ!」
「そういうものだ。緊急時ならともかく、普通に礼をするだけだ。急ぐ要素がない。今はガルムザフト王国との会議が終わったばかりだ。もう少し遅れるかもしれん。」
あ、会議終わったんだ。興味ないから全然知らなかったよ。
「1ヶ月以上先か。忘れちゃうね、それは。」
「忘れますね。来月以降なんて、赤鬼が泣いちゃうレベルの話ですよ。」
ごめんリリーサ、何言いたいのかよくわからない。
「え?来月の話をしたら赤鬼が泣くっていうじゃありませんか。」
「言わないから。聞いた事ないから。」
「おかしいですね。村はずれのドミトルさんからよく聞いたんですけど。」
あんたのとこの村はずれシリーズは世間一般からかい離してるからね。
「おかしいです。おかしいです。」
うん、あんたがね。
「では、この内容で手紙を出す。後は返事を待つしかない。」
「適当なパーティー名にしておいて、返事が来る前に全滅しちゃいました、ごめん。ってことにできないかな。そうしたら、向こうもこちらもメンツは保てるよね。」
「国王様が、そのパーティー名をこの国とガルムザフト王国とでお調べになられたらすぐにばれるだろう。」
「そんなに執念深いの?国王って。」
「あくまで噂なんだが、この件は国王様より王女様が強く興味を持っていて、国王様にぜひとも会いたいと無理を言っているとの話もある。国王様は王女様には甘々でどんな無理も聞き入れてしまうという噂だ。あくまでも噂だ。私のような貴族といっても真ん中から下のレベルの者には王宮のことなどわからんよ。」
「そうか。じゃ、その王女を・・・」
「燃やすな。確証はない。あくまで噂だ。噂で人を燃やすな。」
「まだ何も言ってないよ。」
「じゃ、ここにいる者に聞いてみよう。今のヒメの話、燃やす以外だと思う者は手をあげてくれ。」
その聞き方はないんじゃないかな。でも、みんな違うって言ってくれるよ。
・・・誰も手をあげない。軽く睨んだファリナとミヤは目を逸らす。
「冤罪だ!」
「じゃ、なんて言おうとしたんだ?」
「え?・・・リリーサに消してもらおうかって・・・」
みんなが白い目で睨む・・・誤魔化しきれなかったよ!




