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11 誘拐されて

 視界全体が白で覆われた時間はそう長くはなかった。

 段々と周りの景色が見えてくる。

 ほんの数秒前までは少し暗めの裏路地で、数メートル先にある町の大通りには暖色の灯りと数えきれないほどの人がいたのに打って変わり、やたら広いが四方八方が石の壁と寒色の灯りで包まれている。


「ここは・・・どこだ・・・ってそうだ、ルカ!イブ!ヴィクトリア!無事か!?」


 周りをよく見渡した。

 少し離れた場所でルカとイブがさっきの白い光のせいかよろけて地面に手をつけていた。

 俺の声にルカとイブが眉間にしわを寄せながら反応してくれた。


「えぇ、私はなんとか・・・。」


「うぅ・・・頭がクラクラする。」


 どうやらケガとかはしていないみたいだ、とりあえず良かった。

 だけど周りをいくら見渡してもヴィクトリアの姿は見えなかった。


「ルカ、イブ、ヴィクトリアの姿を見ていないか?」


 イブも周りを見渡す。


「いえ、私は見ていないですね、光の魔力も感知しないです。」


 ルカも少し周りを見てから首を横に振った。

 どうやらヴィクトリアだけここにはいないらしい、さっきの光をよけることができたのか、それともヴィクトリアだけ別の所に移動させられたのか、どちらにしろヴィクトリア程の実力を持ってるなら大丈夫だとは思うが・・・。


「安心してください、光の魔法剣士さんはもう一人の私が相手をしています。」


 突然石造りの部屋に反響して聞こえたのはさっきまで聞いていた気に食わない声

 ルカとイブの逆方向を振り向くとその声の主はいた。

 そのおじさんは丁寧にお辞儀をし挨拶をした。


「申し遅れました、私はアドルフ・G・アントゥ、魔法研究者です。」


 アドルフ・・・まぁ聞いたことがない名前だ、家とマリーセンカの町しか行っていないからそりゃ当然だが。

 アドルフは続けて言った。


「先程も申した通り光の魔法剣士と雷の魔法剣士を引き取りにきた所存です。」


 イブは体勢を立て直し俺の横まで来てアドルフに対して剣を向けた。


「じゃあ私もさっき言ったこと言います、そんな勝手な話通るとでも思っているんですか!断固反対します!」


 アドルフは呆れた顔をして浅くため息をついたが、ため息をついた後にニヤリと笑った。


「まぁ、その返答も分かってたうえで言ったんだけどねぇ、分かっていたから力尽くで手伝ってもらうためにここに呼んだんだよね。まぁ流石にあちらの世界で生きる伝説と言われているあの光の魔法剣士とその弟子を共闘させるのはこちらとしても不利だから分断させたんだけどね。」


 やはりヴィクトリアだけ別の場所に飛ばされていたのか、それにしてもヴィクトリア、生きる伝説なんて言われていたのか、それほどまでにすごい人だったとは。

 その話を聞いたイブは剣を強く握りしめ、強くアドルフを睨めつけた。


「ハッ!つまりここからは話し合いではなく実力のぶつかり合いって訳ですね!私の得意分野です!」


 そう言うとイブは少しニヤついてアドルフとの間合いを詰めた。


「おいイブ!さっき相手が何をしたのか忘れたのか!うかつに近寄るな!」


 また時間停止か何かしらのマナを使ってくるかもしれない、このタイミングで近づくのは流石に危なすぎる。

 だがイブは俺の言葉に耳を傾けずアドルフに対して剣を振った。


 だが剣を振ると同時にアドルフはスティックを地面に向けまた魔法を唱えた。



強制収集アッセンブル



 アドルフの前の地面にオレンジ色の魔方陣が3つでき、俺たちがさっき見たように魔方陣が大きく光りだした。

 イブは構わず剣を振り下ろしたがアドルフには届かずアドルフの前に急に現れた者に止められた。

 やがてオレンジ色の光は落ち着きその光の中から3人の人が現れた。

 その内のイブの剣を止めた者がイブの顔を見て笑った。


「あら久しぶりねイブ、1か月ぶりくらいかしら?貴女もこの世界に来たのね?まぁあの伝説さんの弟子だし当然かしら?」


 その少女は黒いローブを羽織っており姿はよく見えないが、老人が持っていそうな大きな杖を持っている。そしてイブと知り合いっぽそうな口ぶりからしてこの子もアドルフに連れてこられた魔法使いなのだろう。

 イブはその子を見るや否や目つきが変わった。


「貴女・・・アリスなの!?」


 剣と杖を交えたままだがまるで久しぶりに友達に会ったかのような会話だ。

 アリスは杖を納めずそのまま話す。


「貴女も早いうちにアドルフ様に就いた方がいいわよ、あの御方はとても偉大な御方、あの御方直属の下に就くことがどれほど素晴らしいことか、世界を二つもお守りになられるのよ!」


 その言葉にイブは再び目つきを変えた。


「アリスもそっち側ですか、じゃあもう何も聞くことはありません、貴女は私の敵です!」


 そういうとイブはバックステップし剣に手を当て魔法を唱えた。


帯電エンチャント


 アリスもそれを見て友達を見ていた目ではなく敵を見る目に変わった。


「イブ、貴女はいつもそう、すぐに周りが見れなくなる。あちらの世界では私とイブ、模擬戦をした時は大体五分だったわね、そんな貴女がアドルフ様に剣を向けること自体が過ちなのよね。」


 そう言うとアリスは後ろを振り向き、アドルフの方を見て笑顔になった、そしてイブの方を指さしアドルフに言った。


「アドルフ様ー!あの雷の魔法剣士は私一人で十分ですよー!アドルフ様はそこで休憩なさってて下さい!そこにいるアドルフ様の部下二人はあそこに突っ立ってる男とあの帽子をかぶった子供をお願いねー。」


 そう言うとアリスは再びイブの方を向きなおしてイブとの戦闘に集中しだした。

 俺はあの黒いローブで身を隠した二人と戦うことになるのか・・・。

 相手の素性は何も分からないがここに呼び出されている、そしてそのうちの一人が魔法使いであることから残りの二人も魔法使いか相当実力のある奴等なんだろうな。


「アリス!邪魔だどけ!マテウス!今そちらに行きます!」


「地属性の魔法使いの粘り強さ、忘れたのかしら?イブ、貴女の相手は私、アリス・アン・ハートが相手よ!そちらに行きたければまず私を倒すことね。」


 イブが俺の所に近寄ろうとするとアリスがその間に入り阻止する。

 そしてローブを羽織った二人も戦闘態勢に入った。

 俺も覚悟を決めないといけないみたいだな・・・。

 すると奥で立っていたアドルフも俺の方に近寄り大きくマントを羽ばたかせた。


「うーん、そこの少年、中々手強そうだねぇ、どれ私も手を貸すよ。」


 まさかの相手3人かよ!流石にまずいぞ・・・



 ---オイラはいつでも準備出来てるよー、何でも取引ござれだぜ!



 分かった、さっき準備運動はすませたしな、久しぶりにお前の力借りるよ、トランス。



















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