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生きる意味  作者: カセージン
最終章
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最終話(後半)あの時の公園の桜の木の下で

それから、10年の歳月が流れた。



長い服役を終え、刑務所の重い門を出た健人は、まっすぐにある場所へと向かっていた。



季節は巡り、ちょうど春。



彼が向かったのは、かつてまだ健人と美有が子どもだった頃、ずっと遊んでいた公園だった。



子どもだった少年少女は、いまや25歳の大人になっていた。



長い刑期の中で肉体はさらに引き締まり、かつてその瞳に宿っていた刺々しい狂気や闇は、長い瞑想のような時間の中で、静かで深い穏やかさへと昇華されていた。



公園のベンチの近く、一本の大きな桜の木の下で、健人は足を止めた。



見上げれば、ずっと何一つ変わらない、淡いピンク色の花びらが春の柔らかな風に舞い踊っている。



あの日々から、あまりにも多くのものを失い、多くの時間を費やしてしまった。



健人は一人、去っていった仲間たちと、自分が奪ってしまった命へ祈るように、静かに目を閉じていた。



――パタパタ。



かつて何度も聞いた、小さく愛おしい足音が健人の後ろから近づいてきた。



「……やっと、見つけた」



鈴の鳴るような、だけどあの日よりも少し大人びた、落ち着いた女性の声。



健人が弾かれたように振り返ると、そこには25歳になった花山美有が立っていた。



高校生の頃の面影を残しながらも、綺麗に髪を伸ばし、すっかり大人の女性へと成長した彼女。



その手には、あの激しい戦闘の夜、健人が拾い上げて彼女に返した『桜のブローチ』が、今も大切に、キラキラと輝きながら握りしめられていた。



「美有……どうして」



健人は息を呑んだ。



10年という歳月は重い。罪を背負って服役していた自分を、彼女がまだ待っているなどとは思っていなかったのだ。



健人は胸を締め付ける愛おしさを必死に抑え込み、わざと冷たく、彼女から視線を外した。



「……俺の傍にいるのはやめろ。俺はもう犯罪者なんだぞ。お前の言う『普通の生活』からも、一番遠い場所にいる。もう、俺に関わるな」



10年前と同じような拒絶の言葉。



だが、今の美有は、あの頃のように泣き出して逃げ出す少女ではなかった。



「やめないよ」



美有はクスッと小さく微笑むと、毅然とした足取りで一歩、健人に近づいた。



「10年前も言ったでしょ? 健人を一人で暗闇に置いていかないって。健人が10年、自分の罪と向き合っている間、私もずっと、健人と一緒に新しく生きるための準備をしてたんだよ」



「美有、お前は……」



「私の勝ちだね、健人。約束通り、元の普通の世界に、私のところに生きて戻ってきてくれた」



美有は健人の目の前に立つと、愛おしそうにその大きな手を見つめ、それから真っ直ぐに健人の瞳を見上げた。彼女の目に迷いは一切なかった。



美有は一呼吸置き、手の中の桜のブローチを健人の胸元にそっと当てながら、はっきりと告げた。



「中山健人君。私と、結婚してください!」


それは、光の世界から暗闇の少年を救い出し、10年間待ち続けた彼女の、究極のプロポーズだった。


健人は目を見開き、それから、呆れたように、だけどこの10年間で一番温かい、心からの笑みをその顔に浮かべた。


「……本当に、バカだな、お前は」


健人は美有の手を、そして彼女が持つ桜のブローチを、今度は自分の意思で、力強く抱きしめるように握りしめた。


「ああ。俺のこれからの人生、全部お前に尽くすよ。それが、俺にとって一番の『生きる意味』かもしれねぇなぁ」


舞い散る桜吹雪の中、10年の時を超えて、二人の時間は本当の意味で動き出した。


もう二度と離れることのない、新しくて、世界で一番温かい日常の始まりを祝うように、春の光が二人を優しく包み込んでいた。


― 完 ―


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