新しい生命が今ここに誕生す
こちらの作品は私が中学生の頃に執筆した物語を
アレンジしたものとなっております。
あれは、まだ春の冷たい風が街を吹き抜けていた頃のこと。
公園の桜の木は、ピンク色のつぼみをいっぱいに膨らませていた。
今にも咲き出しそうな、新しい季節の始まり。
そんなある日、優しい夫婦のもとに、ひとりの小さな女の子が生まれた。
「あなた、見て。とっても元気な女の子よ」
ベッドの上で、お母さんが愛おしそうに赤ちゃんを抱きしめる。
「ああ、本当にかわいいな……。よし、名前は『美有』にしよう。美しい心を持って、たくさんの幸せがある人生を送れるように」
お父さんが指を差し出すと、生まれたばかりの赤ちゃんは、小さな手でぎゅっと握り返した。
「ふふ、よろしくね。花山美有ちゃん」
こうして『美有』という名前をもらった女の子は、両親のたくさんの愛情に包まれて、すくすくと育っていった。
美有は、とにかく元気で無邪気な女の子だった。
お散歩に出かければ、道端で見つけたダンゴムシをじーっと見つめる。
「お友だち!」と言って大喜びだ。
お家の中では、お気に入りの人形をパペットのように動かして、一人で何役もこなす劇を始める。
その姿は、お父さんとお母さんを毎日笑わせていた。
「みう、ご飯の前にちゃんとおてて洗った?」
「はーい! あわあわのゴシゴシだよ!」
洗面所から、美有の元気な声と、水のパチャパチャという音が聞こえてくる。
こんな当たり前で、何よりも幸せな毎日が、ずっと続くのだと誰もが信じていた。
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美有が4歳になった、ある日のこと。
その日は朝からどんよりとした曇り空で、今にも雨が降り出しそうな天気だった。
お父さんとお母さんは、お仕事の用事で遠くの街まで出かけることになっていた。
「美有、今日はお留守番よろしくね。お利口にしていたら、帰りにすっごく素敵なお土産を買ってきてあげるから」
玄関で靴を履きながら、お母さんが美有の頭を優しくなでる。
「おみやげ!? やったぁ! みう、いい子で待ってる!」
美有は目をキラキラと輝かせて、ぴょんぴょんと跳ね回った。
「こらこら、お行儀が悪いぞ。でも、楽しみに待っていておくれ。お父さんとお母さんの、とっておきの秘密のお土産だからね」
お父さんも優しく微笑み、美有の小さな鼻をちょんと突ついた。
「いってらっしゃーい!」
美有は、手がちぎれるくらい大きく振って、二人を見送った。
車のエンジン音が遠ざかっていくのを、美有はワクワクしながら聞いていた。
(お土産、なんだろうな? 美味しいお菓子かな? それとも、かわいいリボンかな?)
楽しい想像を膨らませながら、美有はお留守番をお願いされた近所のおばさんの家で、お絵描きをして過ごしていた。
けれど。
そのお土産が美有の手渡されることは、二度となかった。




