ハローライセ/異世界転生安定所4
【なぜか学園内にあるダンスホール】
♪~~♪♪~~♪
音楽の流れるホールの天井には、無駄にデカいシャンデリアが吊り下がっている。
普段はランプを使っているのに、シャンデリアはまるで電飾のような光を放っており、ホールは眩い光に包まれている。
♪~~♪♪~~♪
ホールに流れている音楽はクラッシック。
どういう訳か、楽団の持つ楽器は、元の世界のバイオリンやチェロ、コントラバスなどに酷似している。
テーブルにはビンのワインが置かれ、シャンパンは氷で冷やされている。
(なぜ、中世風の世界で、ビンや氷がある?)
肉や魚などの丸焼きに、現代風のソースがかけられている。
(中世風の世界で、どうやって調理したのか?)
その全てが、[魔法があるから]の、都合の良い一言で、片付けられていく。
参加者はとても多い。
学園の舞踏会なのに、なぜか学生ではない貴族の紳士淑女、さらには王族まで参加している。
(さすがはナーロッパ世界だなぁ。こんな都合の良い世界、なにが楽しいのか……って、違う違う違うっ!! 俺はここで、幸せな人生を送るんだろっ!?)
頭に浮かんだ不満を、慌てて追い払う。
すると、セビアーノ王子が、颯爽とやってきた。
「――アレリーナ嬢、私と踊ってくれますか?」
目の前まで来たセビアーノ王子が、手を差し出して誘う。
「……はい」
恥じらいを見せながら、頷くアレリーナ。
♪~~♪♪~~♪
音楽に合わせて、セビアーノ王子と踊る。
♪~~♪♪~~♪
習ってないのに、なぜか優雅にダンスが踊れる。
やはり[ガースー・アレリーナ様]だ。
(ふーん。中々イケメンの王子だけど……コレと結婚かぁ……)
踊りながら、王子の顔を見て、ちょっと憂鬱になる。
根がおっさんなので、この先こいつと結婚とか、××とかをすると思うと、ちょっと複雑な気分だった。
(まあ、転生成功して時間が経てば、心も女に変るだろう……)
今はそう期待して、転生成功を目指すだけだ。
♪~~♪♪~~♪……
音楽が終わり、ダンスが終了する。
「あぁ、アレリーナ嬢。貴女は美しいだけではなく、知性も兼ね備えている」
未だ寄り添ったままの王子が、熱っぽい声で、語りかけてくる。
「そして、まるで聖女のように、慈愛に満ちた心根……貴女を妻に迎えられる私は、幸せ者だ」
ジッと見つめてくる。
「学園を卒業したら、――私と結婚してくれるね?」
王子が聞いてきた。
(ハイハイハイハイハイきたきたきたきたきたきたぁぁぁぁーーーー!)
待ちに待った、瞬間だ。
(ハッハッハーーーー!! 異世界転生楽勝っ!! アイムウイナー!!)
脳内でガッツポーズを取り、勝利を叫ぶ。
「………………はい。セビアーノ様」
じっくりとためて、アレリーナは頬を赤らめながら、返事をした――
ブッ! ブッ! ブゥーーーーーー!!
突然、頭の中でブザー音が鳴り響いたっ。
(なっ、なんだっ!?)
慌てるアレリーナを他所に、機械的な明るい声が、脳内に響く。
NG・ワード NG・ワード NG・ワード
(はっ!? NGワードだとっ!? なんでだっ!? アレリーナ、大して喋ってなかったぞっ!?)
NGワード発表っ!!
NGワードは――「セビアーノ様」(笑)!!
(はあぁあっ!?!? いやっ! ちょっと待っ――)
外れスキル(笑)、スターーーート!!
ズボンッ
瞬間、爆発するようにアレリーナの鼻の穴から飛び出す[鼻毛]!!
にょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろ
ふっさふさっ もっさもさっ ふっさふさっ もっさもさっ
公爵令嬢の鼻から、大量の鼻毛が無駄に、無限に、果てしなく伸びる。
にょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろ
「うわあぁああぁっ!? なんだなんだなんだっ!?」
鼻毛に襲われる、貴族紳士。
ふっさふさっ もっさもさっ ふっさふさっ もっさもさっ
「きゃあぁあぁぁーー」
鼻毛を頭から被る、貴族淑女。
にょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろ
「いやぁあぁああぁーー」
鼻毛塗れになる[ワンコ聖女マリア]
ふっさふさっ もっさもさっ ふっさふさっ もっさもさっ
「「「馬っふんだはっ!!」」」
鼻毛で[馬っふんだはっ]な王族たち。
にょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろ
「「「ガースー・アレリーナ様ぁーーーー」」」
鼻毛を賛辞する、学園生たち。
♪~~♪♪~~♪
鼻毛に包まれても、演奏を止めない楽団。
え? タイタニック?
にょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろにょろ
ふっさふさっ もっさもさっ ふっさふさっ もっさもさっ
鼻毛で、阿鼻叫喚となる舞踏会。
♪~~♪♪~~♪
「……………………」
目の前のセビアーノ王子は、真っ黒な鼻毛に包まれて、もはや鼻毛星人と化している。
「……あ、アレリーナ嬢……」
鼻毛星人のセビアーノ様が、口を開く。
「……はい。セビアーノ様」
鼻毛を[にょろにょろ]させながら答えるアレリーナ。
「――アレリーナ。婚約、破☆棄!」
「ノオォオオォォォォーーーーーーーーーーーーーー!!」
♪~~♪♪~~♪
―――――――
―――
―
【転生安定所 転生相談窓口 3番】
「って、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやっ、おかしいでしょ!!」
「あら? どうしたのトモちゃん」
長谷川さんが、不思議そうに聞く。
「いやっ、婚約相手の名前がNGワードって、どんな無理ゲー?」
「あら、転生はゲームじゃないって、言ってなかったっけ?」
長谷川さんが、可愛く小首を傾げる。
「そーゆー正論要らないからっ。NGワードが相手の名前なんて、おかしいって」
バンッ
「初めから、転生成功させる気がないだろっ、これっ」
思わず、相談カウンターを叩いてしまう。
「そんなことないわよ。NGワードは、ランダムに決められたんだから」
しかし、長谷川さんは、落ち着いて答えた。
「じゃ、じゃあ、他ってどんなっ――」
「他のNGワード候補は~~。ホモサピオワタ。イーロン・マスク。なろうリワード。銀河英雄伝説。なぜ舟井に騙されるカイジ……」
長谷川さんが、ファイルを見ながら話す。
「ね。みんな滅多に使わない言葉でしょ? 今回、トモちゃんの引きが、あまりにも悪かったのよ」
軽く肩を竦めて、そう言い切った。
ガクッ
「くそっ、俺は死んでからも、運が悪いのかよっ……」
一気に脱力し、椅子にもたれる。
「――ま、なんかさ……。ちょっと、トモちゃんには合わない、転生先だったんじゃないの? あたしはさ、失敗して良かったんじゃないかと、思ってるわ」
長谷川さんが、優しい目をして、そう言った。
「そ、そんなっ、失敗して良かったなんてことは……」
俺は少し思い当たり、それ以上は反論出来なかった……
「ね、今日は諦めて、また、明日いらっしゃい☆」
パチリ☆
長谷川さんが可愛くウインクする。
「……はい」
俺は素直に返事し、立ち上がった。
「まったねぇ~~」
長谷川さんの声に見送られて、異世界転生安定所を後にした。
こんな調子で、後藤一永36才は、本当に転生出来るのだろうか?
完。
もしかしたら、つづく?
この作品は、一応これで完結ですっ。
「続きが読みたい」と思った方は、ブックマークをつけて下さいね☆
ブクマが貯まると、忘れっぽい作者も思い出して、続きを書き始めますっ!
……ホントだよ?




