ハローライセ/異世界転生安定所1
【転生安定所】
「済みません~。初めてなんですけど……えと、神様とか……お釈迦様に会えますか?」
勇気を出して、受付カウンターのお姉さん? に声をかけてみる。
勇気を必要としたのは、カウンターにいるお姉さんが、どう見ても人間ではなく、青い肌で角の生えた、鬼だったからだ。
「ん? 神様?」
女物のスーツを着た青鬼のお姉さんは、首を傾げて、こちらを見る。
「ああ、お兄さん、転生は初めてなのね。神様には会えないよ。お釈迦様にもね。てか、私だって会ったことないし」
「へ?」
「毎日毎日、たくさんの転生希望者がいるからね、その一人ひとりに神様やお釈迦様が会ってたら、時間がいくらあっても足りないでしょ?」
「お兄さんも、生きていた頃、総理大臣に会ったことないでしょ? それと同じよ」
「はぁ、なるほど」
妙な例えだが、説得力があった。
「ほら、今さ、アニメとかで転生がブームでしょ? だから最近は、死ぬとみんな、転生したがるのよねぇ」
「とりあえず、PCで希望する転生先を探してみて。で、気に入ったのがあったら、プリントアウトして、アッチの転生相談窓口に持っていってね」
そう言って、58番と書かれたカードを渡された。
受け取り、58番のPCを探す。
大勢の人間……いや、元人間の死者かな? が真剣にPCと睨めっこしている。
俺と同じ30代後半くらいの男性、若い女性、主婦っぽい人、少年少女、老人……
まさに老若男女だ。
58番のPCを見つけ、椅子に座る。
ポム
タッチペンでモニターをタップして、早速、転生先を検索する。
ポムポム……ポム……
(やっぱり女が良いな……男の人生はもうやりたくない……)
正直、上手くいかなかった人生だった。
顔も頭も運動神経も良くなかったので、つまらない学生時代を過ごした。
社会に出ても、就職に失敗して、長い間フリーターをした。
30半ばやっと就職しても、そこが酷い会社で……
(たしか死因は過労死だったよな? 葬式とか、どうなったんだろう?)
両親も他界しているし、独身で姉弟なし。
まぁ、心配しても仕方ないか……
ポムッ
(おっ!? これ良いなっ!)
――――――――― 転生票 ―――――――――
【あなたも悪役令嬢に転生して、ほのぼの人生を送りませんか?】
待遇 前世の記憶を持ち、その後の展開を知ったまま公爵令嬢に転生。
ヒロインからその他大勢まで、かなりチョロいので、楽々と愛され悪役令嬢になれますっ。
王子様や愉快な仲間に囲まれ、ほのぼのライフが送れますっ!
転生先:ナーロッパ王国 公爵令嬢ミスティリス
時期:王立テンプーレ魔法学園に入学する14才のころ
転生成功:半年後の舞踏会に起きる、王子との婚約破棄を回避すること
☆チート能力☆
前世の記憶:有り
未来の展開予測:有り
特異能力:全関係者の詳細プロフィール、常時閲覧可能
(これで人間関係の攻略は超簡単になります☆)
注 アプリ会員には超おススメの転生先です☆
―――――――――転生安定所―――――――――
(なんのアプリ会員か分からないけど、これに決めようか? あ、いやいや、人生だぞ? もっとじっくりと、吟味した方が良いんじゃないか?)
とりあえず、お気に入りに登録して、他のを検索し続けた……
――――――
―――
―
(うーん……色々と悩むが、やっぱりあの、最初に見た悪役令嬢が良かったなぁ……)
やはり、アレにしよう。
ポムポム……ポム……
お気に入りに戻る……
ポムッ
「なっ!? 済みっ!?」
先ほどの悪役令嬢は、すでに転生済みに変っていた。
(くそっ、失敗したっ。やっぱり人気があったんだなっ、アレ)
どうも、他の人に取られたようだ。
ポムポム……ポム……
(じゃあ、第二候補のヤツを……)
二番目に気に入ったヤツを、見に行く……
――が、
ポムッ
(あああっ! これも転生済みっ!)
第二候補も転生済みになっていた。
ポムッポムッ
(なぁっ!? こっちもかっ!?)
ポムッポムッポムッポムッ
(あれれっ!? これも済みっ!?)
ポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッ
(うわぁ、どれもこれも済みになってるよっ!!)
次々に、転生済みになっていく。
ポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッポムッ
(これっ、拙いぞっ。どんどんと、なくなっていくぞっ――)
気ばかり焦っていく。
ポムッ
――気がつくと、悪役令嬢の転生先は、一つになっていた。
――――――――― 転生票 ―――――――――
【婚約破棄を回避する人材を募集!】
あなたも大逆転で、悪役令嬢から愛され令嬢になって、王族から愚民まで、支配してみませんか?
チート能力のお蔭で[美味しいのは最初だけ、すぐに味がなくなるガム]のような、テンプレ物語の主人公になれますっ!
転生先:ウツケーダ王国 公爵令嬢アレリーナ
時期:王立ワタクサ魔法学園に入学する14才のころ
転生成功:半年後の舞踏会に起きる、セビアーノ第一王子との婚約破棄を回避すること
☆チート能力☆
前世の記憶:有り
未来の展開予測:有り
特異能力:全関係者の詳細プロフィール、常時閲覧可能
(これで人間関係の攻略は超簡単になります☆)
注 外れスキルあり(笑)
―――――――――転生安定所―――――――――
(よしっ、コレ取られる前に、決めちゃおうっ)
ポムッ!
ういぃぃ~~~~ジジジジジジ・ジー・ジジジジ……
紹介状がプリントアウトされる。
びりりっ
「よっしゃ、これで楽勝人生決定だっ!」
俺は紹介状を持って、颯爽と転生相談窓口に向かった……
【一分でサクッと読めるコメディを書いてますっ!】
【一分コメディ】イタ☆恋!裏通り
〜アレな高校生と悪と正義の不毛な日常〜
☆2nd.Season☆
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1st.Seasonを読まなくても楽しめる、1話完結型の会話劇!
魔法少女が登場台詞に悩み、アレなオタ友が馬鹿話をし、マッドサイエンティストが不毛な改造手術を目論見ますっ!




