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第四独立空挺小隊作戦記録  作者: 大月櫂音
「記録:シリウス抗争」
38/50

2150年 8月7日

最近近況が逼迫してきていて、一日更新という今までの更新ペースが守れなくなりそうです。

なので、更新ペースを一週間一更新にしようと思います。申し訳ありません。

一章は年内に完結させるつもりですが……それ以降はどうなるか分かりません。


「なあ。水無月上等兵のこと、どう思う?」


 ──ファシット要塞外周A-3エリア強襲任務から四日後。ふと、M-2エリアの前線基地の食堂に、そんな声が響いた。


「どう、って言われてもなぁ……」


 問いかけられた一等兵は、頭を掻(か)いた。柊人をどう評すればいいのか、分からないようだった。


「恐ろしく強い兵士よね、実際」


 それを言ったのは、横の二等兵だ。──恐ろしく強い。その言葉には、畏怖と敬意が混在している。


「ああ、それは確かだ。──けどさ。なんつーか、その……冷たく、ないか」


 最初に質問を投げかけた、一班所属の上等兵の言葉に、その場の全員がどきりとした。


 ──心当たりが、あるのだ。


「ああ、それは思うわ。なんつーか、いつも無表情な、朴念仁(ぼくねんじん)みたいな」


「いや、それはないな。物腰は柔らかいぜ」


 口を挟んだのは、隣席の上等兵だ。第四小隊の上等兵は、全員がプロテクター適合者であり、また、一班に属している。


 なので、彼は、柊人とも交流があった。柊人のことは、それなりに知っている。


「礼儀は正しいよな。真っ当な日本人って感じがするぜ」


 そう言ったのはアメリカ人の兵士だ。──日本人は礼儀正しい。そのイメージは、2150年になっても維持されているようだった。


「でも彼、ジョン上等兵と仲よかったんでしょ? ──それなのに、さ」


 そこで、彼女は口をつぐんだ。さも言いづらそうに。


「悲しんでる様子がない、か? そりゃ、俺も思うが………」


「堪(こた)えてはないように見えるな、少なくとも」


 それを言ったのは、柊人と交流があった男だ。


 柊人は、あまり感情を表に出さない男だった。このように評されるのも、仕方のない話ではある。


「新人っぽくはないよね。適合指数が高いだけじゃなく……実力も、上等兵並みにある──」


「いや、本当に新人じゃないのかもしれないぞ。あいつが使ってる銃、何か知ってるか?」


 その言葉に、その場の人間は一斉に考え始めた。しかし、答えは出ないようである。


「答えを言うと、89式小銃だよ。何回か焼き直しされた、日本の国防軍の正式採用銃だ」


 その言葉に、女性二等兵が目を見開く。何かに気付いたようだ。


「──どうかしたのか?」


「いや……」


 呟いてから、彼女は声を潜めて言った。


「ほら、あったでしょ、今年の四月にさ……日本国国防軍の青年兵がさ………」


 その言葉で、その場の人間は全員が、「事件」のことを思い出したようだった。兵士の一人が、上ずった声で呟く。


「青年兵による、上官暴行事件………! あったな、そんなの」


「で、でもさ。ーー彼がそ(・)う(・)なの、まさか?」


 それを言ったのは別の一等兵だった。


 それは怖がっているような言葉だったが、声色は、期待しているような調子だった。


「……どうなんだろうな、実際ンとこ」


「──でも、冷血よ、彼は」


 ふと、眉を顰(ひそ)め、二等兵が呟くように言った。


「いや、案外、あれが兵士のあるべき姿なのかもしれないぞ。何事にも動じず、任務を実行する──」


 上等兵が悟ったように言う。しかし、彼女は尚も眉を潜めたまま、


「それが兵士なら、私は兵士なんかにはなりたくないわ」


 と言った。吐き捨てるような調子だった。


「──人らしい痛みのない、兵士。機械みたいだな」


「そうだな、本当に──」


 そこで、この話題は終わる。彼らが言ったことの、その重大性も知らないまま。


 ──いかに、彼女らの言葉が核心を突いていたか、知らないままに。


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