ボブゴブリンの魔石の使い道
「このボブゴブリンの魔石、どうしようかな」
静かな木々の葉の擦れる音しか聞こえない夜。
自宅の縁側に腰掛け、月光に照らされた夜空の星々のように、魔石の中心から外側に光の粒が輝いて見える魔石をどうするか思い悩んでいた。
(売るべきか、それとも使うべきか)
スキル『眷属作成』と職業『魔物女王』では別々に消費しないといけないみたいだ。
スキル『眷属作成』は魔石を消費して、使用した魔石の魔物を眷属として作り出せる。
職業『魔物女王』は魔石を消費して、使用した魔石の女王種になれる。
眷属作成では、この魔石1つで作り出せるようだが、魔物女王はこの魔石以外にもまだ数が揃わないと使うことが出来ないようだ。
魔石を売る場合は10万円になるらしい。
両親が亡くなって、親戚のいない天涯孤独の僕に両親が残してくれたのは、今住んでいる山の麓にある周りに木々で囲まれた築40年の二階建ての家と真後ろの裏山、それと貯金くらい。
台所事情は、野菜は家と木々の間に広い空間があるため、自分で育てられる野菜を育て、お金はスライムの魔石が1個300円で売れるため、レベルを上げるついでに売って生計を立てていた。
10万円という大金を手に入れるか、自分自身に未来に投資するかで心の天秤が揺れている。
「眷属作成も気になるんだよなぁ~~、あっやばい!!」
無意識に眷属作成を使ってしまう。
魔石が強い輝きを放ち、輝きが収まった頃には現在の自分の見た目を幼くしたような、肌がコバルトグリーンで耳の先が少し丸く尖っていて、身長は僕の腰当たりの少女が現れた。
「おかあちゃん、あたちになまえをくだしゃい」
少女は僕に甘えるように抱き着き訪ねる。
「僕、男なんだけど」
母親と呼ばれ困惑する。
「おか……あちゃんと……よん…じゃ……だめ…なの?」
上目遣いで目元に涙を貯めて涙声で聞いてくる、僕は慌てて返事をする。
「駄目じゃない、駄目じゃないよ~~好きに呼んでいいから」
少女は、花が咲いたような、明るい笑顔に戻り、僕に再び訪ねる。
「おかあちゃん、あたちのなまえおちえて」
「……そうだね、そのコバルトグリーンの肌から文字の一部を取ってルトでどうかな」
「わかりまちた、きょうからわたちは、ると、おかあちゃん、なまえをくれてありがとう」
たどたどしい喋り声と笑顔に僕は心はほっこりする。
ルトに昔僕が着ていた服を着せてみると、鏡に一緒に映る僕とルトには、同じ腰まで伸びた白銀の髪が目立つ。肌の色が違う姉妹のようにしか見えない。
もしかして他の魔石からの眷属作成も自分の容姿に似ている姿で現れるかもしれない。
「おかあちゃんと、おそろいのかみうれしい」
ちょっとした言葉でも嬉しいのはなぜだろう。これが母性なのか。
「今日はもう遅いし、もう寝ようか」
「あい!!」
空ちゃんにどう説明しようか考えながら、ルトと一緒の布団で寝るのだった。