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入学試験が終わった後で2

 やっとの思いで冒険者組合にたどり着き、また周囲から謎の視線が集まるんじゃないかと疑心暗鬼になりながらも、入り口の自動開閉の扉をくぐり抜けると、やはり視線が僕に集まり、全員が拍手や肩叩きで称賛を送ってきた。


(……またか、何なんだほんとに)


 僕は心底疲れ果てて、称賛してくる冒険者たちの人波に頭を下げながら、みんなが待っているはずの奥側の席にフラフラと身体を左右に揺らしながら、ゆっくりと歩いていく。


「ふ~ん。………ん?え、なんで!!」


 壁に設置されている大型テレビの放送を軽く眺めながら横を通り過ぎて数秒経った時、映っていた映像に気づき、僕はすぐにダッシュでテレビの前に戻り、くぎ付けになる。


 あの僕と玲次の模擬戦の映像がテレビにデカデカと放送されていたのだ。


 僕は食い入るようにテレビを見ていくと、やがて模擬戦の映像が止まり司会のアナウンサーたちが喋り出す。


『今やダンジョンが各地に溢れる現代社会。ステータスを獲得して冒険者になり、先程の人間のように暴力的になるケースが社会問題になっている世の中ですが、先程の爆発石から救ってくれたこの冒険者のようにすべての冒険者が悪いわけではありません。ステータスを獲得できた人も……またそうでない人も、ちゃんとこの映像を見てください。力を持っていたとしてもその人の使い方によって変わります。我々に考えさせられる映像でした』


『そうですね。この映像に映っていた少女のようにも見える冒険者の少年は以前、街に出たボブゴブリンを1人で討伐する映像で話題になっていた少年です。また映像はありませんが情報では、病院に行き知人の寝たきりの妹を何も言わずに治し、その病院にいた人々を片っ端から治療していったとの情報があります。本日は急遽電話会談にて少年をよく知る人物にインタビューをしていきたいと思います。豊橋冒険者高等学校の学園長であり、愛知県冒険者組合統括理事長も務める森崎佳代子さんに話を聞きたいと思います。それでは森崎佳代子さんお願いします。』


 アナウンサーが一礼すると、画面が分割され、切り替わった先には、詠美さんのアルバムを広げる佳代子おばあちゃんと、それを困惑気味に苦笑いしている番組スタッフの姿が映し出された。


『どうじゃ、これが詠美ちゃんの3歳だった時の写真でのう。この頃はマジで天使じゃた、わしの後をついてきて、可愛いのなんの。今は禁酒してくださいなどと言ってわしを困らせる孫でのう』


『は~そうなんですね~』


 テレビ局のスタッフは困った声で相づちを打っていた。


『……あの~、もしも~し』


 司会のアナウンサーが呼びかけるが、どうやら声は向こうには届いていない様子だ。


『でも詠美ちゃんは少し前まで顔に魔物に襲われた時に頬にできた傷があってのう、毎日激痛で悩まされて塞ぎ込んでいたんじゃが、今日お主たちが聞きたがっている少年に詠美ちゃんの怪我を治してもらって、すっかりハートを射抜かれちゃって、今では塞ぎ込んでるのが嘘のように行動派になって、少年を追いかけているわい』


 笑顔で話し続ける佳代子おばあちゃんだが、映像からドアが開く音が聞こえボソボソと話し声が聞こえる。


『ん?なんじゃ夏美。……え!?もう繋がってる!?』


 ロボットのようにギギギと聞こえるような動きでとカメラの方に顔を向けると、佳代子おばあちゃんはやけになって両手に軽い拳を作り口元を隠し、ぶりっ子のポーズをして先程の声とは違う幼い声を出して自己紹介をする。


『えへへ~。テレビの前のみんな初めまして、永遠の85歳森崎佳代子だよ。……痛い、夏美、何をするか、ちょっとユーモアを効かせただけじゃ』


 映像外から夏美さんの拳骨が佳代子おばあちゃんの頭上に食らい、頭を押さえて佳代子おばあちゃんの声は元の声に戻る。


 そんな寸劇のような映像を見せられながらも、僕は佳代子おばあちゃんの話を聞くためテレビを見続けていた。


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